この間、Gizmodoで『Insta360のアクションカム、実は「最強ドラレコ」』という記事を見ました。
私はInsta360 X4を使っていますが、ドラレコ(ドライブレコーダー)として使うことは考えていなかったので、この記事に興味を持ちました。
自分は自転車で安全運転を心がけていても、どんな事故に遭うか分かりません。
自転車に乗っていて、自動車やバイクと危うく事故になりかけた、幅寄せされた、煽(あお)られたという経験を持つ人は多いと思います。
ドライブレコーダーは事故の瞬間や前後の状況を客観的かつ時系列で記録するため、加害者の虚偽の主張や嘘を映像と照らし合わせて否定できる強力な証拠となります。
例えば、信号の色、急な進路変更の有無、速度や安全確認の状況など、事故の真実を明らかにすることが可能です
そのため、「自転車にも証拠映像が撮れるドラレコがあるといいな」と思ったことがある人も少なくないと思います。

この記事では、「Insta360は最強ドラレコと言えるのか」、また「ドラレコとして使うコツは何か」についてまとめました。
なお、Insta360をサイクリング動画撮影に使う方法については、次の記事をご覧ください:
目 次
Insta360を自転車用ドラレコとして使う際の長所と限界
結論から言うと、『Insta360 はドラレコとしての機能も果たすが、専用のドラレコにはかなわない、つまり最強のドラレコではない』と思います。
なぜなら、ドラレコ専用機には当たり前のようについている、次のような重要機能がInsta360には無いからです:
- 常時録画しない
ドラレコ専用機の場合、エンジンをかけると自動的に録画が始まりますが、Insta360の場合は自分で録画を開始しなければなりません。
(なお、Insta360には、車のシガーソケットからの給電のように、外部電源に接続すると電源が自動的に入り、録画を開始する「オートダッシュ」機能が搭載されています。
けれども、自転車でInsta360を使うときは、内部バッテリーを使うことが一般的ですので、この「オートダッシュ」機能は使えません。
つまり、自分で忘れずに録画を開始する必要があります。) - 事故直後の自動データ保全機能がない
ドラレコ専用機はGセンサーで衝撃を検知すると自動で録画を停止し、事故映像を保護する機能があります。
一方、Insta360にはこのような衝撃検知による自動録画停止やファイル保護機能は搭載されていません。
そのため、事故が起きた場合はユーザーが手動で録画を停止しない限り、映像が上書きされるリスクがあります。
とはいえ、Insta360は、今、市場に出ているアクションカメラの中では、自転車のドラレコとして使うのに最適だと思います。
これからInsta360のメリット、デメリットをより詳しく紹介します。
なお、Insta360社は360度カメラでないカメラも販売していますが、ここでは360度カメラの Insta360 X4を例にとっています。
また、Insta360 X3や最近、発売されたX5などの他の360度カメラについても、これから述べることは基本的にあてはまります。
Insta360が基本的にドラレコとして使える理由
「ループ録画」や「ドラレコ」モードでの録画機能がある
交通事故にいつ遭遇するか分かりません。
その際、加害者・被害者の主張が食い違うことや、当て逃げなどで相手が分からないこともあります。
このようなときに映像が頼りになり、警察や保険会社に提出する証拠として使ったり、逃げた相手を探し出す手がかりになります。
このため、大切なことは決定的場面を逃さず撮影することですね。
Insta360の場合、「ループ録画」または「ドラレコ」のモードを選ぶことで、古い映像を自動的に上書きしながら、最新の映像を残しながら録画をしてくれます。
なお、「ループ録画」と「ドラレコ」の大きな違いは次のとおりです:
●ループ録画:時間(例: 1分、5分、30分など)に応じて古い映像を上書き
● ドラレコ:ストレージ容量に応じて古い映像を上書き(メモリーカードの5%、10%、20%、30%など、一部をドラレコ用に割り当て、容量がいっぱいになると古いファイルから自動的に上書き)
Insta360の映像も専用ドラレコ映像同様、証拠資料として使える
Insta360で撮った映像に「証拠能力」や「証明力」があるのでしょうか?
弁護士法人デイライトの記事によると、専用ドラレコのみならずスマートフォンやデジタルカメラで撮影された画像や映像は、交通事故の証拠になりえると明言されています。
なお、映像の証拠性を保つために正確な日時を記録したい場合は、購入後や長期間使用していない場合にカメラの日時設定を必ず確認・調整することが必要です。
GPS情報が無くてもOK?
Insta360 X4は内蔵GPSを搭載しておらず、スマートフォンと連携している場合に限り、スマートフォンのGPS情報を利用して記録する仕様となっています。
つまり、撮影時にスマホと連携せずに使う場合、GPS情報は記録されません。
それでも次のような場合にはInsta360の映像が証拠として採用される可能性はあります。
- 映像自体から事故の状況や原因が確認できれば、証拠としての価値は十分にある
- 事故現場の特徴(建物、標識、道路の形状など)から場所を特定できる
- 他の証拠(目撃者の証言、事故車両の位置など)と合わせて総合的に判断される
360度カメラならではの長所
自転車の事故は車両との衝突が最も多く、次の図のように、前方だけでなく、側方や後方からの事故が多くあります。

- 前方の撮影が必要なケース:
自動車が左折時に、直進しようとしている自転車を巻き込む事故

- 側方の撮影が必要なケース:
– 横から出てきた車に出会い頭でぶつけられる(この出会い頭での事故が最も多い)
– 自動車の自転車への幅寄せによる接触

- 後方の撮影が必要なケース:
– 路上駐車車両を避けようとした自転車への自動車の追突
– 車の自転車への煽り運転

このように、360度、周囲を撮影できる必要があるので、GoPro HEROやDJI Osmo Actionのようにカメラの前方しか撮れないものは、いくら広角なレンズを搭載していてもドラレコには向かないと思います。
これに対して、Insta360は360度、周りを丸ごと撮れるので、例え、側方や後方の車両にぶつけられても決定的な瞬間を逃さず撮れる可能性が大きく高まります。
専用のドライブレコーダーに比べると劣る
Insta360と専用のドライブレコーダーを機能面で比較してみると、次の表のように、やはり専用の機器にはかなわない面があります。
機能項目 | 専用ドライブレコーダー | Insta360 X5 / X4 / X3 |
---|---|---|
常時録画 | ◎ 安定して録画 | △ 自転車でX4を使うときは、内部バッテリーを使うことが一般的であるので、「オートダッシュ」機能は使えない。 自分で録画を開始し、バッテリーの持ちを気にする必要がある。 |
衝撃感知(Gセンサー): 事故や衝突時の衝撃を検知し、その前後の映像を自動的に保護。 通常の録画データとは別の保護フォルダに保存されるため、上書きされない | ◎ 標準装備 | × 基本非対応 事故にあったら、すぐに録画を止めないと、事故の映像が上書きされて失われてしまう恐れがある |
駐車監視: 車両周辺の動きを検知した時のみや衝撃を検知した時のみ録画 | ◎ 対応機種あり | × 基本非対応 |
自動起動 | ◎ 標準機能 | × 外部給電や設定が必要 |
ループ録画の安定性 高画質、高FPS撮影になると熱暴走の恐れがあるが、一般的な4K以下、60FPS以下での撮影を想定 | ◎ 高信頼性 | ◎ 高信頼性 |
GPS機能 | ◎ 内蔵型が多い | × スマホ連携やアクセサリーが必要 |
Insta360をドライブレコーダー代わりに使うメリット・デメリット
上記をまとめると次の表のようになります。
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
撮影範囲 | 360度カバーできるため、前後左右の事故も記録できる | 撮影範囲が広すぎて、重要シーンの特定に手間がかかる場合も |
証拠能力 | 証拠映像として使える可能性が高い(弁護士見解あり) | GPS情報やタイムスタンプが正確でないと証拠力が弱まる可能性あり |
携帯性 | 小型・軽量で取り付け場所の自由度が高い | 専用ドラレコに比べて、常設運用には工夫が必要 |
画質・機能 | 高画質・高フレームレートで細部まで鮮明に記録できる | 高画質撮影はバッテリー消耗・発熱リスクが高い |
録画機能 | ループ録画機能あり、連続録画が可能 | 衝撃検知機能(Gセンサー)や駐車監視機能がない |
価格 | アクションカム用途と兼用できるためコスパが良い場合も | ドラレコ専用機より高額になることもある |
設置・運用 | 自由なマウント位置で撮影できる(車外設置も可能) | 電源管理やデータバックアップを自分でこまめに行う必要あり |
💡ポイント:
●「撮影範囲」や「高画質」は大きなアドバンテージ
● 一方で、「常時録画」や「事故直後のデータ保全」など、専用ドラレコなら当たり前の機能を自力で忘れずにする必要がある点に注意が必要
● とは言え、自動車のように前後にドラレコを設置するのが難しい自転車では、1台で360度、周りを撮影できるInsta360がベストなアクションカメラであると言える
Insta360をドライブレコーダーとして使用するときのポイント
上記のデメリットも考慮し、ドライブレコーダーとしてInsta360を使用するときの要点が以下です:
- 解像度設定
- 最低でもフルHD(1920×1080)以上の解像度を推奨
- 4K以上であれば、ナンバープレートや細部まで鮮明に記録可能
- フレームレート
- 最低30fps、できれば60fps以上
- 高フレームレートは動きの多い場面での詳細な記録に有効
- 録画設定
- ループ録画機能を活用して連続記録を確保
- 適切な録画時間の区切り(20分、30分など)を設定
- メモリーカード
- 高容量のmicroSDカード(128GB以上推奨)を使用
- 定期的なデータバックアップの実施
- SDカードは耐久性の高いものを選択
- 取り付け位置と固定
- 前方だけでなく右側方、後方を撮影できる位置に設置
(良くない例:自転車のハンドルの真ん中付近に取り付けると体がさえぎってしまい、後方の映像を撮れなくなってしまう) - しっかりとしたマウント(固定具)の使用
- 前方だけでなく右側方、後方を撮影できる位置に設置
- 電源供給
- バッテリー残量の管理
- 必要に応じて外部バッテリーの検討
- 日時設定
- 撮影映像のタイムスタンプ(日時情報)が正確でないと、映像の証拠能力が下がってしまう
- 定期的な時刻確認と修正
- データ保存
- 事故発生時は即座にSDカードを取り出し保存
(警察や保険会社に提出できるように準備する。) - 重要な映像は別途バックアップ
- 編集時は元データを保存
- 事故発生時は即座にSDカードを取り出し保存
- 温度管理
- 必要に応じて熱対策
- 熱暴走を避ける
これらの点に注意することで、Insta360を効果的にドライブレコーダーとして活用でき、事故時の証拠能力を高めることができます。
実際に自転車にドラレコとして付けてみた
Insta360のハンドルへの取付け
前だけでなく、横、後ろも撮影できるよう、次の写真のように、ハンドルの右端の方に付け、自撮り棒を斜め外側に向けました。
これだとハンドルを握る手とマウントが干渉せず、しかもカメラの撮影が体で遮られず、横や後ろも撮ることができます。

使っているハンドルマウントは、Insta360のバイク用U字ボルトマウントと自撮り棒リングマウントの組み合わせで、自撮り棒をしっかりと保持してくれ、取り付け後も角度を自在に変えられる優れものです。

詳しくは『【保存版】Insta360の自撮り棒を自転車に安全装着!付け方とおすすめマウント』の記事をご覧ください。
Insta360の設定と録画
1.カメラの起動
Insta360 X4の電源を入れます。
2.撮影モードの選択
タッチスクリーンの中央から左右にスワイプして「ループ録画」モードを選択します(「ドラレコ」モードでも良いです)。

3.録画パラメータの設定
画面下部のパラメータをタップし、以下の項目を設定します:
- 解像度とフレームレート:例)5.7K 60fps
Insta360で5.7Kの360度動画を撮影し、Insta360 Studioで一方向に向けて編集(リフレーム)すると、最終的な書き出し(エクスポート)時の解像度は通常、元の5.7Kよりも低くなります。
ですので、4Kや5.7Kくらいの高解像度がお勧めです。
また、フレームレート60fpsにしておけば、後で事故の様子を1/2のスローモーションでみても、明瞭に見ることができます。 - ループ時間:例)20分や30分
このように、長めの時間を選ぶことをお勧めします。
なぜなら、事故が起こって気が動転してしまい、何分も経ってから録画を止める必要に気が付くこともあるからです。
例えば、ループ時間を1分という短い時間に設定した場合、気が付いて録画を止めたときには既に事故時の映像が上書きされていて、肝心の事故映像を見られないという残念な結果になってしまいます。

4.録画の開始
シャッターボタンを押して録画を開始します。
撮影できた映像
Insta360で撮影したファイルをInsta360 StudioというPCアプリで編集する際、どの向きの映像を動画として出力するのかを指定(リフレーム)できます。
次の動画はパソコンでのInsta360 Studioの操作の様子ですが、このようにマウスを使って自在に視点の向きを変えることができます。
以下に、前、左、右、後ろの向きの映像を紹介しますが、これは1回の撮影ファイルをInsta360 Studioでそれぞれの視点の向きに変えて映像出力したものです。
◆前方の映像
◆左側方の映像
◆右側方の映像
◆後方の映像
このように、360度周り全体の映像を記録できるので、前だけでなく、後ろから追突された、横から飛び出してきたバイクとぶつかったなどというときでも、事故時の映像を撮ることが可能になります。
万一事故に遭ったときのInsta360活用法
事故には遭いたくないものですが、万一の場合を想定しておくと、いざというときに慌てずにすみます。
以下の流れを参考にしてください。
1. 安全確保
- 二次被害を防ぐため、安全な場所へ移動します(できれば道路の端など)。
- 自転車が倒れている場合は、可能であれば移動させます(無理に動かさない)。
2. 警察に通報(110番)
- 軽微な事故であっても、必ず警察を呼びましょう。
- 人身事故・物損事故にかかわらず、警察の現場確認がないと後々トラブルになる可能性があります。
3. 相手の情報を確認・記録
相手の以下の情報をスマホ等で記録(可能なら写真)します。
- 氏名・住所・連絡先
- 車両ナンバー・車種
- 任意保険会社名・証券番号
4. ドラレコ映像の確保(Insta360等)
- 録画をすぐ停止。
事故直後はパニックになりがちですが、忘れずにInsta360のループ録画やドラレコのモードでの録画を止めて、データが上書きされないよう保存処理をします。 - SDカードを取り出し、安全な場所に保管。
万一SDカードが破損しても、証拠映像を失うリスクを減らせるように、バックアップも取っておきましょう。 - データ改ざんを疑われないため、編集や上書きは絶対に行わないようにします(証拠性の保持)。
警察や保険会社にデータ提出時は「編集していないオリジナル映像です」と必ず説明するようにしましょう - タイムスタンプ(日時)が正しいか確認
映像ファイルの「撮影日時」が正確かチェックします。
もしズレがある場合は、次のように事故現場の写真と一緒に提出すると証拠の補強になります。
5. 現場の写真を撮影
- 事故の位置関係がわかるように、広角と近距離両方で撮影。
前にも説明しましたが、Insta360の撮影時にスマホと連携せずに使うと、GPS情報は記録されません。
GPS情報が無いInsta360の映像の証拠能力を補強するために、建物、標識、道路の形状などから場所を特定できる事故現場写真が重要になります。 - 路面のブレーキ跡、標識、信号の位置、障害物なども記録。
6. 相手との会話内容をメモ・録音
- 可能であれば、会話を録音またはメモしておきます(スマホ録音アプリなど)。
多くの法律事務所のWebページは、「相手の同意なしに録音しても違法ではなく、証拠になる」と明記しています。
(参照:鈴木・大和田法律事務所「“こっそり録音”は違法か?~秘密録音等の違法性~」) - 相手が「すみません」「自分の不注意です」などを発言した場合は重要な証拠になります。
7. 病院で診断を受ける(人身事故の場合)
- 外傷がなくても、必ず受診を。
後から症状が出ることもあります。 - 診断書をもらい、警察に提出して「人身事故」として正式に扱ってもらいましょう。
8. 保険会社・弁護士に連絡
自身の保険会社に事故の報告します。
保険会社への連絡は事故発生後できるだけ早く、原則として当日中または遅くとも数日以内に行うことが望ましいです。
多くの保険会社では、「事故発生後すぐに連絡すること」が契約上の義務として明記しているので、遅れて連絡した場合には、補償対象外になるリスクがあります。
事故状況や証拠が複雑な場合は、早めに弁護士に相談すると安心です。
まとめ
Insta360は、アクションカメラとして非常に優秀ですが、専用のドライブレコーダーと比べるとやはり劣るところがあることも事実です。
とはいえ360度、周りの映像を高画質で撮れるという長所があるので、自転車やバイク用ドラレコとしては、現在市販されているアクションカメラの中でベストだと思います。
適切に設定・運用すれば、十分にドラレコ代用として活躍してくれるでしょう。
本記事が、安心・安全な自転車ライフを送るための参考になれば幸いです。