次のような自転車の運転をみかけませんか?
赤信号を無視して走る、警報がなっているのに踏切を突っ切る、一旦停止の標識を無視する、走行中にスマホを操作する、傘をさしながら片手で運転する、歩道で歩行者に対して徐行せずに走る、車道を逆走する・・・
悪質な場合には、道交法違反容疑での書類送検や罰金などの対象となる「赤切符」が切られます。
赤切符は、刑事処分の対象となる違反に対して切られるため、罰金に加えて前科がついてしまう可能性があります。
赤切符を切られた人の数は、後で紹介するように、近年、かなり増えています。
「車やバイクと違って、自転車は取り締まられることはないよね」と甘く考えて危ない運転を続けていると、ある日突然、自分も赤切符を切られてしまうかもしれません。
自転車に乗っていて赤切符を切られたくないですよね。
どんな違反に対して赤切符が切られるのか、赤切符を切られた人の数はどれくらいで、どんなペナルティがあるのか、といったことを調べてみたのでシェアしたいと思います。
また、現在は自転車の交通違反に対して反則金(青切符)制度がないので、いきなり赤切符が切られることなります。
しかし、今年(2023年)の8月に大手メディアが一斉に「警察が自転車にも青切符の導入を検討している」ことを報じましたので、こちらについても調べてみました。
先ず、なぜ自転車への赤切符の交付が増えているのか、その背景をみてみましょう。
目 次
背景:自転車が絡む事故の割合が増え、自転車の法令違反が多い
警察の自転車に対する取締りが強化されてきているのは、ご想像の通り、自転車事故と自転車の法令違反が多いからです。
【 自転車事故が交通事故の総数に占める割合が増加 】
2022年の警察庁の発表では、次の図のように自転車事故が占める割合は23.3%で、6年連続で増加しています(下図)。
【 自転車と歩行者との事故も増加 】
自転車と歩行者の事故は、昨年は2905件でその件数は2016年以降、増加し続けています。
【 自転車の法令違反が多い 】
これまでに起こった自転車が絡む死亡事故のうち、自転車の法令違反があった割合は75%以上で、2023年6月末では79.3%にものぼりました(次の図)。
このような状況から、警察による自転車の交通違反の取締りが強化されるようになっています。
自転車への赤切符とは
現在、自転車の交通違反の取締りは二種類
そもそも自転車の交通違反の取締りには、どんな種類があるのでしょう?
自転車の交通違反の取締りは現在、2種類あって、「自転車指導警告カード」での取締りと、もうひとつは「違反切符(赤切符)」での取締りです。
- 自転車指導警告カード
自転車指導警告カードは用紙に違反の内容が記載され、違反者に渡されます。
このカードは違反に対する注意を促すもので、このカードが交付されたとしても、自転車運転者講習を受けねばならなくなる取締りの対象にはなっていません。
- 違反切符(赤切符)
罰則の対象となる違反に対しては、いわゆる「赤切符」と呼ばれる違反切符が交付されます。
赤切符は、刑事処分の対象となる違反に対して交付されるため、青切符(反則金の納付で済む違反に対する交通切符)とは違って、前科がつく!可能性があります。
今時点では、自転車への取締りに関する青切符は無いので、違反切符が切られる場合は、全て赤切符となります。
(なお、後で紹介しますが、現在、警察庁は自転車への青切符導入を検討しています)
自転車でのどんな交通違反が赤切符の対象?
では、どのような交通違反が赤切符の対象になるのでしょうか?
警察庁のWebページに図表で示したものがありましたので引用します(下図)
スマホを使用しながら自転車を運転することや、傘を差しながらの片手運転は、上の図表の一番下にある「安全運転義務違反」にあたります。
また、上の図表の一番下にある「妨害運転」は「あおり運転」にあたるもので、2020年6月に罰則が規定されました。
この罰則は自動車だけでなく、自転車にも適用されます。
(参考: Au損保 「自転車も!“あおり運転”でも罰則対象に!」
https://www.au-sonpo.co.jp/pc/lp_aori/ )
自転車に乗っていて交通指導取締りを受けた人はどれくらい?
警察は「自転車指導啓発重点地区・路線を中心」に、自転車運転者の交通違反の取締りを行っているそうです。
「 自転車指導啓発重点地区・路線 調べたい地域名 」でネット検索すると、調べたい地域のどこが「自転車指導啓発重点地区・路線」なのか分かると思います。
特に、悪質・危険な交通違反については、赤切符を交付して検挙措置がとられています。
令和4年には、約132万件の指導警告票を交付されたそうです(次の表)。
なお、この指導警告票の交付は10年前に比べて半減しています。
これに対して赤切符の交付による検挙数はかなり増加しておいます。
平成29年には約1万4000件だったのが、令和4年では約2万5000件(下表)となり、5年間で約1.7倍に増加しました。
なお、先程の表をみると、検挙の理由で多いのが、一位「信号無視」、二位「指定場所一時不停止」、三位「しゃ断踏切立入」です。
赤切符を切られると、どんなペナルティがある?
上記のように赤切符の交付は増加してきており、昨年(2022年)には約2万5000件切られました。
では、具体的にはどんな罰則があるのでしょうか?
自転車で交通違反をして赤切符を切られた場合、次の二つの手続きが行われます。
- 刑事手続き
- 自転車運転者講習
刑事手続き
赤切符は、刑事処罰の対象となる道路交通法違反の行為を行った被疑者に対して交付されるものです。
赤切符を切られた場合、交通違反告知書と出頭通知書が送られてきます。
この後、結果的に起訴されないことになっても、とにかく警察には出頭しなければなりません。
警察の取り調べを受け、検察官に送致されるかどうかが判断されます。
殆どの場合は略式裁判で、検察官が起訴状を提出せず、簡易裁判所が違反事実を認定して罰金刑を言い渡す手続きがとられます。
ただし、事故が悪質であったり、被害結果が大きかったりする場合には、略式裁判ではなく、正式裁判にかけられる可能性もあります。
罰則の内容は危険行為によって異なり、「2万以下の罰金または科料」から「5年以下懲役または100万円以下の罰金」まで様々です。
略式裁判で罰金刑を受ける場合には、前科が付く可能性があります。
昨年、約2万5千件の赤切符が切られましたが、起訴されて罰金刑が科されたのは1~2%にとどまるとされています。
(参照: 北海道新聞 「自転車に「青切符」導入? 事故防止へ知っておきたい交通ルール」 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/914279/ )
自転車に乗っていて赤切符を切られ、起訴されたという人を聞いたことがないという人が多いと思いますが、このように低い率だからなんですね。
「な~んだ!罰金刑になるのは、ごくごく一部なのか」と思うかもしれませんが、赤切符を切られたら、忙しくても警察には出頭しなければならないし、起訴されるのか不起訴で済むのか、ヤキモキしなければなりません。
日本の刑事裁判における有罪判決は99%というのはよく知られているとおりで、起訴されればほぼ罰金刑になってしまいます。
実際に赤切符を切られ、略式命令を受けた人の生々しい記録が次の記事にあり、参考になるので、一読をお勧めします:
おりょ工房 「自転車の交通違反で大変なことに!」 https://oryokobo.hatenablog.jp/entry/2023/09/05/154840
自転車運転者講習
自転車運転者講習は、自転車による交通違反を繰り返す人に対して実施される講習です。
自転車の交通ルールやマナーについて学び、安全運転を促すためのものです。
赤切符を切られた場合、起訴されなかった場合も、この対象者となります。
3年以内に2回の違反切符による取締りか事故によって講習の対象となります。
受講時間は3時間、手数料は6,000円です。
(警視庁Webページ「自転車運転者講習制度の概要等」https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/koshu.html )
受講命令に従わなかった場合は、5万円以下の罰金となります。
以上のように、赤切符を切られると、忙しい最中でも出頭などのために時間をとられてしまう、起訴されれば大切なお金が罰金として飛んでいき前科が付く、あるいは3年以内に2回切られると自転車運転者講習への出席の時間と費用がかかるといったペナルティが少なからずあります。
前科が付くと、就職活動での履歴書の「賞罰」欄や、海外旅行でビザが必要な国へ行くときに、自ら前科を申告する必要が出てくることがあります。
自転車にも青切符が導入される?
先程、説明しましたように、赤切符を切られても殆どの違反者は不起訴になっています。
このような背景があり、より実効性のある取締りにつなげるのが狙いで、自転車の交通違反に対して青切符を導入することが検討されているそうです。
2023年8月に大手メディアから一斉に、この報道がありました。
(参考:2023年8月3日 朝日新聞 「自転車違反、青切符の対象に 反則金は「原付き」超えない範囲の方針」 https://www.asahi.com/articles/ASR834WF7R70UTIL00G.html )
青切符というのは、交通反則通告制度の対象となる交通違反を行った場合に、警察官から交付される書面で、これが青色であることから、通称「青切符」と呼ばれています。
青切符を交付された場合、決められた期限までに反則金を納付すれば、道路交通法違反については刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けることがなくなり、前科は付きません。
ただし、納付しないと刑事罰の対象として扱われることになり、先ほどの赤切符の場合と同様の扱いになります。
また、自転車には運転免許がないため、電動キックボードと同じように違反点数は設けられないということになるらしいです。
青切符が導入されると、身近な交通手段のあり方の大きな転換点となると言われています。
ただ、色々と難しい問題があるので、まだどうなるかは分からない部分もあるようです。
例えば、交通違反者の特定に関してですが、自転車は免許が不要ですし、写真付きの身分証明書を持たないで乗っている人も大勢います。
違反者がどこの誰か、確実に識別できなければ青切符を切れないはずです。
また、子供が自転車で違反を起こした場合にも、青切符を切られて反則金を払わなければ、上記のように刑事手続きの扱いになると思われます。
つまり赤切符と同じ扱いになると思いますが、その場合、不納付の子供は、少年法により家庭裁判所へ送致されることになり、警察、検察、裁判所の負担が大きくなると思われます。
このように、自転車への青切符の導入については不明なところがあります。
おわりに
赤切符を切られると、罰金を科せられ前科者になる可能性がありますし、例え、起訴されなくても、警察署への出頭などに忙しい時間がとられてしまいます。
自転車での交通違反をしないように自分への注意を促すために、赤切符がどの位、切られているのか、切られた場合にどんなペナルティがあるのかを調べてみました。
赤切符を切られても、起訴されて罰金刑を科せられる可能性は低いことは分かりましたが、赤切符の交付はここ数年増えているので、気を付けねばと思いました。
また、最近、自転車の交通違反に対しても、自動車やバイク同様、青切符を切ることが検討されているということも分かりました。
これが導入されると、自転車を使用した日常生活への影響が大きそうな気がします。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。
【追記】自転車への青切符制度導入については、後日、次の記事にまとめましたので、よろしかったらご覧ください。