ダイエットほど、続けるのが難しいものはありませんね。
夕飯前は「今日はヘルシーにしよう」と思っていたのに…。
食卓に唐揚げとビールが並んだ瞬間、その決意がどこかへ消え去った!
このように、やる気はあるのに、気づけば元に戻ってしまう…そんな経験はありませんか?
実は、私たちが思っている以上に「続けること」は難しいようです。
ある研究では『5年間で約4割が“5%以上”の減量に到達したものの、長期的には体重が戻る人も多い』と報告されています。
(参照:金城雄樹、山崎晶らの研究グループ『The Japan Obesity and Metabolic Syndrome Study』)
ダイエットが続かないのは、『意志の弱さ』ではなく、脳の仕組みが関係しています。
逆に、継続を成功させるにも、その仕組みを利用すればいいのです。
この記事ではその方法を紹介します。
目 次
どんな理由でダイエットを始めていますか?なぜ続かない?
あなたは、今ダイエットをしていますか?
あるいは、「そろそろ痩せなきゃなぁ…」と気になっているでしょうか。

ダイエットの理由は人それぞれですが、多くの人がまず思い浮かべるのは、次のような『前向きな理由』ではないでしょうか。
- 痩せたら好きな服が着られる
- 軽い体で動けたら気持ちよさそう
- 痩せたらカッコイイと思われる
「痩せて得したい」という発想ですね。
でも、ちょっと待ってください。
実は、私たち人間の行動を動かすのは、この「得したい」という気持ちより「損をしたくない」という気持ちのほうが、ずっと強いのです。
じゃあ、次のような『損を避けたい気持ち』をダイエットの原動力にすれば、もっと切実にできそうだと思いませんか?
- 血圧、血糖値、内臓脂肪などの不健康な状態で健康寿命を短くしたくない
- 会社から自分をコントロールできない人間だと思われたくない
- 旅行先で長く歩けず、楽しめない状態にはなりたくない
ところが、ここにも落とし穴があります。
『損をしたくない』という気持ちに動かされて、最初はダイエットに取り組めても、いつの間にか食欲や怠惰にあっさり負けてしまい、続かない…
どうしてこうなってしまうのでしょうか?
そして、どうすれば『続けられるダイエット』になるのでしょうか?
それでは、順にお話ししていきます。
人は『得より損』により強く反応する
少しだけ、人間の行動についてのお話をしますが、難しい話ではなく、誰もが日常で感じている『心の傾向』の話です。
私たちは、「利益を得る喜び」よりも、「損失の悲しみ」をより大きく感じます。
これは行動経済学で『ロス回避バイアス』と呼ばれるもので、ノーベル経済学賞を受賞した学者が提唱した有名な理論です。
(参考:1979年に心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって発表されたプロスペクト理論の中核をなす概念の一つ。『PROSPECT THEORY: AN ANALYSIS OF DECISION UNDER RISK』)
例えば、財布を落として5,000円失ったときのショックは、臨時収入で5,000円もらったときの喜びより大きく、損失の悲しみは、利益を得る喜びの2倍ほど強いとも言われています。
ダイエットでも同じことで、「痩せて得したい」よりも「太り気味による損を避けたい」という気持ちの方が一般的により強い原動力になります。
もし、健康診断の結果にメタボに関係深い項目、例えば、内蔵脂肪や血糖値で『B』や『C』があると、受験で『不合格通知』を受け取ったような気分になると思います。
「これはまずい!生活習慣病へまっしぐらだ… 今すぐダイエットせねば!」とそのときは切実に思いますよね。
損をしたくないという気持ちは起爆剤になるが、持続力にはならない
しかし、この「損をしたくない」の動機にも弱点があります。
というのは、行動の起爆剤としては強力なのですが、そのモチベーションが長続きするわけではないのです。
ここが、多くの人がつまずくポイントで、意志が弱いのではなく、次の理由のように人間の脳の仕組みとして当然の反応なのです。
理由①:損失は『未来の不安』なので、すぐに弱まる
「損失を避けたい」という気持ちは、たしかにダイエットという行動を起こす動機としては強いです。
しかし、そうした『未来の不安』は、日常生活の中に埋もれてしまいやすいものです。
たとえば今日の夕飯前、「健康診断の数値がこれ以上悪化したら困る」と思っていたのに、目の前の美味しそうなものを前にするとどうでしょう?
未来の不安は、目の前のケーキのビジュアルと香りにあっという間に吹き飛ばされます。

つまり、脳は「未来のために我慢する」という行動を、本来とても苦手にしているのです。
理由②:人間は不安や恐怖に慣れてしまう
「損失を避けたい」という動機の弱点は慣れてしまうことで、人間の自然な反応です。
「これ以上、不健康になりたくない」「人から見た目に関して批判的に見られたくない」といった不安や恐怖も、繰り返し経験すると、慣れて反応が減少するという現象、馴化(じゅんか)が現れます。
健診センターで生活指導を担当している医師が書いた本に、『「この習慣を続けていると、病気になったり、病気が悪化したりしますよ」と、脅しのような指導をしても、生活習慣が変わる人は殆どいませんでした』というくだりがありましたが、これも馴化のせいかもしれません。
(参照:『医師がすすめる50歳からの肉体改造』川村昌嗣 幻冬舎ルネッサンス新書)
理由③:『今すぐ得られる満足感』との戦いに負けやすい
ダイエットが難しい最大の理由はこれです。
食べる・休む・横になるといった行動は『今すぐ得られる満足感』です。
脳はどうしても、『今すぐ手に入る満足感』>『未来の損失回避』と判断してしまいます。
つまり、『未来の不安』より『今すぐの快楽』のほうが、脳にとって圧倒的に価値が大きいのです。
この『価値の偏り』こそが、ダイエットが続かない本当の理由です。
「利益を得る喜び」は始める力も続ける力も弱いことが多い
「痩せたらカッコいい」「痩せたら好きな服が着られる」という『利益の動機』は『損失回避の動機』よりも起爆剤としては弱いという説明を先程しました。
「じゃあ、継続する力はどうなの?」と疑問を持った方もいると思います。
実は、残念…『利益の動機』は継続の力も強くないことが多いです。
① 未来の理想は、現実の誘惑に負けやすい
「痩せたらカッコいい」という未来の喜びよりも、「今日は疲れたので運動は中止してごろごろしよう」「今これ食べたい」という今の満足感の方が脳に強く働きます。
つまり、未来の利益は現在の誘惑に勝ちにくいのです。
② 抽象的でぼんやりとした理想は、感情が続かない
「カッコよくなりたい」は悪い動機ではありませんが、時間が経つとどうしても薄れてしまいます。
例えば、理想の状態(未来の価値)を『1年後に腹筋が割れて、シックスパックを周囲から称賛される自分』としましょう。
でも、目の前の誘惑(現在の価値)として『今、目の前にある美味しいケーキを食べる満足感』があると、「1年後」という時間の遠さが「カッコいい自分」という価値を大幅に割り引いてしまい、ケーキの誘惑が勝ってしまいます。
③ 外見を目的にすると長続きしにくい
「痩せてちやほやされたい」というように、外見を目的にすると、非常に強力な「きっかけ」になりますが、次のような気持ちが起きやすく、ガソリンが切れるのが早いという特徴があります。
- 「人にコントロールされている」と思ってしまう
外見を目的にする動機は、『他人の評価に自分がコントロールされている』状態ですので、この状態が続くと、人は心理的な負担を感じ、次第にその行動を避けるようになります。 - 燃え尽きてしまう
例えば、ダイエット開始直後は「ちょっと痩せたんじゃない!」と褒められることがありますが、3週間もすると周囲も慣れて、誰も言ってくれなくなります。
もっと褒められるためには、さらに過酷な努力が必要になり、同じ努力量では満足できなくなり、バーンアウトを招きやすいのです。 - 不安やストレスを感じてしまう
『他者の目』を気にする動機は、常に「評価が下がるかもしれない」という恐怖と隣り合わせです。
恐怖や不安は短期的な爆発力はありますが、長期的に脳にストレスを与え続けるため、メンタルが疲弊して継続できなくなります。
継続力を高める3つの工夫
「損をしたくない」「利益を得たい」という強い気持ちがあっても、それだけでは食欲や怠惰に負けてしまう…では、どうすればよいのでしょう?
この記事では行動科学の分野で定説となっている 3つの工夫を組み合わせることで、『モチベが長く続かない』という人間の弱点を無理なく補うことを考えたいと思います。
① 見える化する
人間は見えない目標や未来のリスクは、あっという間に忘れてしまいます。
ですので、目に見えにくい進捗や情報を『一目で分かる状態』にします。
例えば、毎日の体重・体脂肪のグラフや歩数や消費カロリーの記録、健康診断の数値の一覧表、食べたものの写真記録などです。
最近は『あすけん』などのようにスマホで簡単にダイエットの進捗を見える化できるアプリもありますね。
このように見える化することで、「着実に前へと進んでいる」という実感が得られ、脳が「もっと続けよう」と判断しやすくなるのです。
② 自然とそう動いてしまう仕組みを作る
『やる気がないから続かない』わけではなく、本当は、人の行動は環境に大きく左右されます。
ですので、次のような工夫や仕掛けが効きます。
- 食べ過ぎを防ぐ仕組み
- お菓子を見える場所に置かない
- 冷蔵庫の目立つ場所に低カロリー食品を置く
- 運動を始めやすくする仕組み
- 運動用の服を前夜にセットしておく
- 自転車を玄関の近く or すぐ出せる場所に置く
これだけで行動のハードルは劇的に下がります。
『努力しなくても行動できる環境』を作る方が、圧倒的に成功率が高くなります。
③ アメをセットにする:楽しいと思える瞬間を増やす
継続の決め手は、やはり『楽しさ』です。
ダイエットが『苦行』だと、どんな人でも続きません。
『アメとむち』で言えば、アメをセットにして、少しでも「楽しい」「気持ちいい」と思えれば、脳は続ける方向に動きます。
- 運動後にお気に入りのプロテインを飲む
- 行動したらカレンダーに『花丸』や『スタンプ』の印をつける(達成感)
- 新しいスポーツウェアで気分を上げる
- 10分歩いたら100円、スクワット10回で10円など、自分ルールで貯金し、貯まったら『ダイエットとは無関係な欲しかったもの』を買う。
- 『Ring Fit Adventure』や『Fit Boxing』のようなゲーム、あるいは歩数でキャラクターが育つアプリなどを活用する
(関連記事:『関節などの怪我をせずにフィットボクシング2(Fit Boxing 2)を楽しむ方法)』
こうした「快の要素」が積み重なるほど、行動は“自然と”続くようになります。
例えば、私は神奈川県秦野市にある山の方へサイクリングをした際、目的地の近くにある日帰り湯に寄って温泉を楽しみましたが、これも運動へのご褒美で、これがきっかけで、日帰り湯にサイクリングがてら行くようになりました。
(このときの様子は次の記事をご覧ください:『「サイクリング × 日帰り湯」は最高! 『名水はだの富士見の湯』に行きました』)
自転車が『楽しさの良循環』を起こしやすい理由
先程、継続力を高める工夫を紹介しましたが、これらと驚くほど相性がいい運動があります。
それが 自転車(サイクリング) です。
自転車は『優れた有酸素運動』でありながら、『遊び』であり『旅』でもあります。
だからこそ、他の運動では得られない『楽しさの良循環』を自然と生み出すことができます。
これは、先ほどの『アメをセットにする』ことにあたり、継続を促す大きな要因になります。
自転車はスポーツ自転車じゃなくてもOKで、電動アシストやママチャリでも楽しさの循環は十分に起きます。
また、自転車は『歩くより膝や腰に優しい』ので、中高年の方にも向いています。
では、その理由と具体例を順番に見ていきましょう。
① 遠くまで移動できる運動だから、目的が無限に作れる
ウォーキングが飽きやすいのは、基本的に家の近所を回ることが多いからと言われています。
筋トレも、家やジムという同じ場所で繰り返す運動で、どうしてもマンネリ化しやすいですね。
一方、自転車は遠くまで楽に移動できるという圧倒的な強みがあります。
特に輪行(電車+自転車)すると世界が一気に広がり、非日常感を強く味わえます。
「行ける場所が無限にある」という感覚は、マンネリ化を防ぐ上で最強の武器です。
- 観光スポットを巡る
- 神社仏閣を拝観する
- 海沿い・里山・川沿いの風景を楽しむ
- 地元のパン屋・カフェを巡る
- 季節の景色を追いかける(桜、紅葉など)
「その日の目的地」を変えるだけで、まったく新しい体験ができるので、飽きる気配すらありません。
② 『趣味を積んで運べる』から、楽しさを掛け合わせられる
特に電動アシスト自転車のように重い荷物を積んでも走りに影響が出ないタイプだと、趣味のものを運んでいけます。
- 石拾い・鉱物採取(重量のある道具も運べる)
- カメラ撮影(望遠レンズ・三脚もOK)
- バードウォッチング(双眼鏡やカメラバッグも楽に積める)
- ちょっとしたキャンプ用品やコーヒーセットまで
『趣味 × サイクリング = 楽しみの掛け算』で、どちらか一方だけでは続かないものでも、組み合わせることで「やりたい理由」がいくつも生まれます。
マンネリ化が起きにくいのは、まさにこの点にあります。
こちらの記事にもマンネリ化を防ぐアイデアを書きましたので参考にしてください
👉 『【脱マンネリ!】自転車の楽しみ方は無限大!モチベーションUPのヒント集』
③身体が変わる ⇒ 気分が良くなる ⇒ もっと走りたくなる
自転車は有酸素運動としても非常に優秀で、生活習慣病の予防や治療にも医師など専門家に推奨されます。(参考:国土交通省『GOOD CYCLE JAPAN サイクル健康』では、自転車利用が生活習慣病やロコモ予防、健康寿命延伸に寄与することを紹介しています)
- 心肺機能が上がる
- 筋力・持久力がつく
- 膝に負担が少ない
- 血糖値・脂肪燃焼に効果的
- セロトニン・ドーパミンが出て気分が良くなる
このように体が変わると、「もっと走りたい」という気持ちが自然に出てくるのです。
これは、行動科学でいう『正のフィードバック』が働いている状態。
ゾーンに入ると無限にどこまでも走っていきたくなることが私自身あります。
なお、WHOのガイドラインでは、健康のためには、ちょっと汗ばむくらいの強度で週に2、3回以上、時間にして150分以上の運動をするとよいとされています。
(詳しい説明は『【WHO推奨】健康寿命を延ばす運動量とは?中強度の有酸素運動で無理なく実践』の記事をご覧ください。)
④ 『楽しさの良循環』ができ、継続できる
ここまで紹介した要素がすべてつながると、自転車では次のような循環が生まれます。
- 走ると気持ちいい(満足感)
- 体が軽くなり、日常生活が楽になる(報酬+可視化)
- 動けるようになると、行動範囲がさらに広がる(自然と動いてしまう仕組みの拡張)
- 新しい目的地・趣味でマンネリ化しない(アメとのセット容易化)
⇒ ①へ
この 『楽しさの良循環』は、他の運動ではなかなか作れません。
ダイエット目的で始めたはずなのに、いつの間にか「走りたいから走る」に変わっていく。
これこそ、自転車が最強の継続ツールと言われる理由です。
ダイエットに何度も挫折したと言っていた私の知り合いに自転車運動を勧めました。
最初の1ヶ月は、普通のクロスバイクで近所を軽くサイクリングすることから始め、毎日30分程度、自転車に乗るだけで、なんと1ヶ月で2kgの減量に成功したそうです。
その人は、自転車でのサイクリングが次第に楽しくなってきて、週末には少し遠出をするようになり、3ヶ月後には、合計で6kgの減量に成功しました。
おわりに
ダイエットが続かないのは、意志が弱いからではありません。
人間の脳は『未来のための努力』より『今すぐの快楽』を優先するようにできているからです。
ダイエットを続けるコツは『意志の強さ』ではなく『環境と仕組みづくり』。
自転車はその仕組みを自然に作れる、数少ない運動です。
『頑張らなくても続く方法』 を探すなら、まずは生活の中に小さな仕掛けを一つ加えてみてください。
例えば、自転車を玄関に置くなどして、直ぐ乗れるようにするなど。
やる気ゼロの日でも勝手に体が動くようになりますよ。






























・人は「未来の不安」より「今すぐの快楽」を優先する
・「損をしたくない」という動機は強いが、長続きしない
・「得をしたい」という動機も継続力は弱い