職場の近くの交差点、小雨の中を自転車で急いで走っている男性が信号無視をし、警察官に呼び止められた。
警察官が名前と住所を尋ねると、「名前はえっと… 佐藤… 身分証は持ってません」と歯切れが悪い。
彼は知らなかった… 信号無視が、たかだか数千円の反則金では済まない最悪の事態を引き起こす可能性があることを…
多くの人が疑問に思うのが、次のことでしょう。
2026年4月から、いよいよ自転車にも青切符制度(交通反則告知)が導入されます。
この記事では、現行の自動車・バイクの警察の違反処理の資料や既に報道されているメディア記事
を踏まえて、自転車の交通違反で青切符の交付の際、「本人確認」がどう行われるのかを分かりやすく解説します。
違反手続きを深掘りしていくと、『自転車だから逃げられる』という考えは完全に誤りで、身分証がなくても、防犯登録がなくても、虚偽申告をしても、最終的には本人確認から逃れることはできない、ということが分かります。
青切符制度の実施に先立って、2025年9月に警察庁から「自転車ルールブック」が公表されたので、『自転車の青切符・赤切符|即、切られる違反行為と罰則一覧』という当ブログ記事でその概要を紹介しています。
この中で、危険性や悪質性が高いため、即時に青切符が交付される次の違反例を紹介していますが、このような違反は重点的取締対象になると予想されます。
| 違反行為 | 反則金 |
|---|---|
| 遮断踏切への立入り | 7,000円 |
| 自転車のブレーキ不良(制動装置不良) | 5,000円 |
| ながらスマホ(手で保持) | 12,000円 |
| 歩道でスピードを出して歩行者を妨害 | 6,000円 |
| 信号無視で車に急ブレーキをかけさせた場合 | 6,000円 |
| 2人乗りをしながら、赤信号を無視(同時に2つの違反) | 6,000円 |
| 傘差し運転&一時不停止違反(同時に2つの違反) | 5,000円 |
| 警察官の指導に従わず右側通行を継続 | 6,000円 |
| 警察官の前で無視して信号違反 | 6,000円 |
目 次
自転車で違反した!本人確認でのウソはほぼ100%バレる?
既存の制度からの推定に基づいて、自転車の違反時に警察官が行う本人確認の流れを、順を追って解説します(なぜ、このように言えるのかについては、末尾の『当記事の根拠』をご覧ください。)。
まず行われるのは『氏名・住所・生年月日の申告』
どんな違反でも、最初に行われるのはシンプルです。
警察官:「名前は?」
違反者:「◯◯です」
警察官:「住所と生年月日は?」
違反者:「△△市▢▢町…」
この『口頭申告』が本人確認のスタート地点になります。
聞かれた内容だけを、短く答えるのが最もスムーズで、余計な説明や言い訳をすればするほど、長引きます。
その場で本人確認 ⇒ 青切符交付のケース
次のように、身分証や防犯登録、警察官の携帯端末での情報照会で本人確認がされれば、その場で青切符がきられます。
身分証の提示
身分証は法律上「提示義務」がないため、強制できませんが、任意で次のようなものを持っていないかの確認が行われます。
- 健康保険証
- 学生証
- 社員証
- マイナンバーカード
- その他公的な身分証明書
身分証を提示すれば本人確認が一瞬で終わり、最短ルートで手続きが終了します。
防犯登録の所有者情報との照合

防犯登録のある自転車の場合は、車体の防犯登録番号を読み取り、登録内容を照会します。
✔ 申告した名前と防犯登録の名前が同じ → 信頼度アップ
✔ 一致しない → さらに事情聴取へ
✔ 無関係の名前 → 虚偽申告の疑い
という判断ができます。
自転車利用者にとっては『盗難対策』が目的の登録ですが、警察にとっては本人確認の重要な手がかりにもなっています。
申告と防犯登録が一致しない場合、虚偽申告や盗難の疑いが生まれ、深刻な話しになります。
防犯登録が本人名義でない場合、あらぬ誤解を避けるため、「中古で買った」「家族の自転車」など、事実を簡潔に説明すれば問題ありません。
また、防犯登録のシールが自転車に貼られていない場合、それだけで交通違反になることはなく、青切符の対象でもありません。
ただし、防犯登録をしていない、またはシールが剥がれている場合、警察から「本当に本人の自転車か」を確認されやすくなり、職務質問や本人確認が長引くことがあります。
盗難防止やトラブル回避のためにも、登録状況を確認し、必要なら再登録しておくと安心です。
自転車の防犯登録の有効期限は地域によっては無期限でないことをご存知ですか?
無期限の地域(例: 青森県、岩手県、福島県など)もありますが、多くの自治体で10年程度が一般的で、20年(山形県、広島県)、15年(愛媛県、熊本県)、8年(神奈川県、埼玉県など)、5年(沖縄県)とかなり幅があります。
自転車に貼られた防犯登録シールをチェックし、登録年と自治体の有効期限を照合してください。期限切れの場合は再登録が必要です。
リアルタイム照会ですぐに嘘を見破る
警察官は表情や視線、話すスピード、しぐさなどから嘘を見抜こうとしますが、街頭の警察官は、ほぼ例外なく専用の情報照会端末(スマホ型)という強力なツールを持っています。
これに、氏名や生年月日、住所を入力すると、
✔ 住民基本台帳による実在確認(警察庁や自治体への照会を介して行われる)
✔ 警察内部データベース(過去の職質・違反歴など)
✔ 必要に応じて他県の照会
が、数十秒〜数分で照会できます。
このような情報から、『申告住所にその番地は実在するか』『申告内容(例:姓名、生年月日、親の名前)に誤りがないか』『過去の職質や違反の履歴はあるか』などをチェックできます。
その場で本人確認できない場合 ⇒ 交番・警察署へ同行
申告内容が不自然、身分証もない、防犯登録もない… こうなると、『その場では本人確認ができない』と判断され、任意同行を求められます。
拒否すると、より怪しいと見なされ、さらに強い説得が行われることもあります。
「警察24時」系のテレビ番組で、『同行をお願いする』だけなのに、複数人の警察官が対象者を囲み、強い口調で説得している様子を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

つまり、『強制』ではなく『任意』であっても、実務は『実質拘束』に近い状況になるケースが多いのです。
同行を拒否した場合、単に怪しいと見なされるだけでなく 、『現行犯逮捕』される可能性があります。
また、『感情的になり暴言を吐く』『警察官を押しのける』などの行為をすると、公務執行妨害として扱われる可能性もあります。
交番・警察署に到着すると、所持品の確認や自宅への電話確認や家族への連絡、あるいは、必要に応じて自宅への同行などが行われます。
(青切符は16歳以上が対象ですから、学生の場合、保護者や学校への連絡もされます)
このように、身分証がない、防犯登録がない、虚偽申告をしている、といったケースであっても、本人であるか否かが確定するまで解放されません。
最終的に本人確認がなされ、青切符が切られます。
フロー図でわかる:本人確認のプロセス
ここまで説明した内容を、フロー図にしたのが次の図です。
要するに、例え、身分証や防犯登録がなくても、虚偽申告をしても、交番や警察署への同行が求められ、最後にはごまかしきれなくなるということです。

自転車の青切符制度は2026年4月から導入予定ですが、警察の違反処理は、既存の自動車・原付の交通反則通告制度と同じ仕組みが次のように適用されると予測されます。
1. 納付書が交付される
青切符が交付される際、反則金を納めるための『納付書(告知書と一体)』が警察官から渡されます。
2. 納付の場所
納付書に記載された期限内に、以下の場所で反則金を納めます。
主に銀行、信用金庫、郵便局(ゆうちょ銀行)の窓口で納付できます。
コンビニでの納付は、制度上、通常はできません。
3. 納付の期限
納付期限は、告知書を受け取った日から数えて、一般的に7日以内に設定されます。
【期限を過ぎた場合】
納付期限を過ぎると交通反則通告センターから出頭要請のハガキ(または通知)が届き、それでも無視すると検察に送致され、略式起訴で罰金や科料が科される可能性が高いです。
また、前科が付いてしまうことになります。
名前を偽ったら本当に刑事事件になるの?
「名前だけ適当に名乗れば逃げられるんじゃないの?」「嘘の住所を教えて、バレなければOKでは?」

…もしそう考える人がいるなら、絶対、考えを改めましょう。
なぜなら、虚偽申告は青切符どころでは済まないからです。
これは大げさな話ではなく、青切符(交通反則告知書)という行政処分から、刑事事件として扱われるケースもあります。
ウソをついたら本当にバレる?!
ここまでの説明でお分かりのように、本人確認の際に、名前や住所などを偽っても、防犯登録や警察端末での照会、さらに怪しい点が見つかれば交番・警察署へ同行になります。
こうして、『本当に申告した人間なのか』『その住所に住んでいるのか』が確認され、虚偽申告は必ずバレてしまいます。
最悪の場合、『刑事処分』へ格上げ!
青切符はあくまで「行政処分」で、反則金を払えば終わりです。
しかし虚偽申告・逃走・抵抗などがあると…
① 公務執行妨害(刑法95条)
警察官の職務執行を妨げる行為は、最大3年以下の懲役または50万円以下の罰金。
虚偽申告はこれに該当するケースがあります。
② 犯人隠避(刑法103条)
自分自身であっても、「警察による発見・逮捕を妨害する行為」として扱われることがあります。
③ 偽計業務妨害(刑法233条)
虚偽の情報提供により、警察の業務を混乱させる行為に該当する場合があります。
④ 逃走行為が加わるとさらに悪化
逃げたり抵抗したりすると、公務執行妨害はほぼ確実に視野に入ります。

このように、虚偽申告・逃走・抵抗は『軽微な違反 → 刑事事件』に格上げされる可能性があり、起訴されて有罪となった場合には、罰金刑などの刑事罰が科され、前科がつくことになります。
つまり、全然『割に合わない行為』と言えます。
「ニホンゴ、ワカリマセン」という外国人は?
自転車の取り締まりでは、最近、非常に増えている日本在住の外国人を検挙する場面も想定されます。
本当は日本語が分かるのに、取り締まりを受けたときは、分からないふりをする外国人も少なくないと聞きます。

では、こうした場合、本人確認はどう行われるのでしょうか?
結論から言うと、外国人の本人確認は日本人よりむしろ明確で簡単です。
その理由は、在留カード携帯義務(入管法19条)という法律があり、これが日本人との決定的な違いです。
在留カードの不携帯はそれ自体が『別の違反』
日本人は身分証の携帯義務がありませんが、外国人は違います。
🔴 在留カードを携帯していない
🔴 提示を拒否する
🔴 そもそも所持していない(密入国、紛失等)

これらはそれ自体が、入国管理法違反に該当する可能性があります。
そのため、本人確認から逃れられる余地はまったく無いのです。
「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン」と言っていても、警察は次の手段で確認を行えます。
- 通訳機(ポケトーク等)で意思確認
- 多言語対応の照会端末で情報照会
- 在留カードのIC情報を読み取り、住所・氏名・国籍・在留資格の確認
(在留カードは高度な偽造防止技術で守られていて、偽造やIC情報の改ざんは極めて困難) - 必要に応じ、交番・警察署へ同行
- 入管への照会(ケースによる)
在留カードが無い、あるいはあっても期限切れ、偽造、虚偽記載などのように、在留資格に問題があることが発覚すると、青切符どころでは済まないことになります。
即、入国管理局が関与し、出入国管理法違反として処理されます。
以上のように、外国人の本人確認は確実に行われ、不法在留者は摘発されます。
たかが自転車の違反に、なぜそこまで手間をかけるの?
ここまででお分かりのように、青切符を切るためには、本人確認が当然、必要ですが、それに手間がかかる場合も少なくなさそうです。
そのため、「たかだか数千円の自転車違反のために、忙しい警察官がそこまで手間をかけるの?」というような声をよく聞きます。
けれども、この疑問には制度の本質に関する誤解が含まれています。
結論を先に言うと、警察が自転車の軽微な違反を取り締まる目的は:
- 反則金を集めるためではない
- 本当の目的は、自転車の交通ルールの遵守を促し、交通事故防止を図ること
(引用元:令和7年版交通白書『自転車の交通違反に対する交通反則通告制度の適用について』)
実際、自転車の事故は増えていて、スマホを見ながらの走行、信号無視、車道の逆走、傘差し走行など多くの違反が横行しています。
青切符制度の導入は、自転車の危険運転が当たり前の文化になってしまうのを食い止める象徴的な措置と言えると思います。
「なぜ私だけ捕まえる!」とならない?
自転車に限らず、交通取り締まりで多い苦情がこれですよね。

「〇〇(一旦停止、スピード制限など)はみんなきちんと守ってないのに、なぜ私だけ捕まった?運が悪い… なんて日だ!」
気持ちは非常によく分かりますが、次のように避けられない理由があります。
- 警察官の人数には限りがあるため、すべての違反者を一斉に取り締まることは不可能。
- 警察官は、以下のように優先順位をつけて取り締まりを行います:
- 交通量が多い場所
- 事故が多発する地点
- 住民から苦情が多い場所
- 危険性の高い違反が起こりやすい場所
- そのため、違反をしても「捕まる人」と「捕まらない人」が発生するのは避けられません。
- 自転車の青切符制度が始まっても、同じ現象は起こる。
→ 「取り締まりに遭遇するかどうか」はケースバイケース。 - 『違反をすれば見つかる可能性がある』という抑止力を作ることが目的なので、不公平ということではありません。
自転車の乗り手が今日からできる対策は?
次のことを心がけるだけで、青切符制度が始まっても安心して自転車に乗ることができます。
① 自転車の防犯登録を行う(多くの自治体で義務または努力義務)
- 新車購入時に自動的に行われることが多い
- 中古購入・譲渡の場合は忘れずに再登録
- 本人確認の手間が大幅に減る
- 盗難防止としてもメリットが大きい
② 身分証(のコピー)を財布やスマホに入れておく
絶対ではないものの、提示すれば手続きが一気に簡単になります。
- 健康保険証
- 学生証・社員証
- 運転免許証
- マイナカード
スマホに保存した「身分証の写真」だけでは、法律上の正式な本人確認にはなりませんが、警察実務では『本人確認の有力な手がかり』として使われることは十分にあります。
リタイアした高齢者は、身分証を持たずに出歩く人も多いかと思いますが、何かしら身分証になるもの持って外出した方が良いと思います。
③ 取り締まりの重点対象になる違反を避ける
冒頭に『即、青切符が切られやすい違反の一覧』を紹介しましたが、その一覧にあるような違反は重点的に取締りが行われると予想されます。
特に、通勤通学時間帯の学校や駅近辺では、交通量が多く危険性の高い違反が起こりやすいので、重点的に取締りが行われることが多いですから、サラリーマンや学生は気を付けて欲しいと思います。
④ 外国人は必ず在留カードを携帯する
在留カードは法律上「常時携帯義務」があります。
青切符以上の問題にならないように、確実に所持しておく必要があります。
おわりに
青切符制度は、自転車への嫌がらせ(笑)などではなく、事故を減らし、自転車利用者の安全を守るためのものです。
自転車の交通違反による事故が増加していることを背景に導される制度です。
この記事が、『もう少し交通ルールを意識する』『身分証や防犯登録を整えておく』『自転車の安全性を見直す』などのきっかけになれば幸いです。
補足:当記事の根拠
この記事を書いている時点では、自転車の青切符での本人確認手続きは未公表ですが 、自動車・原付と同じ原理で運用されるため 、『既に確立された手続きが、自転車にもそのまま適用される』 と考えるのが自然です。
その根拠となる警察資料と報道は以下の通りです。
類推に使える警察の正式資料例
■ 警察庁『運転免許の行政処分手配等の処理要領』(PDF)
https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/menkyo/menkyo20191203_r034.pdf
■ 和歌山県警『行政処分手配者に対する出頭命令および免許証保管に関する事務処理要領』(PDF)
https://www.police.pref.wakayama.lg.jp/05_kenkei/kunrei/2/404unmen/unmen21.pdf
■ 千葉県警『運転免許の行政処分事務取扱要領』(PDF)
https://www.police.pref.chiba.jp/content/common/000009772.pdf
メディア報道とも整合性あり
■ ダイヤモンド・オンライン(2025年11月19日)
「自転車で信号無視→『身分証ない』とシラを切ったらどうなる?」
https://diamond.jp/articles/-/377130
記事内では、「身分証がない」「名前を言わない」「虚偽申告」などに対し、実際の警察実務がどう進むかが紹介されています。
■ サイクルスポーツ(2015年6月11日)
「検挙時の本人確認の方法は?」
https://old.cyclesports.jp/depot/detail/50818
この2015年の記事は改正道路交通法に合わせた内容ですが、現在でも運用上の考え方はほぼ変わっていません。






























「クルマと違って、免許証がいらない自転車の違反で、本人確認ってどうやるの?」