握力で病気による死亡リスクが分かる?ならば、握力計を買って測る習慣をつけるぞ!

健康寿命を長くする方法

握力は死亡や認知症のリスクのモノサシ

先月受診した健康診断結果が郵送されてきました。

左耳が聞こえづらいことが数値ではっきりし、まだ軽度ですが、そろそろ補聴器を買おうかと思いました。

血圧やコレステロール値などの生活習慣病に関係が深い検査項目でのメタボ判定は「非該当」となり、これはホッとしました。

ところで50歳を過ぎると握力が顕著に落ちだすそうです。

私も高齢者と言われる歳になり、以前よりは瓶のふたなどが開けにくくなり、オープナーなどの道具をよく使うようになりました。

特に妻は握力が落ちたようで、私が代わりにふたなどを開けることが多くなりました。

歳をとると握力が落ちてくる

ただ、瓶のふたが開けにくくなることよりも、握力の低下に関して気になることがあります。

それは、「握力の経年低下が大きいほど、総死亡、脳卒中・心筋梗塞といった循環器系の死亡、およびその他の死亡リスクが有意に上昇する」(厚生労働省研究班などの多くの研究結果)と言われていることです。
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tairyoku-kiki/kinryoku.html

NHKの番組「ためしてガッテン」でも以前、同様の内容を放送していました。

福岡県の久山町(ひさやままち)ではなんと59年間の長きにわたって住民の詳細な健康診断と体力測定を続けているそうです。

その結果、様々な病気による死亡リスクと「握力」に強い関係があることがわかったそうです。

また、握力と認知機能の維持に関係がありそうという報告もあります(国立長寿医療研究センターの老化疫学研究部の調査結果)。
握力が最も弱いグループと比べて握力が最も強いグループでは、認知機能検査の得点が下がりにくいことが分かったそうです。
https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/ep/topics/48.html

こう聞くと、握力を強くすれば、死亡リスクの低減や認知機能の維持ができるんじゃないかと思ってしまいます。

しかし、そのような単純な話ではないようです。

詳しくは次で説明しますが、握力は、全身の筋力や身体の予備力(平常時の状態からストレスが加わったときに対応できる潜在能力)のバロメーターと考えられるそうです。

そのため、握力の状態を知ることは、体の状態が将来どうなるのかを予測するのに役立つと考えるのが良さそうです。

どうして、握力は全身の筋力や身体の予備力のバロメーターと言えるのか

先ほどの『握力を測れば、全身の筋力や身体の予備力の状態を推測できる』ということに関しては、以下の資料を参考にしました。

【参考資料】

● NHK『見た目も心も若返る!マイオカインの分泌を促進する筋トレ』

https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1133.html

● NHK『意外な寿命バロメーター!握力で死亡リスクがわかっちゃう!?』

https://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20200909/index.html

● 国立長寿医療研究センター『No.48 握力は活力のバロメーター(2) ~握力は認知機能維持を予測する?』

https://www.ncgg.go.jp/ri/lab/cgss/department/ep/topics/48.html

● 日経Goodday『運動こそ最高の“老化予防薬” 注目の抗老化ホルモン・マイオカインを増やすコツ』

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/20/060500006/102900030/

● 名古屋ハートセンター『単なる運動器じゃない! 内臓や認知・精神機能をも守る、筋肉のはたらき』

https://www.nagoya.heart-center.or.jp/div04_7_archive/div04_7_220201.html

● 日本股関節研究振興財団 『筋肉が衰えればすべてが衰える』

https://www.kokansetu.or.jp/personal/hpjclumn.php?no=67

これらの資料には共通点はあるものの、それぞれ何を訴えたいかによって、強調されているところが違い、触れられていないところも違います。

そこでこれらの資料を総合してみると、「握力は全身の筋力や身体の予備力のバロメーターになる」という主張には、次の図のようなロジックがあることがわかりました。

『握力を測れば、全身の筋力や身体の予備力の状態を推測できる』の論理

さらに、これを詳しく説明します。

大前提:運動をすると、マイオカインという生理活性物質が体内で作られる

私たちの体の筋肉は次の3つに分類できます。

  1. 平滑筋:消化管の蠕動運動や血液循環を司る
  2. 心筋:心臓を構成する
  3. 骨格筋:骨と連動して伸縮し、からだを支えたり動かしたりする

これらの内、骨格筋だけは、自身の意思で動かしたり鍛えたりできる筋肉です。

全身の筋肉

骨格筋は、生命活動を維持するために次のような役割を果たしています。

【骨格筋の主な役割】

  • からだを動かし、姿勢を保持する
  • 血液循環ポンプの役割を果たす(第2の心臓)
  • エネルギーを産生して熱をつくり、代謝を上げる
  • 衝撃からからだを守るクッションとなる
  • 水分を貯蔵する
  • 免疫力を上げる
  • 運動によりさまざまな生理活性物質を分泌する

ここで注目するのは、上のリストの最後の項目「運動によりさまざまな生理活性物質を分泌する」です。

骨格筋は運動時にマイオカインという、生体内のさまざまな生理活動を調節したり、影響を与えたり、活性化したりする物質を分泌することが最近の研究でわかってきました。

この生理活性物質には多くの種類があり、マイオカインというのはそれらの総称です。

なお、マイオカインとは、myocyte(筋)とcytokine(作動物質)を組み合わせた造語です。

以前は、骨格筋は体を動かすための組織だとしか思われていなかったのが、実は生理活性物質(ホルモン)を出すことが判明したのです!

中前提:マイオカインは、全身の筋力の強化や身体の予備力を高めることに寄与する

マイオカインの大部分は何の働きをするのか、まだ分かっていないようです。

しかし、これまでの研究で、「骨格筋自身で糖や脂質をエネルギーに変える際に働くだけでなく、骨格筋と隣接する骨や、遠隔にある血管、腸や脳、皮膚に至るまで、ホルモンのような作用を発揮してその機能を支える因子になっている」(下図)ことが明らかになりました。

運動により分泌されるマイオカインは広範な影響を体に与える

下半身には全身の筋肉量の60~70%の筋肉が存在していると言われていますから、サイクリングなどで足の筋肉を動かすと、マイオカインの一種であるIGF-Ⅰと呼ばれる物質が生成されます。
それが血液に乗って全身に運ばれ、筋肉を作ってくれることがわかってきています。

前腕筋もこの筋肉増強効果によって強くなり、握力が上がります。

なお、筋肉には手や足以外にもあります。
呼吸に関係する呼吸筋、心臓を動かす心筋、胃や腸を動かす筋肉など全身のあらゆる場所にあります。
このため、マイオカインは循環器や呼吸器、消化器などにも影響を与えます

小前提:全身の筋肉をあまり動かさず、握力だけを単独で鍛えることは難しい

全身の筋肉をあまり動かさず、筋肉を合成する物質が出ていないと、握力だけを単独で鍛えることは難しいため、握力は上がりません。

前傾姿勢でのサイクリングは良い全身運動

結論:握力を測ることで、全身の筋力や身体の予備力が推測できる

握力を測定し、握力の維持や上昇が認められれば、運動をしていることが分かります。

なぜなら、握力のみを鍛えるのは難しく、放っておくと加齢と共に低下するからです。

逆に握力の低下が分かれば、運動をあまりしていないことが分かります。

運動をすればマイオカインが分泌され、全身の筋力の強化や身体の予備力を高めることに寄与するので、握力は全身の筋力や身体の予備力のバロメーターと言えるということになります。

握力計

以上のようにロジックが分かったので、次は握力の年代別平均値をみてみましょう。

スポーツ庁発表の「握力の年代別平均値」で同年代の人と比べてみよう

自分の握力が同じ年齢層の人と比べて、高いのか低いのか、気になりますよね。

これで、全身の筋力や身体の予備力が同年齢層の平均的な人と比較してどうなのかが分かります。

スポーツ庁が発表した、令和2年度体力・運動能力調査結果が下図です。

https://www.mext.go.jp/sports/content/20201015-spt_kensport01-000010431_1.pdf

年齢層別の平均握力(スポーツ庁の資料より)

上の図が示すように、握力は,男女とも30代でピークに達し、 その後、加齢と共に低下していくことが分かります。
特に、50歳を過ぎると握力ははっきりと落ちていきます。
また、握力は男女でかなり差がありますね。

詳細データは以下です。

年齢別の平均握力詳細データ(スポーツ庁の資料より)

最近測ったら、私の左右の握力の平均値は46kgでした。
もっと落ちているかと思いました。
前期高齢者なので、自分の年齢層の平均よりは約6kg高いです。 

マイ握力計を持って記録を付けよう

握力の低下が緩やかであれば、加齢による減少と考えられ、特に問題はないと言えるでしょう。

しかし、短い期間に大きく低下した場合は、運動をして全身の体力・筋力の向上を図る必要があると思います。

また、同年配の平均値よりも高いことが分かれば、ちょっぴりいい気持ちになります。

どちらにしても、握力を測ることは、健康寿命を延ばすためのモチベーション・アップになりそうです。

そこで、握力計を買ってみました。

この握力計には、調整のネジが付いていて、握り幅を変えることができます。
この調整でかなり数値が変わります。
私の場合、2、3kgは簡単に結果が変わりました。
一番合ったところを探してみるのも面白いです。

職場や健康センター、体育施設などにある握力計では不本意な結果にしかならない人も、これだと自分用にじっくり調整できるので結果に納得がいくと思います。

握力の記録を伸ばすコツ

握力は測り方でけっこう結果が変わります。

2、3kgはちょっとしたことで変わるように思います。

定番のコツを紹介します。

このコツを試して測った値が自分の最高値と考えていいと思います。

息を吐きながら力強く握る

人間は息を吸う時よりも、吐くときの方がより力を出せます。

また、パワーを十分に発揮するには体にたくさんの酸素を入れる必要があります。

このことから、ゆっくりと息を吸った後、思い切り息を吐きながら、一気に力強く握るのが一つ目のコツです。

一気に力を入れることも大事で、ジワーと徐々に力を入れると、あまりよい結果にはなりません。

「ダーッ!」といった力が出るような声を出す

二つ目のコツは声を出すことです。

ただ、どんな声でも良いというわけではありません。

「オノマトペ」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

これは、フランス語で擬声語を意味する言葉だそうです。

目的に合ったオノマトペを使うことで、そのパフォーマンスを大きく向上させることができます。

例えば、前屈テストをする際に、「フニャー」と気の抜けたような声を出しながら前屈すると、柔軟性が上がり成績が改善されることが有名です。

オノマトペは、パワーを出したいときにも効果があります。

例えば「ダーッ!」とか「グーッ!」という声を腹式呼吸で絞り出しながら握ると、黙ってするよりも強い握力を発揮できます。

こういう声を出すとお腹に力が入り、体幹が安定するので、力をより出しやすくなります。

握力を発揮するコツ

はい、以上ですが、握力で意外なことが分かることというのは面白いですね。