ウォーキングよりも自転車の方が健康増進に効果的?エビデンスは?

「自転車の運動は健康にこんなに良いですよ~」という記事をインターネットでよく見ますが、「本当?」、「証拠(エビデンス)はあるの?」と思うことってありませんか?

先日、読んだ記事で、「よく聞く主張だけど、このように実験で確かめた上での主張というのは意外と少ないのでは」と思うものがありました。

今まで思っていたことが間違っていないと分かれば、自転車に乗るモチベーションが上がります!

紹介したい記事は、PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813 です。

これは、次の『自転車に乗る前に読む本』という本の主要ポイントをまとめた記事のようです。

著者は名古屋市立大学副学長・高等教育院長、同大学院理学研究科教授の髙石鉄雄という方です。
2006年に論文『自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性』 で博士号(京都大学)を取得されたとのことです。

この記事から特に紹介したいのは、著者の実験に基づく次の4つの主張です。

① 健康にお勧めの「運動強度」を自転車は歩行よりも無理なく行える

② サドルの高さによって同じ運動強度でも疲れが違う

③ 軽めのギアでペダルを高回転でこぐと乳酸がたまりにくく疲れにくい

④ 歩行よりも自転車運動の方が糖をたくさん消費して血糖値を下げる

では、それぞれを次に紹介したいと思います。

① 健康にお勧めの「運動強度」を自転車は歩行よりも無理なく行える

ウォーキングの場合、健康に良いと言われる強度の運動にはなかなか上げにくいということは、このブログの記事でも書いたことがあります。

紹介している記事では、次の引用のように説明されています。

米国スポーツ医学会は、健康づくりのための運動として「50%程度の運動強度で、1日に30分間、週に5回、または70%程度の運動強度で、1日に20分間、週に3回の有酸素運動を行う必要がある」としています。息が切れてもう動けないというときの運動強度を100%とし、その半分が50%の運動強度だと考えてください・・・

歩行または自転車走行で1分間運動したときのエネルギー消費量を比較した結果があります。自転車でゆっくり走ると、歩行と比べて1分間あたりの運動量は減っています。ところが、スピードを上げると、時速15キロメートル(一般的な自転車の速度)のあたりから、早歩きよりもエネルギー消費量が多くなり、時速18キロメートルでは、大きな差が出ています

・・・ 標準的な体力を持つ40代の女性が若干のアップダウンのある約3.8キロメートルの道のりを、とくに急ぐことなく歩行と自転車で走行した場合の心拍数の変化を比較します。所要時間は歩行で44分間、自転車で16分間です。

歩行では大半の運動強度が50%以下なので、健康づくりにはもう少し高い運動強度がのぞまれます。一方、自転車では大部分の走行時間で運動強度が60%を超えています。このように、自転車では推奨される「50%以上の運動強度」を、それほど無理することなく行うことができるのです。

PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813

私にとっては、自転車が時速15キロメートルを超えると、早歩きよりもエネルギー消費量が多くなるというのは初耳でした。

自転車の方が適度な運動強度まで心拍数を上げやすいということは、目標心拍数を計算しても分かります。

例えば、35歳で安静時心拍数が70の人が、強度50%(中強度の運動範囲の下限の方)の運動をしようとする場合、目標となる心拍数は約127です。

自転車に乗る人なら分かると思いますが、この位の心拍数には無理なくなります。

これに対して、ウォーキングで心拍数を127まで上げるのは簡単ではありません。

 

自分の目標心拍数を簡単に知るには、次のサイトが便利です:
CASIO ke!san 「目標心拍数の計算」 https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228740

自分の目標心拍数を調べて、それになるまで早歩きをしてみるとなかなか大変なことが分かると思います。

普通の楽な散歩ではなく、中強度以上のエクササイズ・ウォーキングをしないと目標心拍数には到達しないと思います。

なぜ、自転車はウォーキングよりも、心拍数が上がりやすいの?

自転車の方がウォーキングよりも楽に心拍数を上げられるということは分かりますが、「なぜ、そうなのか?」と疑問に思いました。

これについては、次の引用のように、自転車の場合、発進や坂道などで運動負荷が大きく変わるインターバル・トレーニングの要素があるからという説明がありました。

とくに急ぐことなく運動を行ったのに、なぜ自転車では心拍数が上昇したのでしょうか。これは自転車の場合、発進や坂道で運動強度が大きく増加するためです。

実は、交差点の中央部は水がたまらないように少し高くなっています。そのため、信号などで交差点の手前に停止すると、そのたびに発進・加速を緩い上り坂で行うことになります。日本の街中は信号機が多く、そこでの停止・発進のさいには大きな筋力を使うことになるのです。

自転車では、運動強度を変動させるインターバル・トレーニングを自然に行うことができ、大きな力を出す筋力トレーニングの要素も含まれるため、心拍数が上昇しやすいのです。

PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813

ところで、ある程度心拍数が上がる強度の運動をすることは「目的」ではなく、健康になるための「手段」ですよね。

そもそも、なぜ心拍数が上がる運動は健康に良いのでしょうか?

それは、心拍数が上がる運動をすると次のような良いことがあるからです。

適度に心拍数が上がる運動の健康メリット

1. 心拍数が上がることにより、心臓と血管系が活性化されます。
心臓は強くなり、血管は柔軟性を維持し、血液の循環が改善されます。
この結果、酸素や栄養素が効率的に体中に運ばれ、老廃物や有害物質が取り除かれます。

2. 心拍数が上がる運動は代謝を促進し、脂肪燃焼を促進します。
その結果、体脂肪が減少し、体重をコントロールしやすくなります。

3. 心拍数が上がる運動はまた、ストレスを軽減し、気分を改善します。
さらに、運動は睡眠の質を向上させ、集中力や記憶力を高める助けにもなります。

なお、運動強度が高すぎると、心拍数が上がりすぎてしまい、かえって体に良くない恐れがあります。

ですので、健康づくりにお勧めの運動強度の範囲で行う必要があります。

例えば、次のように、高血圧や糖尿病の人には、高強度の運動は勧められていません。

【高血圧】
https://bit.ly/3DN90mv
(厚生労働省の「e-ヘルスネット」から)

「高血圧治療の基本は生活習慣の修正(運動療法・食事療法)と薬物治療があります。運動療法として、運動の頻度は定期的に(できれば毎日)実施し、運動量は30分以上、強度は中等度(ややきつい)の有酸素運動が一般的に勧められています。運動療法により降圧効果が得られ、高血圧症が改善されます。」

「低・中強度の運動は収縮期血圧の上昇はわずかであるのに対して、高強度の運動は血圧上昇が著明であるため、中等度「ややきつい」と感じる程度の運動強度にとどめる

【糖尿病】
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f533784/index.html
(神奈川県の「未病改善・健康づくり」のHPから)

「運動には、血液中のブドウ糖を消費して血糖値を下げることや、肥満を解消しつつ筋肉増加によってインスリンの働きを高める効果があります。一般的には、ややきついと感じるくらいの有酸素運動と、筋力を増強する筋力トレーニングが勧められています。」

※運動で気を付けること
運動前には、きちんと準備運動をしましょう。また、高い強度の筋力トレーニングは心臓や腎臓に負担がかかり、かえって害になります。やみくもにたくさん運動すればよいというわけではありませんので、注意が必要です。無理のない範囲で行いましょう。糖尿病のある方は、運動を始める前に主治医に相談しましょう。

② サドルの高さによって同じ運動強度でも疲れが違う

効率的にペダルを漕ぐには、サドルは高めにセットすることがお勧めです。

サドル

次の引用のように、それを裏付ける説明がありました。

生理的な疲労について見ていきましょう。筋肉の疲労を測る目安に、血液中の「乳酸値」があります。乳酸値は高い方が筋肉が疲労していることになります。運動強度の低いI、IIでは、血液中の乳酸値はあまりかわりません。しかし、運動強度が高くなるIII、IVでは、サドルの高さによって、乳酸値に大きな差が表れ、サドルを推奨の高さにした方が疲れにくいことが見て取れます。

なぜ、この差が生まれるのでしょうか。サドルが低い場合、高い場合に比べてひざがより深く曲がった状態で力を入れることになります。これにより血管が圧迫されて、脚の血流が滞りやすいからだと考えられます。

PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813

なお、サドルの高さの設定方法については、下の記事の中で紹介した方法を再度、掲載します。

【 サドルを適切な高さにセットする方法 】

● まず、ペダルを一番低い位置にして、「足のつま先」をペダルに乗せます。
このとき、靴底は水平にします。

● この状態で「軽く膝が曲がるくらい」が適切なサドルの高さなので、こうなるようにサドルを上下して調節します。

● 確認のために、今度はペダルを一番低い位置にしたときに、ペダルに「かかと」を乗せます。
このとき、靴底は水平にします。
膝がピンと伸びていれば、ちょうどよいサドルの高さです。

これが確認できたら、サドルの高さの調整はひとまず終わりです。
ただし、しばらく乗り続けると、よりリラックスできるようになったりして体の使い方が変わってくるので、再度、上記の手順で高さを調整することをお勧めします。

軽めのギアでペダルを高回転でこぐと乳酸がたまりにくく疲れにくい

ロードバイクに乗る殆どの人はこのことを知っていると思います。

「疲れないために、1分間に90回転以上、ペダルを回すことを目指そう!」というのはロードバイク関連の雑誌や書籍ではさんざん言われていることです。

ペダリング

ただ、一般の人は知らないことが多いと思います。

紹介している記事では、次の引用にあるような回転数を勧めています。

「疲れないで運動強度を高める」自転車の乗り方で、もうひとつ重要なポイントがあります。それが、ペダルの回転数です。結論からいうと、乳酸をためずに脚が疲れないようにするコツは、「軽めのギアでペダルを高回転でこぐ」ことです・・・

人には左右の脚を交互に動かすさいの固有のリズムがあります。そのため、とくに意識せずにペダルをこぐと、軽めのギアでも1分間に55~60回転にしかなりません。最初は65回転を目標にしてください。慣れてきたら、1分間に70~75回転を目指しましょう

ペダリング技術に長けたサイクリストたちは、1分間のペダル回転数が90回以上という高速回転を好みます。これはエネルギー消費量が少なくなるからだと以前は考えられていました。しかし私たちの実験結果は、エネルギー消費量がもっとも少なくなるのは1分間に70回転、筋放電量増加率(*値が小さいほど乳酸がたまらず脚が疲労しにくい状態だと考えられる)がもっとも小さくなるのは80~90回転でした。

サイクリストはエネルギー消費量よりも脚が疲労しにくいことを優先して、ギアの重さとペダル回転数を選んでいるようです。80~90回転という高速回転により、筋放電量増加率は最も低くなって脚は疲労しにくくなり、酸素消費量は上昇して心拍数が上がり運動強度は高くなっています。サイクリストたちは、まさに「疲れないで運動強度を高める」自転車の乗り方を実践しているのです。

PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813

ペダルの回し方のコツについては、下の記事で紹介しましたので、よろしければ見てください。

④ 歩行よりも自転車運動の方が糖をたくさん消費して血糖値を下げる

「自転車に血糖値を下げる効果がある」というのは初めて知りました。

次がこのことに関する引用です。

同じ強度の運動をした場合に、歩行と自転車運動では、どちらの方が糖を使う割合が高くなるのでしょうか。私たちは、糖尿病患者9名と健康な成人10名にご協力いただき、実験室で歩行と自転車運動を行ったときの呼吸商を測定しました。すると、糖尿病患者と健康な成人のどちらのグループも、いずれの運動強度でも、歩行より自転車運動の方が呼吸商の数値が高くなりました。この結果は、同じ運動強度では、歩行よりも自転車運動の方が糖をたくさん消費して血糖値を下げる効果があることを示しています・・・

それを確かめるために、7名の成人男女に同じ心拍数になるように10分間の歩行と自転車運動を行っていただき、運動前後の血糖値を測定しました。すると歩行では、7名平均の血糖値が運動の前後で約12.0(mg/dL)分減少したのに対して、自転車運動では約16.4(mg/dL)分の減少が見られました。

同じ運動強度なのに、なぜ自転車運動は歩行よりも糖の消費が多くなり血糖値が下がったのでしょうか。40%の運動強度で歩行と自転車運動をしたときの糖代謝をPET(陽電子放射断層撮影)で捉えた画像では、歩行はあまり糖代謝が活発なところが見あたらないのに対して、自転車運動では太ももでたくさん糖が使われています。歩行では使う筋肉が分散することで糖代謝がそれほど活性化しないのに対して、自転車運動では太ももの筋肉が集中的に使われることで糖代謝の活性化が進み、糖をたくさん消費して血糖値が下がるのだと考えられます

PRESIDENT Online 『ウォーキングよりも効果的…「疲れない」のに運動強度は高く血糖値も下がる”身近な運動”の名前』 https://president.jp/articles/-/78813

おわりに

実験に基づいている良い記事だと思ったので紹介しました。

ただ、なんでもかんでも自転車の方がウォーキングよりも良いということではないと思います。

ウォーキングがあまりにポピュラーで、厚生労働省も「1日1万歩」を目指しましょうと言っているので、逆に、ウォーキングに否定的な記事を書く専門家もいます。

そのような記事や書籍を書くと、「えっ!なんで?」と思って読んでくれる人が多いということもあるのでしょうね。

例えば、現代ビジネス 『「1日1万歩」は効果が無かった…!ついにわかった「ジムに行かなくても体力がつく」すごい方法』といった記事です。
https://gendai.media/articles/-/121970?page=4

誤解を招きやすいタイトルですが、内容は、運動強度の観点では通常のウォーキングは不足気味で効果が少ないという主張のようで、この記事で紹介した主張と同じです。

当然ですが、厚生労働省は理由も無く「一日一万歩」を推奨しているわけではありません。

次の引用にあるように、「一日一万歩」の根拠は健康的なエネルギー消費の観点に基づいているのですね。

1日1万歩の根拠
海外の文献から週当たり2000kcal(1日当たり約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されている。歩行時のエネルギー消費量を求めるためのアメリカスポーツ医学協会が提示する式を用いて、体重60kgの者が、時速4km(分速70m)、歩幅70cm、で10分歩く(700m、1000歩)場合を計算すると、消費エネルギーは30kcalとなる。つまり1日当たり300kcalのエネルギー消費は、1万歩に相当する。

厚生労働省 「身体活動・運動」 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html

ウォーキングは何よりも気軽にできます。

また、自転車ではあまり期待できない効果もあります。

例えば、歩くことによる適度な刺激でカルシウムの吸収が高まり、骨密度を高めるという効果があります(参照: 豊橋ハートセンター 「ウォーキングは手軽にできる運動療法。さあ、ウォーキングを始めよう!」 https://www.heart-center.or.jp/rehabnow/4976/ )。

やはり運動は偏らずに、色々、組み合わせるのが良さそうです。

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