このブログの最初の記事に書きましたように、健康長寿のための道具として自転車に乗ることを楽しみながら、ピンピンコロリというのが私の願いです。
なお、「ピンピンコロリ」というのは、亡くなる直前まで元気に活動し(ピンピン)、寝たきりの期間は短くて亡くなる(コロリ)という意味です。
言い方を変えると突然死に近いですが、「高齢まで生きた後に」という暗黙の前提があります。
先日、私の好きなテレビ番組「それって!?実際どうなの課」で百寿者(ももじゅしゃ:100歳以上の高齢者)がお二人紹介されていました。
https://www.ctv.co.jp/dounanoka/article/6r7p89n0rsmhgnu4.html
一人は100歳の女性で、今でも自営のラーメン店で週6日間、ラーメンを作ったり配膳したりしているそうです。
驚いたのは、働いているときの動きがキビキビとしていてホントに100歳?と私は目を疑いました。
もう一人は101歳の自転車屋を営む男性で、こちらも週6日、現役で働いています。
電動アシスト自転車に乗って買い物に行く姿が紹介され、これにもびっくりしました。
お二人とも頭がしっかりしていて、よく笑い、楽しそうでした。
私は自転車好きであることもあり、「ああ、この101歳の自転車屋さんのようになりたい!」と思いました。
最近、身内の不幸が続き、まだ若くして突然亡くなってしまった人もいたので、以前よりもよく健康寿命や老後について考えるようになりました。
そこで理想の老後や、その可能性について調べてみたことを紹介します。
目 次
日本は介護が必要な長寿期間がもっとも長い国のひとつ
日本では、再来年の2025年には3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となるそうです。
このように老人大国まっしぐらであることと若者のテレビ離れのため、今やテレビの主要なターゲット層は高齢者となり、多くのシニア向けの番組やコマーシャルがテレビで流れています。
その中で「ピンピンコロリ」や「終活」、「エンディングノート」、「小さな葬式」、「終活保険」、「遺品整理サービス」などの言葉がじゃんじゃん流れています。
昔は、死について大っぴらに語ることはタブーのような雰囲気がありましたが、最近はこのようにメディアで普通に取り上げられるようになってきたので、老後について考える人がより増えているように思います。
「仕事を目一杯するのはあと何年?」、「平均寿命と健康寿命まであと何年?」、「自分の理想の老後って何?」など・・・
また、冒頭で紹介したお二人のような100歳以上の高齢者が一気に増えています。
100歳以上の高齢者は、調査が始まった今から60年前の1963年時点では、全国でわずか153人だったそうです。
しかし、どんどんと増えて今年はなんと9万2千人です!
(参照:百歳以上高齢者の全国の状況について(厚生労働省発表) https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/press/174482.html )
「ひょっとしたら自分も超高齢まで元気に生きれるかも」と、老後について考えることを後押ししていると思います。
日本は世界一の長寿大国なので、楽しい老後を長く楽しめそうと一瞬思ってしまいますが、現実はどうでしょう?
2019年の平均寿命と健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)の差をみると、男性は約9年、女性は約12年もの長い間、要支援者、要介護者になった末に死んでいくというのが平均的な状況です(次のグラフを参照)。
このように、理想のピンピンコロリではなくネンネンコロリ(寝たきりが長く続いた末に死んでいくこと)が多いのが日本の高齢者の実態です。
多くの人が、ピンピンコロリが理想だと言うのは、この実態を知っているので「自分だけはなんとかピンピンコロリで」という願望が強いのかもしれません。
また、ピンピンコロリ以外に多い願望は、超高齢まで幸福な老後を過ごし、最期は「老衰」で穏やかにあの世に逝くということです。
多くの医師が「安らかな死に方」のトップに老衰を挙げています。
(参照: 介護ポストセブン 最も多くの医師が「安らかな死に方」のトップに挙げたのは? https://kaigo-postseven.com/88071/2 )
「老衰」の意味はなんとなく分かりますが、詳しいことはよく分からなかったので、次の引用を紹介します。
【死因としての老衰とは】
死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。ただし、老衰から他の病態を併発して死亡した場合は、医学的因果関係に従って記入することになります。
厚生労働省「死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/manual/
老衰と診断されてからの余命はどれくらいでしょう?
【老衰の年齢と余命】
クリアン 『「老衰」で穏やかな最期を迎えるために』 https://x.gd/c2c7V
老衰には何歳から当てはまるという定義はありません。
一般的には平均寿命に近い80歳を超えていることが目安となっています。
老衰と診断されてからの余命は、ある病院では平均1.9ヶ月というデータがあります。
口から食事が取れなくなって、点滴のみでの余命は3ヶ月程度。
点滴を全くしない場合の余命は5日〜7日程度、長くても10日間ほどと言われています。
この引用のように、「老衰」の場合、寝たきりの期間はそれほど長くないようです。
「ピンピンコロリ」も「老衰」も、自分が「長く苦しみたくない」、「寝たきりなら生きていても仕方ない」といった理由だけで望まれているのではないと思います。
「家族など周りの人に長期の寝たきりで、迷惑をかけたくない」という理由も大きいと思います。
「ピンピンコロリ」や「老衰」は稀?望むのは無理?
ピンピンコロリは難関大学に合格するより難しい?!
冒頭に紹介した100歳を超えてなお元気に生活している人はごく稀です。
だからこそテレビで紹介され、視聴者は「へぇー、すごい!」と思うわけです。
どのくらいすごいことなのか数字でみたいと思います。
厚生労働省の資料に95歳まで生存する確率が載っていましたので、次の表を作ってみました。
【 表の左列の年に生まれた人が95歳まで生きられる確率 】
生まれ | 男性 | 女性 |
---|---|---|
昭和35年 | 0.4% | 1.2% |
昭和45年 | 0.6% | 1.9% |
昭和55年 | 1.5% | 4.2% |
平成2年 | 3.0% | 9.0% |
これは95歳まで「生存」している確率であり、寝たきりなどで自立できていない人も含まれています。
一説では、高齢者のうちピンピンコロリで天寿を全うするのは約10%の人だそうです。
(参照:かわせ歯科 「ピンピンコロリは10%!?」 https://x.gd/5kTFW )
これが正しいとすれば、95歳以上まで生きられて、なおかつ、その歳でも自立した生活を送れる確率は、先ほどの表の確率の十分の一くらいということになります。
東大・京大に合格できるのは同世代の200人に1人(0.5%)と言われているので、難関大学入学よりも難しいと言えそうです。
ピンピンコロリを望むのは無駄?無理?
寿命はコントロールできず、長生きできるかどうかはかなり運だという考えもありそうです。
あるお医者さんは、「人間は死や老いを計画することはできない。宝くじに当たるようなピンピンコロリを望むのではなく、人生の晩年において自立した生活に向けて努力し、自分が納得した介護を受け容れ、障害をもったとしてもいかに幸福な人生と感じ、満足して死ぬことができるかが重要」と述べています。
私はあまりそうだとは思いません。
「ピンピンコロリは宝くじに当たるようなもの」とのことですが、年末ジャンボの1等の当選確率は2000万分の1、1等の前後賞は1000万分の1です。
また、またロト7の1等の当選確率は1030万分の1です。
(参照: セゾンのくらし大研究 https://life.saisoncard.co.jp/money/wisemoney/post/c16/ )
ピンピンコロリは難しいと言っても、この確率よりははるかに高く、あまりに極端なたとえだと思います。
また、医学の進展や生活環境の改善により、元気で生活できる老後の期間が実際、伸びてきているように、全くコントロールできないわけではありません。
別のお医者さんは、「ピンピンコロリや老衰による静かな死を望んで、そのためにお金をかけてやりたくもない運動で汗を流し、食べたくもない食事を口にしている。しかし、お金をかけ、健康に気を使えば寝たきりなしのピンピンコロリを実現できるのだろうか?」と述べています。
こちらも、合点がいきません。
苦しいばかりで続かない運動ばかりではなく、楽しく続けられ、お金もかからない運動も勿論あります。
私の場合はサイクリングですが、楽しすぎてしばらく乗れないとストレスが溜まってきます(笑)。
また、食べ物に関しても、健康に良くておいしく、値段も高くない食べ物は沢山あります。
健康寿命をのばすための10の方法
「健康に気を使っても、寝たきりなしのピンピンコロリを実現できるのかは分からない」という考えも分からないでもありません。
しかし、なんとか健康や寿命をコントロールできる範囲を広げたいと考える医療の専門家も沢山いて、病の予防や進行を遅らせるための健康法がエビデンスに基づいて、多く紹介されています。
医療の世界でのエビデンス(evidence: 証拠)とは、ある治療法が特定の病気や怪我に対して効果的であることを示す証拠や検証結果・臨床結果のこと
例えば、厚生労働省 e-ヘルスネットで紹介されている「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-005.html という資料です。
2021年に作成されたこの資料は、国立高度専門医療研究センターの6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が、日本人の健康寿命延伸のために必要な予防行動などについて、目標を提言にまとめて発表したものです。
このような、様々な疾患を横断的に予防するための取り組みは日本で初めてだそうです。
次の10項目、「1.喫煙、2.飲酒、3.食事、4.体格、5.身体活動、6.心理社会的要因、7.感染症、8.健診・検診の受診と口腔ケア、9.成育歴・育児歴、10.健康の社会的決定要因について」、に関してエビデンスに基づいた具体的な提言を行っています。
詳しい説明は次のPDFで読むことができます。
https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cohort/040/010/6NC_20210820.pdf
このブログでも健康寿命を延ばすための記事を書いてきました。
以下に幾つかご参考までに紹介します。
おわりに
天災や不慮の事故で亡くなってしまうこともあり、寿命を完全にコントロールすることができないのは勿論のことです。
とは言え、生活習慣は自力で改善でき、不健康な生活をするよりも寿命を延ばせる確度が上がります。
例えば、要支援・要介護となり、健康寿命が終わってしまう原因の第一位は運動器の障害で、第二位は認知症、第三位は脳血管障害(脳の血管が詰まる脳梗塞や脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血など)です。
これらは、食生活や運動、知的活動などの生活習慣を改善することで、予防したり悪化の進行を遅らせたりすることができます。
ほかにも生活習慣が深く関係する病気には、日本人の死因第一位の悪性新生物(がんや肉腫)や第二位の心疾患などがあります。
今回、調べてみた結果、超高齢でピンピンコロリと逝ける可能性は低いことが分かりました。
けれども、あきらめるのではなく、エビデンスに基づいた健康寿命を延ばす方法を実践していきたいと思います。
実践しても損になることは無く、苦しくもなければお金もかからない方法もあります。
もし、理想どおりの老後にならなかったとしても、後悔はなく、実践で得られるものも少なくないはずです。