最近、公道を自転車のように走っている違法なフル電動自転車が多い問題がよくメディアで取り上げられています。
(例: PRESIDENT Online 「ペダルを回さず猛スピードで走り去る…危険すぎる「電ジャラス自転車」を、なぜ警察は野放しにするのか」 https://president.jp/articles/-/76515?page=1 )
電動アシスト自転車は道路交通法では自転車と見なされるので、運転免許証等は不要です。
一方、フル電動自転車は道路交通法では原動機付自転車の扱いになり、公道を走るには運転免許やヘルメット、ナンバープレート、ウィンカーやブレーキランプ、バックミラー、ホーン(クラクション)等の装備、自賠責保険への加入が必要です。
フル電動自転車は電動アシスト自転車よりも危険なので上記のような法令があるわけです。
それにもかかわらず、上記の条件を満たさずにフル電動自転車をあたかも電動アシスト自転車かのように乗り回しているのは、言わば羊の皮を被った狼です。
フル電動自転車と電動アシスト自転車は、見た目が似ているので、区別するのが難しいことがありますが、電動アシスト自転車とフル電動自転車とを見分けられると次のメリットがあります。
① 法律違反を避けられる
② 自分に合った電動自転車を選べる
③ 安全な購入ができる
④ 公道走行時の安全性を高められる
そこで、この記事ではその見分け方を紹介してみたいと思います。
目 次
電動アシスト自転車とフル電動自転車はホントに似ている
電動アシスト自転車に見た目が非常に似ているフル電動自転車がよく売られています。
例えば、次の商品のようにベースが同じ車体で、アクセルの有無により電動アシスト自転車かフル電動自転車かを選べるモデルがあります。
このようなフル電動自転車の場合、ナンバープレートやウィンカー、バックミラーなどを付けずに(確信犯?)公道を走っていると、パッと見で電動アシスト自転車と区別するのは難しいです。
大半は違法であることを知りながら公道を走っているようで、中には交番前ではペダル漕いで自転車のように見せようとする人もいるようです。
なお、ブランドによっては3WAYという呼び方で、3つのモード(フル電動、ハイブリッド、自転車)で走行できることをアピールしているのをよく見かけます。
気を付けないといけないのは、ペダルを漕いで人の脚力のみでフル電動自転車を走行させても、道交法上は自転車ではなく、原付自転車と見なされることです。
つまり、たとえ自転車モードで走行していても、その車両は道路交通法上では自転車ではなく、原付自転車なのです。
ですので、自転車モードでの走行の場合でも、免許の所持、ナンバーの取付、ヘルメット着用、バックミラーの取付などをしていないと法令違反で交通取締りの対象になります。
詳細は次の囲みの引用をみてください。
見分けられると何のメリットがあるのか
電動アシスト自転車とフル電動自転車の見分け方が分かると次のような利点があります。
① 法律違反を避けられる
電動アシスト自転車は道交法では自転車と同じ扱いなのに対して、フル電動自転車は原付バイクとされています。
そのため、フル電動自転車が公道を走る際には、運転免許※やナンバー登録、ヘルメットの着用※、自賠責保険加入などが必要です。
(※:特定小型原付自転車の場合、免許は不要でヘルメット着用は努力義務ですが、ナンバープレート取付や自賠責保険加入は必須です。
詳しくは、次の記事を見てください。)
原付自転車と電動アシスト自転車の違いをまとめたのが次の表です。
この表から分かるように、フル電動自転車( = 原付自転車)を電動アシスト自転車かのように、ナンバー無し、ヘルメット無し、免許無し、自賠責保険無しで乗っていて警察に見つかれば、違反をわんさか指摘されて多くの罰則が適用されてしまいます。
最近、警察によるフル電動自転車を対象とした交通検問がよく行われるようになってきているので、「どうせ捕まらないから」と思って違反状態で乗っている人は要注意です。
(例: 日テレNEWS 「警視庁 ペダル付き原付自転車「モペット」を取り締まり」
https://news.yahoo.co.jp/articles/bfb371177a66340dabd156825f45477892f559fb )
② 自分に合った電動自転車を選べる
自分のニーズに最も適した自転車を選ぶためにも、フル電動自転車と電動アシスト自転車の違いを理解することが重要です。
例えば、フル電動自転車はペダルを漕ぐことなく進むことができるので、脚力の衰えた人や坂道が多い所に住む人に便利かもしれません。
それに対して、電動アシスト自転車はエクササイズをしながら走りたい場合や、車道だけでなく歩道も気軽に走行したい場合に適しています。
③ 安全な購入ができる
フル電動自転車と電動アシスト自転車の違いを理解していれば、購入時に間違った自転車を選んでしまうリスクを減らすことができます。
特に、インターネット・ショップで購入する場合、商品名や詳細をよく読んで、自分が求めている自転車にちゃんと合っているのか、確認することが重要です
警察の検問に引っかかった人の中には、「メルカリで自転車のつもりで買ったので違法だとは知らなかった」と言う人もいたそうです。
この真偽のほどは分かりませんが、販売者がフル電動自転車を電動アシスト自転車と称して販売していることは、次の例のように実際あるようです。
例1: 産経新聞 「基準外の電動アシスト自転車販売 京都の会社を書類送検 全国初摘発」 https://www.sankei.com/article/20230116-7BUZCNSDLZMGJEJWFXVNEWMOUU/
例2:国民生活センター 「道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車に注意-道路を通行すると法令違反となるおそれがあり、交通事故も発生しています-」 https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231025_1.html
このような違法な商品に引っかからないようにしたいですね。
④ 公道走行時の安全性を高められる
先にも述べましたが、原付自転車(フル電動自転車)が公道を走る際、次のような取り決めがあるのは自転車よりも危ないからです。
• 原付免許(原付一種)を持っていること(特定小型原付自転車は不要)
• 区市町村発行のナンバープレートを装着すること
• ヘルメットを着用すること(特定小型原付自転車は努力義務)
• 自賠責保険(強制保険)に加入すること
• 道路運送車両法に定める保安基準を満たしていること(つまり、ストップランプ、ナンバープレート灯、バックミラー、方向指示器、クラクション等、通常、自転車には装備されていないものを備える必要がある)
フル電動自転車なのに上記の要件を満たさず、電動アシスト自転車かのように公道を乗り回している人は、法令を守る意識が希薄なので余計アブナイですよね。
ですから、違反しているフル電動自転車を見分けられれば、その車両が自分の車両の近くを走行しているときに気をつけることができます。
フル電動自転車と電動アシスト自転車の見分け方
見分け方を、「買うとき」と「道路を走っているとき」の場合に分けて紹介します。
買うときの見分け方
自転車を買う場合、近所の自転車屋さんではなく、ネットショップで買う人も最近は多いと思います。
ネットショップの場合、価格が安かったり、近所のお店では見かけないモデルが売られたりしているからです。
ただ、ネットショップには自転車が専門ではないところもあり、特に注意が必要です。
購入する際の見分け方として、いくつかポイントを紹介します。
● 商品名称
商品の名称の中に、「フル電動」、「電動(フル)」、「電動バイク」、「モペット(モペッド)」、「原動機付自転車」、「アクセル付き」などの言葉があれば、フル電動自転車です。
ただしショップによってこの記載の仕方が不明確なので、以下の事項と併せて確認する方がいいと思います。
● 注意書き
フル電動自転車の場合、注意書きに「公道走行は不可」あるいは「公道での走行は法律上禁止」という注意書きがあることがあります。
● 走行性能
「こがずに走る」という記述があれば勿論、フル電動自転車です。
また、最大速度が40kmや50kmなどの記載があればフル電動自転車であり、原付自転車に定められた要件を満たさなければ公道を走ることはできません。
● 装備
フル電動自転車が公道を走れるようにするには、法令に定められている要件に適合するために、次のものが必要です。
(参照: 警視庁「電動自転車」って自転車?バイク? https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/electric_mobility/pedal.html )
【道路交通法によりナンバープレートが必要】
・ナンバープレート取付金具
【道路運送車両法に定められている保安基準に適合するため】
・制動灯(ブレーキランプ)
・尾灯(リアライト)
・番号灯(ナンバープレートを照らすライト)
・後写鏡(バックミラー)
・方向指示器(ウィンカー)
・警音器(ホーン)
上記のものが商品に付属していれば、フル電動自転車です。
ただし、フル電動自転車であってもこれらのものが全部または一部、付いていないことがあります。
ですから、「上記のパーツが付いていなければ、これは電動アシスト自転車だ」ということにはならないので注意が必要です。
道路を走っているときの見分け方
繰り返しになりますが、フル電動自転車なのに電動アシスト自転車かのように乗っている人は、法令順守の意識が低い人なので危険です。
ですので、そのようなフル電動自転車の近くは走りたくないですよね。
では、道路を走っている電動アシスト自転車に見える車両が、実はフル電動自転車かどうか、どうやって見分ければよいでしょう?
一番はっきり分かるのはペダルを漕いでいないのに走行している場合ですね(当たり前の回答ですみません)。
では、ペダルを漕いでいる場合はどうでしょう?
ペダルをそんなに漕いでいないのに、スピードがかなり出ているとフル電動自転車ですね。
ただ、普通の自転車程度のスピードで走っていると、簡単に見分ける方法はありません。
敢えて言うと、可能性として次の方法があります。
● ナンバープレート取付用金具の有無
これが付いていればフル電動自転車ですが、パッと見では見つけにくい車両もあると思います。
● アクセルの有無
フル電動自転車にはアクセルが付いています。
ただし、近くでよく見ないと、アクセルなのかただのハンドルグリップなのかよく分からないこともあります。
● ウィンカーやブレーキランプ、バックミラーの有無
これらが付いていればフル電動自転車の確度が高いです。
例えばバックミラーですが、電動アシスト自転車の場合、売られているものにはバックミラーは付いておらず、バックミラーを自分で後付けする人はあまりいません(私は付けていますが)。
ですので、バックミラーが付いているとフル電動アシスト自転車である確率が高いと言えます。
これは逆に言うと、フル電動自転車なのにわざとバックミラーなどの装備を付けずに、あたかも電動アシスト自転車かのように公道を走られると、交通取締りの警察官でもフル電動自転車か電動アシスト自転車かを見分けるのが難しいと思います。
はっきりと判断するには、呼び止めてアクセルの有無などを実地に確認する以外にありません。
おわりに
フル電動自転車と電動アシスト自転車は見た目が似ているものがありますが、道交法ではそれぞれ別の扱いになります。
電動アシスト自転車は自転車と見なされるので、運転免許証は不要です。
それに対して、フル電動自転車は原動機付自転車の扱いになります。
ですので、フル電動自転車で公道を走るには、運転免許※やヘルメット※、ナンバープレートが必要ですし、ウィンカーやブレーキランプ、ナンバープレート灯、バックミラー、ホーン(クラクション)等、保安基準に適合するための装備を付ける必要があります。
(※ 2023年7月1日から施行された改正道路交通法により、原付自転車の新しいカテゴリーとして「特定小型原動機付自転車」と「特例特定小型原動機付自転車」ができました。
これらのカテゴリーの場合は、運転免許証は不要でヘルメット着用は努力義務です。)
また、自賠責保険への加入は必須です。
上記の要件を満たさずに、あたかも電動アシスト自転車かのようにフル電動自転車で公道を走ることは交通違反です。
対人事故を起こして、無免許などの違反の上、自賠責保険にも入っていなかったら・・・
一生を棒に振る恐れもあります(( ;゚Д゚))ブルブル。
警察庁交通局 「ペダル付きの原動機付自転車の取扱いについて」からの引用
(ピンク色の下線は筆者が付加)
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku44/pedal.pdf
「ペダル付きの原動機付自転車」は、原動機により走行することができるだけでなく、ペダルを用いて人の力のみによって走行させることもできる構造ですが、いずれの方法で走行させる場合もペダル付きの原動機付自転車の本来の用い方に当たることから、「ペダル付きの原動機付自転車」をペダルを用いて人の力のみによって走行させる場合も、原動機付自転車の「運転」に該当します。
したがって、原動機を作動させず、ペダルを用い、かつ、人の力のみによって走行させる場合であっても、原動機付自転車を運転することができる運転免許を受けていることが必要であり、乗車用ヘルメットの着用等原動機付自転車の運転方法に従うことが必要です。