目 次
普通の中高年にとって、どの程度の運動が健康寿命を延ばすのに良いのか
自分の限界まで追い込む運動をすればするほど、強くなれる。
そして健康な体になれると思いがちです。
私も以前はなんとなくそう思っていました。
「やればやるほど、効果がある。練習は嘘をつかない」と、心臓はバクバク、ペダルを漕ぐ足にはもう力が残らないくらい、ヘトヘトになるまで頑張ったこともあります。
ただ、強くなれば、健康寿命が延びるということではないようです。
オリンピックで金メダルを獲得するような、私から見ると同じ人間とは思えない超人がいます。
こういう人達は羨ましくなるような素晴らしい体つきで、ヒトの生物学的な寿命と言われる125歳まで生きるんじゃないかと思ってしまいます。
しかし、金メダリストでも短命な人が少なくありません。
たとえば、陸上競技のスーパースターだった、ジョイナー選手。
私は陸上競技を見るのが好きで、オリンピックや世界陸上での彼女を活躍をよく見ていました。
ソウルオリンピックでは3つも金メダルを獲得しましたが、38歳で重度の癲癇発作により窒息死しています。
また、バルセロナ五輪柔道の金メダリストで、その素晴らしい人柄もあり、柔道に詳しくない人にも人気が高かった古賀稔彦氏ですが、昨年、53歳でがんのため亡くなりました。
プロのアスリートの目標は、試合に勝って賞金や名声を得、それで生計を立てることだと思います。
しかし、我々はプロの運動選手でもなければ、若くもありません。
私のような中高年の多くは、介護なしに自立した生活をできる期間、すなわち健康寿命を延ばすことが大きな目標だと思います。
健康長寿者になれれば、やりたいことや、やるべきことを十分に行え、充実した人生を長く過ごせます。
私の身内がつい先日、70歳で脳溢血と診断され、要介護者となってしまいました。
今年の春に会ったときは、本当に元気だったのに、今は歩くのがやっとで、物忘れが激しく、あまりの変わりようにショックを受けました。
中高年が健康寿命を延ばすためには、どういう運動が適切なのか、私の頭の整理も兼ねてまとめてみました。
中高年のほとんどは病気持ち、またはその予備軍
「ほとんど」というのは言い過ぎじゃないの?と思われるかもしれませんが、厚生労働省の統計をみてみましょう。
日本人の死因のトップを占める、がんや心臓病、脳卒中などは生活習慣病とも呼ばれ、食習慣や運動習慣、休養、喫煙、飲酒がその発症に深く関係しています。
下図は厚生労働省の資料から抜粋した図ですが、例えば、高血圧については、50歳台では4割、60歳以上では6割を超える人が高血圧症患者ということになります。
糖尿病の方の割合は高血圧に比べると少なく見えますが、60歳以上の人の5人に1人が糖尿病と考えると多いですね。
LDLコレステロールや中性脂肪などの脂質の値が基準値を外れている脂質異常症については、60歳以上は約3割です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000528279.pdf
病気と診断された人以外にも、健康診断結果で、血圧やコレステロール値、γ-GTPなどの値が、病気一歩手前の境界の「要注意」となった人も入れると、大半の中高年は病気持ち、または発病はしていないものの、健康な状態から離れつつある人と言えるでしょう。
また、内臓や血管に関する病気以外にも、肩こりや腰痛、関節痛は中高年にはつきものです。
中高年の会話で話題に困ったときには、「今日は腰(肩、膝、首・・・)が痛くて」と言うと話が弾むことがよくあります。
病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)の統計を厚生労働省が発表していますが、50歳以上でみると3割以上が有訴者となっています。
症状別にみると、男性では「腰痛」での有訴者率が最も高く、次いで「肩こり」、「鼻がつまる・鼻汁が出る」、女性では「肩こり」が最も高く、次いで「腰痛」、「手足の関節が痛む」となっています。
他にも白内障は、50代で40~50%、60代で70~80%、70代で80~90%、80歳以上ではほぼ100%が発症するといわれています。
白内障の症状である、左目と右目で見え方が異なる、あるいは、目の前の風景がぼやけて見える、二重に見えるなどということがあれば、自転車に乗るのは危険です。
医療の専門家は何を勧めているのか
大半の中高年が病気持ちか、その一歩手前の予備軍と思われるわけですが、ではそういう人はどんな運動をすれば良いのでしょうか?
医療専門家のガイドを見てみました。
【高血圧】
https://bit.ly/3DN90mv
(厚生労働省の「e-ヘルスネット」から)
「高血圧治療の基本は生活習慣の修正(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。」
「低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかであるのに対して、高強度の運動は血圧上昇が著明であるため、中等度「ややきつい」と感じる程度の運動強度にとどめる」
【糖尿病】
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f533784/index.html
(神奈川県の「未病改善・健康づくり」のHPから)
「運動には、血液中のブドウ糖を消費して血糖値を下げることや、肥満を解消しつつ筋肉増加によってインスリンの働きを高める効果があります。一般的には、ややきついと感じるくらいの有酸素運動と、筋力を増強する筋力トレーニングが勧められています。」
「激しい運動は要注意:激しい運動は血糖値を上げるホルモン分泌量を増やし、一時的に血糖値が高くなることがある。高い強度のレジスタンス(筋力)トレーニングも心臓や腎臓への負担が大きく、糖尿病患者には注意が必要。」
また、糖尿病になると若くても白内障が進行しやすくなるので、上記のように、運動に留意することで、白内障予防にも役立ちます。
【脂質異常症】
https://bit.ly/3dzEylp
(厚生労働省の「e-ヘルスネット」から)
「脂質異常症の治療は、生活習慣の改善が根幹であり、安易な薬物療法は慎み、薬物療法中も生活習慣の改善を行うべきとされています。運動療法として、中強度以上の有酸素運動を中心に定期的に(毎日合計30分以上を目標に)行うことが推奨されています。運動療法により血中脂質の改善効果が得られ、脂質異常症を改善します。」
まとめ
先ほどの、病人や未病の人に対する医療の専門家の運動に関するガイドは概ね共通しています。
中高年の健康寿命を延ばすためには、ややきついと感じるくらいの有酸素運動で筋肉を動かす際のエネルギー源として酸素を使うのがよさそうです。時間は毎日30分以上。
有酸素運動では、体脂肪の燃焼に加え、呼吸循環器系の機能の向上が期待できます。
中程度の有酸素運動を継続するには、自転車が一番だと思います。
ウォーキングよりサイクリングは圧倒的にスピードが速く、非日常の環境にたやすく行けるので、飽きることを防げます。
ウォーキングに飽きてしまう人が多いのは、そのスピードが遅いため、家の近所を歩くだけになって、マンネリに陥るからだと言われています。
またウォーキングは普通に歩いているだけでは運動強度が低すぎ、中強度以上の運動として行うのは易しくありません。
ランニングはスピードが速いですが、地面からの衝撃で、中高年は膝や腰を痛めてしまいます。
ある調査によると、ランニングが原因で故障したことがあると答えた人は88%もいたようです。
特に、中高年は、老化現象で筋肉や腱が硬くなっており、椎間板や関節の弾力も失われているため、腰痛や膝痛を患う頻度が増加します.
さらに、無理のない範囲での筋トレで筋肉量を増やし基礎代謝量を増やすことも必要ですね。
筋トレは基礎代謝量アップに加えて、成長ホルモンの分泌(成長ホルモンは体脂肪を減らす働きをしてくれるため、痩せやすい体質になる)促進の効果があります。
サイクリングは体に優しく、飽きもこないので長く続けやすいですが、注意点として、強い紫外線を避けることがあります。
しみ(老人性色素斑)や白内障を避けるために、紫外線カットの眼鏡やサングラス、アームカバー、手袋、フェイスカバーを着用することがお勧めです。
下のアームカバーを私は使っており、UV機能がついています。
こちらは私の使っているグローブですが、これもUV機能付きです。
自分の体と相談しながら、中強度のレベルで走ることが、中高年が健康長寿者を目指すのに大切です。
他の自転車に抜かされようが、上り坂だろうが、マイペースで気持ちのよいサイクリングを楽しみたいと思います。