「Yahoo!知恵袋」や「教えて!goo」を見ると、「自転車に乗ると足が太くなる?」という疑問を多くの人が持っているようです。
特に女性は「ダイエットのために自転車に乗りたいけれども、競輪選手のように脚が太くなるのが怖い」と心配する人が多いようです。
答えを言うと、自転車に乗ることで太くなるどころか、逆に細くすることも可能です。
また、脚を太くしたい人もいるようで、「自転車トレーニングで脚を太くしたいのだけれども、ママチャリでも効果はある?」という趣旨の質問を「Yahoo!知恵袋」でしている人もいました。
こちらも答えを言うと、ママチャリでも脚に筋肉を付けて太くすることもできます。
NHKの「チャリダー★快汗!サイクルクリニック」という番組に、重いママチャリに乗っているにもかかわらず、ロードバイク乗りを負かすくらいの走りができる「戸丸大地」という人が何回も出演していました。
この番組で有名人になった感のある人ですが、剛脚の持ち主で、脚の筋肉はかなり発達していています。
YouTubeにこの人に関連する動画が沢山ありますが、次の動画はその一つです。
要は、自転車の乗り方次第で、脚は細くも太くもなるということです。
そこでこの記事では、自転車で脚を細くする、あるいは逆に太くするには、どういう乗り方をすればよいのかを説明してみたいと思います。
目 次
そもそも脚が太くなる原因は何?
脚が太くなる原因を知れば、「自転車を漕ぐと脚が太くなる?それとも、細くなるのか?」という質問に対する答えも見えてくるはずです。
脚も含めて体が太る原因は、基本的に次の三つです。
それぞれの原因をみていきましょう。
太る原因1: 「脂肪」が多く付く
糖質や脂質の多い食べ物を沢山摂り、活動量が少ない人は、体内で消費されないカロリーが脂肪として体に溜まり、脚だけでなく、他の部位も太った体型になります。
これはダイエットを心がけている人なら誰しも知っていることと思います。
また、加齢や筋肉量減少による基礎代謝量の低下により、カロリー消費が減少することも原因になります。
太る原因2: 「水分」が溜まってしまう(「むくみ」、「浮腫」)
「むくみ」は、体内の水分のバランスが崩れて細胞と細胞の間に水が溜まることで生じます。
この「むくみ」の原因には、水分や塩分の過剰摂取や運動不足、体の冷え、アルコールの摂取などがあります。
(参考資料:
● 総合南東北病院 「むくみ 気になる人へ」
https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/minamitouhoku/topnews/200607/mukumi.htm
● メディカルノート 「体のむくみ」
https://medicalnote.jp/symptoms/%E4%BD%93%E3%81%AE%E3%82%80%E3%81%8F%E3%81%BF )
長時間、同じ姿勢でいることによるむくみや、ずっと立ち仕事をすることによる脚のむくみは、よく体を動かして血流を良くすると軽減できます。
なお、気を付けないといけないのは、循環器や腎臓、肝臓などの疾患によるむくみもあることです。
太る原因3: 「筋肉」が多く付く
大きな筋肉が体につくことで、体が大きくなり体重が増えます。
マッチョな体型になった結果、以前、着られていたシャツやパンツが入らなくなってしまいます。
性質が違う2種類の筋肉
筋肉には大きく速筋(白筋)と遅筋(赤筋)の2種類あり、そのどちらを鍛えるかで筋肉が大きくなるかどうかが決まります。
- 速筋(白筋)を鍛えると大きな筋肉が付き、瞬発力やパワーが上がる
- 遅筋(赤筋)を鍛えてもあまり太くならず、持久力が上がる
(参考資料:
● 済生会湘南平塚病院の回復期リハビリ特設サイト 「生活動作と筋肉の話」https://www.hiratsuka.saiseikai.or.jp/rehabilitation-s/walk/
● 大正製薬お役立ちカラム 「筋トレで持久力も瞬発的なパワーも高めたい!それぞれの筋肉の鍛え方を解説」
https://brand.taisho.co.jp/contents/sports/523/
● 健康長寿ネット 「筋肉の種類とその特徴」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-kiso/kinniku-kinou.html )
簡単に言うと次のようになります。
速筋(白筋)とは
速筋は瞬発力やパワーが必要な運動に向いており、この筋肉が発達しているスポーツ選手の例は、短距離走や競輪、ウエイト・トレーニングなどをしている人です。
速筋は白く見える事から白筋と呼ばれます。
運動負荷が高ければ高いほど、速筋が働く割合も自然と大きくなり、肥大して見た目にも大きな筋肉が付きます。
速筋を運動させるためのエネルギー源は糖分で酸素を必要しないので、無酸素運動で使う筋肉です。
つまり、重量挙げのようなパワー系のトレーニングを短時間で少ない回数で行うことが、速筋を鍛えるのに最も効果的となります。
遅筋(赤筋)とは
遅筋は持久力系の運動に向いており、この筋肉が発達しているスポーツ選手の例は、マラソンなどの長距離走や自転車のロードレースをしている人です。
長距離走の一流ランナーはスレンダーな体型の人が少なくなく、一見、か細く見えますが、平均時速20km近くの驚異的な高速で何十キロという距離を走りきってしまいます。
また、自転車のロードレース最高峰のツール・ド・フランスに出場するようなトップクラスの選手もスリムな体型をしている人が多くいます。
例えば、2023年のツール・ド・フランスは23日間で3400kmも走るという超長距離レースでしたが、総合優勝したヨナス・ヴィンゲゴー選手は身長が175cmで体重は60kg、肥満度を表す指標であるBMIでいうと19.6とスリムな体型です。
遅筋は赤く見える事から赤筋と呼ばれます。
遅筋は酸素を使って糖質や脂質を燃焼させてエネルギーを作ります。
つまり、遅筋は有酸素運動のときに主に使われます。
遅筋を鍛えるのには大きな負荷は必要としないので、速筋と違って肥大化しにくく、シュッとした体型を目指す人に向いています。
また、この記事のテーマからは外れますが、有酸素運動は生活習慣病の予防や改善、ガン発症リスクの減少に効果があります。
当ブログの「自転車運動は驚きの万能薬」という記事の中で「有酸素運動で生活習慣病の予防や改善、ガン発症リスクの減少」に関する説明を書きました。
速筋 = 白筋
ヒラメは捕食の時に驚くほどの瞬発的な動きをみせる魚で、白身
遅筋 = 赤筋
マグロは遠洋を長距離泳ぎ続ける魚で赤身
速筋と遅筋の割合は生まれつき!?
インターネットの記事を見ると、速筋の例は「大胸筋」や「大腿直筋」などと書いているものもありますが、どの部位の筋肉でも100%速筋あるいは100%遅筋ということはありません。
割合こそ違え、速筋と遅筋とが混じって構成されています。
例えば「大胸筋」の場合、速筋の割合は58%で、「大腿直筋」は70%です。
(参照: 千葉県医師会 小林 聡医師「食べても太らない人、食べなくても太る人」
https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium71_5.pdf )
なお、この割合は平均値であって、個人差があります。
速筋が多いか遅筋が多いかは遺伝によるところが大きいようです
(次の引用を参照、ピンク色のマーカーは筆者が加筆)
スプリンターは速筋の割合が多く、70%くらいあります。 逆にマラソンの選手は遅筋の割合が多くて, 70%ほどあり, これはトレーニングによって変わらないと考えております。 生まれつきということで, 100M ランナーは小学校からかけるのが速かったに違いないわけです。しかし、スプリンターがいくらマラソンをしても、マラソンランナーにはなれないと考えられています。
順天堂大学客員教授 中央大学教授 石河 利寛 「運動による健康づくり」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock1986/1/1/1_7/_pdf
上記の引用ではスプリンター(速筋タイプ)の人の例があげられていますが、逆に、運動会の徒競走では遅かったが、持久走の大会ではいつも良い成績だったという遅筋タイプの人もいると思います。
ただ、次の引用のように、「速筋と遅筋の割合は遺伝で決まるので絶対に変えられない」ということでもないようです。
以前は、筋繊維の組成は遺伝的に決まっており、遅筋から速筋へ、速筋から遅筋へと筋繊維が変化することはないと考えられていました。
ヘルシーパス ブログ 「遅筋と速筋の働きと相互変換」
しかし最近の研究で、運動や食事などによって遅筋と速筋の間で相互変換が起こるということが指摘されています。
ギプス固定や宇宙滞在など筋肉を使わない場合や高脂肪食を食べた場合などは、遅筋(Ⅰ型、Ⅱa型)が減少して速筋(Ⅱx、Ⅱb)が増え、トレーニング(持久、筋力)やレスベラトロール摂取によって遅筋が増加して速筋が減少するそうです。
https://www.healthy-pass.co.jp/blog/20160628/#i-8
また、こちらの引用でも、何をしても変わらないという訳ではないという説明があります。
・・・白筋はⅡ型筋と呼ばれていると話しましたが、実はこのⅡ型筋の中に大きく分けると 2 種類(本当は 3 種類)の筋肉が存在し、そのうちの 1 つ「Ⅱa」を多くすれば、ダイエットに有効ということです・・・
千葉県医師会 小林 聡医師「食べても太らない人、食べなくても太る人」
https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium71_5.pdf
脚が細くなるか太くなるかは乗り方しだい
有酸素運動になる乗り方で遅筋(赤筋)を中心に使えば細くなる
以上を整理すると、有酸素運動で遅筋を鍛えると、体が太る3つの原因を解消するのに有効と言えます。
- 「脂肪」が多く付く
↑(改善できる)
摂取した糖や脂肪を酸素とともに燃やす有酸素運動をすることで、体脂肪として体に溜まるのを防ぐ - 「水分」が溜まってしまう(「むくみ」、「浮腫」)
↑(改善できる)
運動によって筋肉が収縮することで、血液循環やリンパ液の流れを促進し「むくみ」を改善する - 「筋肉」が多く付く
↑(回避できる)
速筋ではなく有無酸素運動で遅筋を中心に鍛えて筋肉を肥大化させない
有酸素運動中心の自転車の乗り方は次のような感じです。
- 楽しく走れていて、楽過ぎず汗ばんでいる、あるいは汗は出ている
- 会話が可能な程度の息切れで、しゃべったり鼻歌を歌ったりできる
このような状態で長時間自転車に乗れば、良い有酸素運動になります。
長時間できない程きつい場合は運動負荷が高すぎ、次に説明する速筋(白筋)を鍛える運動になっている可能性があります。
心拍数で言うと、有酸素運動の心拍数は、最大心拍数の60〜80%程度です。
最大心拍数は、年齢によって簡略的に次の式で計算できます。
最大心拍数 = 220 – 年齢
例えば、40歳の人が有酸素運動を行う場合、最大心拍数は220 – 40 = 180となります。
ですから、有酸素運動の心拍数は、180の60〜80%の範囲、つまり108〜144bpm(Beats Per Minute、1分間あたりの拍数)程度となります。
ダイエット兼生活習慣病の予防を目指すのであれば、この程度の強度の有酸素運動を1週間あたり150~300分するのが良いと言われています。
無酸素運動になる乗り方で速筋(白筋)を鍛えれば、脚は太くなる
脚に筋肉を付けて太くしたいのであれば、次のような無酸素運動になる乗り方で速筋(白筋)を鍛えることです。
- 会話はできない程、息があがる乗り方をする
- 例えば、
・重いギアでペダルをこぐ
・坂道を立ち漕ぎで思いっきり駆け上る
・競輪のようにスプリント(短距離を全力で漕ぐこと)をする
つまり、大きなパワーを短い時間に出力する無酸素運動を行います。
ただし、どれだけ脚が太くなるかどうかは、先ほど述べたように遺伝的な要素もあり個人差があります。
また、脚に筋肉を付けて太くしたい場合は食事にも気をつけることが必要で、筋肉を増やすためには、たんぱく質を十分に摂取する必要があります。
まとめ
以上のように、脚が太くなるのかどうかは、ママチャリやロードバイクといった自転車の種類ではなく、どういう乗り方をするかでが決まります。
速筋(白筋)を鍛えるような大きな負荷をかける乗り方をすると、瞬発力やパワーが上がり、脚の筋肉は大きくなります。
逆にクルクルとペダルを回せるような軽いギアで長時間走ると、遅筋(赤筋)が使わる有酸素運動になり、大きな筋肉が付かずに持久力が上がります。
また、有酸素運動による脂肪の燃焼やむくみ解消の効果も出て脚がシュッとなります。
運動は苦しくなるくらい頑張らないと効果が出ないと誤解している人もいると思います。
けれども、ダイエットが目的であれば、「こんなに軽くて良いの?」と思うくらいの軽いギアでサイクリングする方が適しています。
ただし、近所のコンビニに行くのに5分、10分乗るだけといったチョイ乗りでは良い運動になりません。
一般的に、運動開始から20分程度経過すると脂肪の分解が活発になり、脂肪燃焼効果が高まると言われています。
ですから、ダイエットのために自転車に乗る場合は、1回あたり、20分以上の時間を目安に乗るのが良いと思います。