あなたの自転車、サドルの下やフレームをじっくり見たことはありますか?
そこには「BAA」や「TSマーク」といった、いくつかのシールが貼られているはずです。
「ただの点検済みシールでしょ?」と思ったら大間違い。
自転車事故で1億円近い賠償――他人事ではありません。
実はそのシール1枚が、万が一の事故の際に巨額の賠償金からあなたを守る「盾」になることもあるのです。
また、「保険に入っているから大丈夫」という方も、実はシールの有効期限が切れていて、いざという時に補償が受けられないという落とし穴にハマっているかもしれません。
本記事では、地味だけど大切なシールのポイントを分かりやすく解説します。
- BAAやTSマークなど、シールの正体と「安全基準」の違い
- 知らないと怖い!TSマークの「有効期限」と保険の落とし穴
- 自動車保険の特約があっても、あえてTSマークを貼るべき「納得の理由」
- 自治体でこれほど違う?防犯登録の意外な有効期限
「ネットで買った自転車にシールがないけど大丈夫?」「結局、どの保険が一番安心なの?」といった、誰もが抱く疑問をスッキリ解決しましょう。
あなたの、そして大切な家族の安全と家計を守るための「自転車の常識」を、今ここでアップデートしてみませんか?
目 次
自転車安全マーク「BAA・SG・JIS」の違いは?基準と補償を徹底解説
自転車マークの中で、自転車の「安全基準」に深い関わりのあるものは、主にBAAマーク、SGマーク、JISマークの3つです。

いずれもメーカー出荷時に貼られるものですが、それぞれ審査機関と目的が異なります。
| マーク | 認証機関 | 目的・基準 | 適用 | 賠償責任 |
|---|---|---|---|---|
| BAA | 一般社団法人自転車協会 | 協会独自の厳しい安全基準 | 主に国内メーカーのシティサイクル | なし(安全性の証) |
| SG | 製品安全協会 | 消費者向けに製品の安全性を認証 | 主に子ども用自転車・ヘルメットなど | あり(万が一の事故で補償) |
| JIS | 国(日本産業標準調査会) | 工業製品としての強度・性能など国の基準 | 自転車本体や部品の強度・耐久性 | なし(国の規格適合の証) |
マークの年間交付枚数でいうと、BAAマークが圧倒的に多いです。
(参照:自転車の安全利用促進委員会『自転車に貼付してあるマークの意義とは?』)
ネット通販の自転車は危険?「マークなし」を買う時の注意点と対策
Amazonや楽天市場などでは、BAAやSG、JISマークが付いていない、安価な自転車や海外製品も多く販売されています。
マークはあくまで「第三者による安全認証」であり、貼られていないからといって直ちに法令違反になるわけではありません 。
【ただし注意すべきポイント】
マーク無しの自転車を選ぶ際には、以下の点を認識し、点検を実施することをお勧めします。
- 強度・品質の不安:
- 日本の安全基準を満たしていない可能性があり、フレームの溶接不良や部品の早期破損などの初期不良が発生しやすい場合があります 。
- 初期不良の対応:
- 販売店やメーカーのサポート体制が不十分で、初期不良が発生した際の修理や交換対応が遅れたり、受けられなかったりするケースがあります 。
- 点検整備の徹底:
- マーク有無に関わらず、購入後は必ずプロの自転車店で初期点検(増し締めや調整)を受けてください。安全に乗るための必須項目です 。
TSマークは「点検+保険」!色による補償額の違いと更新の重要性
TSマークの「TS」は「Traffic Safety(交通安全)」の略で、「自転車安全整備士による点検・整備」と「傷害保険・賠償責任保険」がセットになったものです。
私も点検の際、自転車安全整備士の人から、シフトケーブルが長すぎて万一、何かに引っかかると危険だと指摘されたので、換えてもらいましたが、気が付かなかった点なので、助かりました。
自転車屋さんで自転車を購入する際、「TSマークの補償を付けますか?」と必ず、尋ねられると思います。
また、次のようなシールが自転車に貼ってあるのを見たことがある方は多いと思います。

TSマークの補償内容(色の違い)
TSマークは、付帯する保険の補償額と内容によって色が違います。
緑色は「示談交渉サービス」が付いており、事故の際、相手との面倒な交渉を代行してくれるのが大きなメリットですね。
| 種別 | 賠償責任補償 | |
| 緑色TSマーク | 死亡・傷害(全ての人身事故) ※示談交渉サービス付き | (限度額)1億円 |
| 赤色TSマーク | 死亡・重度後遺障害(1~7級) | (限度額)1億円 |
| 青色TSマーク | 死亡・重度後遺障害(1~7級) | (限度額)1,000万円 |
自転車保険の加入は大多数の都府県で義務もしくは努力義務と条例で制定されています。

あなたの住む地域がどうか分からない場合は、次のWebページで調べることができます:
i保険(あいほけん)『全国自治体の自転車保険加入の義務化状況一覧』
【注意】TSマークの有効期限は1年!期限切れを防ぐ更新のタイミング
TSマークの補償には、有効期限が1年間と定められています 。
これは、TSマークが「その点検を受けた時点から1年間の安全性と保険」を証明するものであり、自転車の安全性は日々の使用で変化するためです。
毎年自転車店で点検・整備を受ければ、マークと保険を更新できます 。
【あなたのTSマークは期限切れかも?】
今すぐサドル下のフレームを確認し、期限が切れていたら、自転車店で点検を受けて更新しましょう!
自転車特約があればTSマークは不要?「保険と安全」を両立する併用術
近年、自動車保険や火災保険に付帯する「個人賠償責任保険」(相手に与えてしまった損害を賠償するための保険)と「自転車傷害特約」(自分、即ち、契約者・被保険者のケガを補償するもの)の両方に加入する方が増えています。
高額な賠償責任に備えることができ、さらに自分自身や家族のケガまでカバーできる、非常に強力な補償です。
自動車保険の特約が最強?「人」をカバーする高い賠償能力の魅力
保険としての役割を比較した場合、特約セットにはTSマークにない次の大きな優位性があります。
- 補償の対象が「人」であること:
- 自動車保険などの特約は、ご契約者本人とその家族に付帯します。
そのため、どの自転車に乗っていても、また複数の自転車を所有していても、常に補償の対象となります。 - 一方、TSマークの保険は、「点検整備された特定の自転車」に付帯する保険であり、その自転車に乗っているときしか補償されません。
- 自動車保険などの特約は、ご契約者本人とその家族に付帯します。
- 補償額が高額であること:
- 特約の場合、個人賠償責任は1億円や無制限で契約でき、自転車傷害特約もTSマーク(最大100万円)より手厚い場合があります。
ですので、特約セットに加入している場合、TSマークの「保険」としての役割は、ほぼ不要であると言えます。
それでもTSマークを貼るべき理由:プロによる「安全の証明」
私は、以前、自転車を購入する際、TSマークの保険を付けるかどうかの選択を求められ、どうしようか悩んだことがあります。
なぜなら、自動車保険の自転車特約を付けていたので、初めはTSマークの保険は要らないと思ったのです。
それでも結局、TSマークは単なる保険ではなく、「自転車安全整備士による、プロの安全点検・整備を受けた証」でもあるので、付けることにしました。
TSマークの付帯保険は、自転車安全整備士による厳しい点検(ブレーキの効き、ハンドルのガタつき、タイヤの空気圧など)が行われたことを前提としています。
次の図は、点検整備基準に基づく重点点検項目です。

TSマークの補償期間は1年ですが、これは「1年に一度、プロの目で自転車の安全性を確認してもらい、整備を受ける仕組み」として非常に優れています。
自転車をネットで購入した場合、次年度以降のTSマークの更新は、近所の「自転車安全整備士」の資格を持つ整備士が在籍し、「TSマークの取扱い」を行っている自転車店を選ぶこともできます。
TSマークの更新にかかる点検・整備費用込みの相場は2,000~3,000円程度です。
なお、点検整備を受けた結果、部品の交換等が発生した場合は、別途、部品代等が必要です。
結論:併用は「保険のため」でなく「安全のため」
- 保険を目的とするなら、自動車保険に付けられる「個人賠償責任特約」と「自転車傷害特約」で高額な賠償責任と傷害補償を確保しましょう。
火災保険も、個人賠償責任特約を付けられるものが多くあります。
クレジットカードにも個人賠償責任特約を付けることができるものがありますが、補償限度額の最大は1億円で無制限はありません。
また、カード会社によって加入方法・補償範囲・家族の扱いが大きく異なります。 - 安全を目的とするなら、TSマークの「点検・整備」を毎年受け、その証としてマークを更新しましょう。
つまり、特約セットで保険は万全にし、TSマークは毎年安全点検を受けるための仕組みとして活用するのが、最もリスクを減らす選択肢となります。
注意:個人賠償責任保険(相手への賠償)と自転車傷害特約(自分のケガ)のどちらについても、約款に定められた免責事由に該当した場合、保険金が支払われないことがあります。
代表的な免責事由には次のものがあります:
● 酒酔い運転(ほぼ確実に免責)
● 重大な過失(ながらスマホ運転、無灯火高速走行など)
● 競技・レース中の事故
● 故意に近い行為
自転車の防犯登録はなぜ義務?盗難時に戻ってくる確率と未登録のリスク
防犯登録は、「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」により、購入者に義務付けられています 。
主な目的は、盗難品の流通防止と、盗難被害に遭った自転車の早期発見です 。
自転車窃盗の認知件数が、令和5年は16万4,180件(前年比3万5,297件(27.4%)増)と、令和4年から2年連続で大きく増加したそうなので、気をつける必要があります。
(参照元:令和6年版 犯罪白書)
自転車を所有する際に、氏名や住所、車体番号などを警察のデータに登録することで、盗難車が発見された際に持ち主がすぐに特定できるようになります。

防犯登録をして盗難届を出した場合、所有者のもとに戻る確率はおおよそ、2~3割程度と言われています。
私も以前、ママチャリを盗まれて、近所の交番に車種や色や特徴と共に防犯登録番号を通報しました。
1週間くらいで、警察から見つかったという連絡をもらい、無事、戻ってきました。
防犯登録がされていない自転車は、発見されても誰のものか照会できず、警察は、持ち主が特定できない自転車を一定期間(原則3か月)保管した後、処分することになります 。
なお、自転車の盗難被害に遭った時に盗難届を出さないと、盗まれた自転車が放置自転車として撤去された場合、撤去費用や保管費用をあなたが負担することになる可能性があります。
「私は自転車を盗まれた被害者なのに、なぜ?」と腹が立つと思いますが、法律上では「持ち主が責任を持つ」ということになっているからです。
ということで、面倒かもしれませんが警察に届ける方が良いと思います。
自転車を盗まれて、警察に通報する際に必要な情報や警察で行う手続きについては、『【保存版】 電動アシスト自転車の盗難対策&対処法!あなたの愛車を守る秘訣』の記事をご覧ください。
中古や譲ってもらった自転車、防犯登録はどうすればいい?
中古自転車販売店やメルカリのようなフリマアプリで購入した自転車、知人から譲り受けた自転車も、新しい所有者の名前で防犯登録(所有者変更)をする必要があります 。
手続きは、自転車店や防犯登録所で行え、以下のものが必要です 。
- 登録する自転車本体
- 公的機関が発行する身分証明書
- 例:運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど
- 自転車の「購入を証明するもの」
- 譲渡された場合:譲渡証明書(前の所有者の署名・捺印があるもの)が必要です。
- 新品で購入した場合:保証書または販売証明書(車体番号、販売店名、購入者名などが記載されたもの)
- 外国籍の方:在留カードなど
⚠️ 特に「譲渡証明書」を忘れずにお持ちください。
防犯登録は、盗難車でないことを確認するため、「誰からその自転車を入手したか」を証明することが必須となります。
防犯登録の料金は、東京都の場合、660円(非課税)で、他の地域では金額が異なる(600〜700円前後)可能性があります。
余談ですが、上記のことから、逆にあなたが乗らなくなった自転車をメルカリなどで販売する場合は、防犯登録を抹消し、譲渡証明書を作成して新しい所有者に渡す必要があることが分かります。
メルカリで買った自転車で、譲渡証明がないために、新所有者が防犯登録できないケースが少なくないと聞きます。
この詳しい方法や書式例については『メルカリ で自転車を売るときの出品、発送、防犯登録解除、譲渡証明書作成の方法とコツ』の記事をご覧ください。
神奈川や埼玉は8年?自治体で異なる防犯登録の「有効期限」に注意
自転車の防犯登録の有効期限は都道府県によって異なります。
多くの自治体で10年程度が一般的ですが、無期限の地域(例: 青森県、岩手県、福島県など)や20年(山形県、広島県)、15年(愛媛県、熊本県)、8年(神奈川県、埼玉県など)、5年(沖縄県)とかなり幅があります。
自転車に貼られた防犯登録シールをチェックし、登録年と自治体の有効期限を照合してください。
期限切れの場合は、お近くの自転車安全整備店で再登録しましょう。
高級ロードバイクにBAAマークがないのはなぜ?その安全性と基準
高価なロードバイクやクロスバイクなどのスポーツバイクには、BAAやSGマークが付いていないことがよくあります。
これは決して「安全ではない」という意味ではありません。
スポーツバイクは“物理特性・走行性能”の基準が異なる
BAAマークやSGマークは、主にシティサイクルや電動アシスト自転車など、日本の一般道での日常的な利用を想定した基準に基づいて設計されています 。
一方、スポーツバイクは、軽さ、剛性、走行性能など、競技用に近い独自の設計思想に基づいて作られています 。
海外メーカーは日本独自のBAA制度に対応しないことが多い
多くの高級スポーツバイクは、欧米や台湾などの海外メーカーが製造しています 。
これらのメーカーは、日本独自のBAAやSGの認証制度に、コストや手続きの面から対応していないことが多いです 。
マークが無くても、世界的に信頼されている大手メーカーの製品であれば、独自の厳しい品質管理基準や、ISO(国際標準化機構)などの規格に基づいて製造されており、安全性は確保されています。
ただし、スポーツバイクはシビアな調整が必要なため、専門の自転車店で定期的な整備・メンテナンスを行うことをお勧めします。
まとめ|シールを理解し、自転車選びと安全対策がもっと安心に
自転車のシールは、それぞれ「安全性」「保険・補償」「盗難対策」という全く異なる「目的」を持っています 。
- BAA・SG: 自転車本体の安全性の基準
- TSマーク: 点検整備と対人・対自身の保険
- 防犯登録: 盗難対策と所有者特定
どのマークが必要かは、あなたの利用目的や、すでに加入している保険によって異なります 。
知っておくと損しないポイントのおさらい:
まずはご自身の自転車のシールをチェックし、TSマークの期限が切れていないか確認しましょう!





























自転車事故で、巨額の賠償金を支払うケースも少なくないようです。
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車走行中、歩道と車道の区別の無い道路において、歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い意識が戻らない状態となった。
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前から車道を斜め横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突、男性会社員に後遺障害(言語機能の喪失)が残った。
(引用元:警視庁『自転車利用中の対人賠償事故に備える保険等への加入義務化』)