「認知症予防のために、何か始めなければ」
そう考えて、DHAやビタミンのサプリメントを探したことはありませんか?
ところが、2026年7月にWHOが公表した最新ガイドラインを見ると、少し意外な結論が見えてきます。
WHOは、認知症予防を目的としたビタミンB・E、オメガ3などのサプリメントを推奨していません。
一方で、強く推奨されているのが「身体活動」です。
では、運動をすれば認知症を防げるのでしょうか?
実は、ここにも注意が必要です。
WHOの「推奨」と「エビデンス(効果の確証)の確実性」は同じものではないからです。
認知症を予防し、健康長寿を実現するために、私たちは具体的に何をすればよいのでしょうか?
2026年7月、世界保健機関(WHO)は「認知機能低下および認知症のリスク低減:WHOガイドライン」の第2版を公表しました。
この記事では、WHO最新ガイドラインをもとに、認知症予防について「何が推奨されているのか」だけでなく、「その根拠はどのくらい確かなのか」にも注目し、私たちが取り組むべき対策の優先度を考えてみます。
なお、若い人は「認知症は高齢者の病気だから、自分にはまだ関係ない」と思うかもしれませんが、次のように、この記事が若い人にも参考になると思います。
アルツハイマー病の原因のひとつとして注目されているのが、「アミロイドβ(ベータ)」というたんぱく質ですが、これが溜まり始めるのが、症状の出る20年以上前からだと言われています。
つまり、70〜80代で認知症を発症した場合、それはすでに40〜50代のころから脳の中で始まっていた可能性があるということです。
(参照:朝日生命「認知症に深く関係する物質 アミロイドβとは」、
日本経済新聞「アルツハイマーの原因アミロイドβ いつからたまる?」)
WHO最新「認知症予防ガイドライン第2版」で何が変わった?
2026年WHO認知症予防ガイドライン第2版とは
2026年7月15日、世界保健機関(WHO)は「認知機能低下および認知症のリスク低減:WHOガイドライン」の第2版を公表しました。
WHOが認知症のリスク低減について初めてガイドラインを公表したのは2019年です。
今回の第2版は、それ以降に蓄積された研究成果を再検討し、認知症のリスク低減について最新のエビデンスに基づく推奨をまとめ直したものです。
「認知症リスク最大45%」はどういう意味?
日本の65歳以上の約3.6人に1人――これは厚生労働省の研究班が公表した公式推計値で、認知症と軽度認知障害(MCI)を合わせた数字です。
(※参照:厚生労働省『共生社会の実現へ向けた認知症施策の推進について』)
内訳は、認知症が12.3%(約8人に1人)、軽度認知障害(MCI)が15.5%(約6人に1人)です。
認知症の有病率・患者数ともに、今後さらに上昇・増加していくと予測されています。
多いですね――この数字をみると、認知症は健康長寿を目指す高齢者にとってかなりの脅威であることが分かります。
残念ながら、認知症には加齢や遺伝的背景、脳の状態変化など、自分の努力だけでは変えられない要因がありますし、生活習慣に気をつけていても、認知症になる人はいます。
一方で、私たちが改善・対応できる要因もありますので、WHO認知症予防ガイドライン第2版の内容をみてみましょう。
今回のWHOの発表で、目を引くのが、
「認知症のリスクの最大45%は、予防または発症を遅らせることが可能」
という数字です。
この数字は、「生活習慣を改善すれば、誰でも認知症になる確率が45%低下する」という意味ではありません。
これが示しているのは、喫煙、過度の飲酒、身体活動不足、社会的孤立、大気汚染、高血圧や糖尿病など、改善可能な危険因子に起因すると推定される認知症症例が、人口全体の認知症症例の最大45%に相当するという公衆衛生上の推計です。
個人の認知症リスクは、年齢、遺伝的背景、既存の病気、脳の病理変化など、本人の努力だけでは変えられない要因にも左右されるので、「認知症の45%は生活習慣改善で防げる」と単純に受け取ることはできません。
「多因子介入」は、今回の新しいポイント
今回のガイドラインでは、従来から重視されてきた健康的な生活習慣や生活習慣病の管理に加えて、運動・血圧・食事など、複数のリスク要因をまとめて改善する取り組み(多因子介入)についても扱っています。
具体的には、身体活動、健康的な食事、認知活動、社会活動、代謝・血管リスクの管理、禁煙など、複数の要素を組み合わせた介入です。
ただし、これは「複数の対策を組み合わせれば認知症を大幅に防げる」という意味ではありません。
ここで大切なのは、「すべての人が同じメニューをこなす」という意味ではないことです。
WHOがいう「個別化」とは、その人に存在するリスク要因に応じて、取り組む項目や強度、方法を調整することです。
例えば、
- 運動不足がある人 → 身体活動を増やす
- 高血圧がある人 → 血圧管理を徹底する
- 喫煙している人 → 禁煙に取り組む
- 難聴がある人 → 聴力を評価し、必要なら補聴器を検討する
- 社会とのつながりが少ない人 → 外出や交流の機会を増やす
というように、「自分にとって改善余地の大きいところから取り組む」という考え方です。
これは、認知症予防のために新しい健康法を一つ追加するというより、現在の健康状態をチェックして、複数のリスク要因をまとめて改善するという発想です。
新しく加わった「大気汚染」
また、第2版では大気汚染など、健康に悪影響を及ぼす環境への接触を減らすことも新しく取り上げられました。
認知症予防というと運動や食事などの生活習慣を思い浮かべがちですが、WHOは認知症のリスクを考えるうえで、環境要因にも目を向けています。
WHO推奨=「効果が確実」ではない
ここまでを見ると、「運動しましょう」「健康的な食事をしましょう」「血圧や糖尿病を管理しましょう」という内容が中心で、個人がやるべきことそのものが、劇的に変わったわけではないことに気づきます。
実際、これらの多くは2019年版でもすでに推奨されていました。
今回の第2版で特に注目したのは、それぞれの対策について、エビデンスの確実性と推奨の強さが評価されていることです。
「研究で効果が示唆されている」ことと、「WHOが推奨している」ことは同じではありません。
そこで次に、WHOの第2版を単に「何が推奨されているか」だけで見るのではなく、その根拠となるエビデンスがどの程度確かなのかに注目して、認知症予防の対策を整理してみます。
認知症予防は「エビデンスの確実性」と「推奨の強さ」で見る
エビデンスの確実性とは
機能性表示食品・サプリメントのコマーシャルで「〇〇の効果が論文で報告されています」と言っているのをよく目にしますが、エビデンスが不確かなものが多いと言われています。
(関連記事:『【知らないと損】健康食品やサプリの広告に潜む4種類のトリックと賢い選び方』)
実際、ある研究論文で効果が確認されたからといって、それだけで「認知症予防に有効」と断定できるわけではありません。
「論文」と聞くと、科学的で権威があるもののように感じますが、次のように論文の質や信頼性に疑問があるものは多くあります。
- たった10人程度の少人数での実験結果
- 実験期間がわずか1週間という短期間の研究
- 都合の良い結果だけピックアップし、全体的な整合性のない研究――など
エビデンスの確実性はHigh~Very lowの4段階
そこでWHOのガイドラインでは、GRADE(グレード、ガイドライン作成のための国際標準の評価フレームワーク)という国際的に広く使われている方法などを用いて、エビデンスの確実性(certainty of evidence)を評価しています。
エビデンスの確実性は、基本的に次の4段階で示されます。
- High(高い)
- Moderate(中程度)
- Low(低い)
- Very low(非常に低い)
簡単に言うと、「その対策に効果があると、どの程度自信を持って言えるのか」を評価しています。
もう一つ重要なのが「推奨の強さ」
しかし、WHOの判断はエビデンスの確実性だけで決まるわけではありません。
実際にその対策を勧めるかどうかを決める際には、期待できる効果だけでなく、害や負担、費用、実行しやすさなども考慮されます。
そのため、WHOでは推奨の強さも、
- Strong(強い推奨)
- Conditional(条件付き推奨)
などに分けています。
例えば、エビデンスの確実性が「Moderate(中程度)」でも、利益が害を上回り、実行する価値が高いと判断されれば、強く推奨されることがあります。
また、研究結果がまだ十分ではなく、エビデンスの確実性が「Low」や「Very low」であっても、条件付きで推奨されることもあります。
「推奨が強い=エビデンスが強い」ではない
エビデンスの確実性 =「効果について、どの程度確信できるか」
推奨の強さ =「その対策を、どの程度勧めるべきか」
であり、
この2つは似ていますが、同じものではありません。
例えば、身体活動は、認知機能が正常な成人に対して「Strong(強い推奨)」、エビデンスの確実性は「Moderate(中程度)」です。
一方、高血圧の管理は、認知症リスク低減という観点では「Conditional(条件付き推奨)」、エビデンスの確実性は「Very low(非常に低い)」とされています。
これは「高血圧を放置してもよい」という意味ではありません。
高血圧は脳卒中や心血管疾患などの重要な危険因子であり、WHOは高血圧そのものの管理を強く推奨しています。
ただし、「高血圧を治療すると認知症そのものをどの程度減らせるか」という問いについては、現時点の直接的なエビデンスが十分ではないということです。
このように、「健康のために重要な対策」と「認知症予防効果を直接証明するエビデンス」は、必ずしも同じ強さではありません。
逆に「推奨は強くない」からといって、やる価値がないわけでもない
例えば難聴への対応は、エビデンスの確実性が「Low(低い)」で、WHOの推奨も「Conditional(条件付き)」です。
それでもWHOは、難聴がある人に補聴器を提供することを選択肢として推奨しています。
これは、難聴を放置することによる社会的孤立やコミュニケーションへの悪影響など、認知症以外にも大きなメリットがあるからです。
WHOも、補聴器は「認知症を予防するためだけ」ではなく、難聴そのものに対応する目的で使用すべきだとしています。
つまり、
「エビデンスが弱い=やる意味がない」
でも、
「WHOが推奨=効果が確実」
でもありません。
【一覧表】WHOの認知症予防策をエビデンスと推奨度で比較
WHO第2版で取り上げられている主な対策について、エビデンスの確実性とWHOの推奨の強さから、一般の人はどう受け止めればよいかを考えてみました。
これを見ると、認知症予防について「何でもやればいい」のではなく、どの対策を優先するべきなのかがより見えやすくなります。
ここでは、私たちが日常生活で取り組める主な対策を整理してみます。
WHOの「エビデンスの確実性」と「推奨」をそれぞれ、次のように2グループに分けました:
- 「エビデンスの確実性」→「高・中(High / Moderate)」と「低・極低(Low / Very Low)」
- 「推奨」→「強い推奨(Strong)」と「条件付き推奨(Conditional)」
そして、認知症予防策をこのグループ分けに基づいて仕分けたのが次の2 x 2の表です。
| 強い推奨(Strong) 「ぜひ行うべき」 | 条件付き推奨(Conditional) 「状況や人に応じて検討」 | |
| エビデンス確実性:高・中 (High / Moderate) | 【優先して取り組みたい】 エビデンスの確実性が比較的高く、WHOが強く推奨する対策 ・身体活動(運動) | 【積極的に取り入れる】 効果は期待できるが個別化が必要 ・健康的でバランスのよい食事 ・節酒・適量飲酒 ・多因子介入(複合対策) |
| エビデンス確実性:低・極低 (Low / Very Low) | 【健康全般で必須】 認知症への直接的根拠は低いが重要 ・禁煙 (※病気全体の予防効果から強い推奨) | 【選択肢として考慮】 個人差や他のメリットも含めて検討 ・高血圧・糖尿病 (※対象者は重要) ・脂質異常症の管理 (※対象者は取組む価値あり) ・難聴への対応(補聴器) ・認知トレーニング・認知刺激活動(読書やゲーム)・社会活動 ・大気汚染への暴露低減 |
認知症予防で優先したい7つの対策
WHOは、認知症予防策を「1位、2位、3位」という形で順位付けしているわけではありません。
そこで、WHOの評価に加えて、認知症以外の健康へのメリットや、日常生活で実践しやすいかどうかも考慮し、筆者なりに優先順位を整理してみます。
(※この順位はWHOが付けたランキングではありません。WHOの推奨度、エビデンスの確実性、認知症以外の健康効果、実践しやすさをもとに筆者が整理したものです。)
① 運動・身体活動を増やす
まず優先したいのが、身体活動を増やすことです。
WHOは身体活動について、エビデンスの確実性を「Moderate(中程度)」、推奨を「Strong(強い推奨)」としています。
認知症予防だけを目的にする必要はありません。
運動は、体力や筋力の維持、心血管疾患のリスク低減、体重管理など、さまざまな健康上のメリットが期待できます。
特別な運動をする必要もなく、ウォーキングや自転車など、自分が継続しやすい身体活動を生活の中に取り入れることが重要です。
特に自転車は、移動そのものを運動に変えられるため、運動のための時間を別に確保しにくい人にも取り入れやすい方法です。
またサドルに座ってペダルを漕ぐので、腰や膝に比較的易しいという点でも、高齢者が続けやすいというメリットがあります。
② 血圧・血糖・脂質を適切に管理する
次に重要なのが、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を適切に管理することです。
WHOの認知症予防に関するエビデンス評価では、高血圧や糖尿病などについて、必ずしもエビデンスの確実性が高いわけではありません。
しかし、高血圧や糖尿病、脂質異常症は、脳卒中や心血管疾患などの重要なリスク因子でもあります。
認知症予防だけを目的にするのではなく、脳と心臓、血管を含めた健康維持の一環として、適切な管理を続けることが重要です。
③ 喫煙しているなら禁煙する
喫煙している人にとっては、禁煙も優先度の高い対策です。
WHOは禁煙について、認知症リスク低減の観点からStrong(強い推奨)としています。
禁煙は認知症だけのために行うものではありません。
心血管疾患、脳卒中、呼吸器疾患、がんなど、多くの病気のリスク低減につながります。
④ 健康的でバランスのよい食事を続ける
健康的でバランスのよい食事も、認知症予防の基本的な対策の一つです。
WHOは健康的な食事について、一定のエビデンスに基づいて推奨しています。
ただし、「認知症予防にはこの食品を食べればよい」という単純な話ではありません。
特定の食品や成分だけに注目するのではなく、野菜、果物、魚、全粒穀物などを含むバランスのよい食事を心がけ、過剰なエネルギー摂取や塩分、糖分などを控えるという基本的な食生活を続けることが大切です。
そして、ここでも重要なのが、「健康的な食事」と「健康食品・サプリメント」は別物だということです。
食事を整えることが推奨されているからといって、「食事で摂るより、特定の成分をサプリメントで摂ったほうが効果的」ということにはなりません。
⑤ 飲酒量を見直す
飲酒については、飲酒量が多い人ほど見直す価値が高いでしょう。
WHOは有害な飲酒を減らすことを認知症リスク低減の対策として推奨しています。
特に、すでに飲酒量が多い人にとっては、単に「健康食品を追加する」よりも、飲酒量を減らすことのほうが合理的な選択と考えられます。
⑥ 社会とのつながりを維持する
社会活動や人との交流についても、WHOのガイドラインで取り上げられています。
ただし、ここはエビデンスの確実性が比較的低い項目です。
「人と交流すれば認知症を防げる」と断定することはできません。
それでも、外出したり、人と話したり、趣味を楽しんだりすることは、生活の質を維持するうえで重要です。
例えば、
- 趣味のサークルに参加する
- 友人と会う
- 家族と一緒に外出する
- 地域活動に参加する
- 自転車で出かける
など、無理なく続けられる活動を持つことは、認知症予防だけに限定しないメリットがあります。
⑦ 難聴を放置せず、必要なら補聴器を検討する
難聴がある人は、聴力をチェックし、必要に応じて補聴器などを検討することも選択肢になります。
WHOは補聴器について条件付きで推奨しています。
また、難聴を改善することで、人との会話や社会参加がしやすくなり、生活の質が改善するというメリットもあります。
「全部やらなければ」と考えなくてもいい
ここまで読むと、「運動もしなければいけない」「食事にも気をつけなければいけない」「血圧も管理しなければいけない」「社会活動もしなければ……」
と、やることが多すぎるように感じるかもしれません。
しかし、重要なのはすべてを完璧にこなすことではありません。
WHOが今回示している「多因子介入」の考え方も、自分に存在する複数のリスク要因を把握し、それぞれに応じた対策を組み合わせるというものです。
例えば、「運動習慣がない人なら、まず身体活動を増やす」「血圧が高い人なら、血圧管理を優先する」というように、「自分にとって改善余地の大きいところから、一つずつ取り組む」ほうが現実的です。
そして何より、認知症予防のためだけに生活を変える必要はありません。
運動も、健康的な食事も、血圧管理も、禁煙も、飲酒量の見直しも、社会参加も、認知症以外のさまざまな健康上のメリットにつながります。
認知症予防を特別な健康法と考えるのではなく、健康長寿のための生活習慣を整えることの延長として考える――これが、WHOのガイドラインを私たちの生活に取り入れる、一番無理のない方法ではないでしょうか。
DHA・ビタミンB・ビタミンE・オメガ3サプリメントが非推奨の理由
WHOは「ビタミンB・E、オメガ3、マルチビタミンなどのサプリメントは推奨しない」としています。
意外ではありませんか?
なぜWHOがこの判断をしたのか、そして私たちはサプリメントの広告をどう受け止めればよいのかを、もう少し詳しく見ていきましょう。
テレビCMやインターネット広告では、「脳の健康」「記憶力」「中高年の健康」などを連想させるサプリメントが数多く紹介されています。
「最近、顔は分かるけど名前が出てこない、そんなことありませんか?それにはこのサプリメント!」という不安を煽るようなコマーシャルをよく見かけますよね。
ところがWHOの第2版では、認知機能低下や認知症のリスク低減を目的として、DHAやビタミンをサプリメントで摂取することを推奨していません。
しかも、その評価は、
エビデンスの確実性:Moderate(中程度)
推奨:Strong recommendation against(強い非推奨)
です。
WHOが認知症予防目的のサプリメントを「推奨しない」理由
WHOが否定しているのは、あくまで「認知機能低下や認知症のリスク低減を目的としてサプリメントを摂ること」です。
例えば、ビタミン欠乏症が確認され、その治療のためにビタミンを補充することまで否定しているわけではありません。
つまり、「ビタミンやオメガ3は体に必要ない」という話ではなく、「不足していない人が、認知症予防を目的としてサプリメントを追加しても、WHOが推奨できるほどの確かな効果は確認されていない」
ということです。
「体に必要な成分」と「サプリメントで摂れば認知症を予防できる」は別
ここには、健康食品やサプリメントを見るときに知っておきたい重要なポイントがあります。
例えば、ある栄養素について、「脳の細胞の構成成分として必要」「抗酸化作用を持つ」「血管の機能に関係する」ということが細胞や生化学のレベルで確認されているとします。
これは、その栄養素が体内で重要な役割を果たしていることを示していて、ここまでは正しい。
しかし、そこから、
「その栄養素をサプリメントで多く摂れば、脳や血管がさらに健康になる」
とは必ずしも言えません。
なぜでしょうか?
サプリメントとして口から摂った成分は、成分によって異なりますが、代表的には図のような複雑な過程を経て、実際に体内で利用されます。

このように、口から摂った成分が、そのまま目的の組織に届くわけではありません。
「体に必要な成分である」ことと、「サプリメントとして追加すれば認知症を予防できる」ことの間には、いくつもの段階があります。
ですので、「オメガ3は健康に必要な栄養素」という科学的に本当である話と、「オメガ3のサプリメントを飲めば認知症を予防できる」という話は別々に考える必要があります。
WHOが今回評価しているのは後者、つまり認知症リスク低減という目的でサプリメントを摂ることに、どの程度の根拠があるのかという問題です。
サプリメントの宣伝で「ある栄養素が体内で重要な役割を果たしている」という本当の話を、「その栄養素をサプリメントで多く摂れば、健康になる」というエビデンスが確立されていない話しに、すり替えを行っているのをよく見ます。
さきほどのDHAサプリメントもその一例ですし、肌の潤いに良いとするコラーゲンのサプリメントのコマーシャルもそうです。
この話のすり替え以外にも、サプリメントの宣伝には消費者に「これは効きそうだ」と思わせる様々なトリックが使われています。
詳しくは『【知らないと損】健康食品やサプリの広告に潜む4種類のトリックと賢い選び方』の記事をご覧ください。
筆者はこれまでにも、健康食品やサプリメントについて、広告のイメージと科学的根拠を分けて考えることの重要性を紹介してきました。
今回のWHO第2版も、同じことを別の角度から示しているように思います。
認知症予防は「何を追加するか」より「何を改善するか」
今回、WHOの「認知機能低下および認知症のリスク低減:WHOガイドライン」第2版を見てきました。
今回の改訂で、認知症予防のために全く新しい健康法が登場したわけではありません。
今回、筆者が特に重要だと感じたのは、「何が推奨されているか」だけでなく、「その根拠となるエビデンスの確実性はどの程度なのか」「WHOはどの程度強く推奨しているのか」まで区別して見ることができる点です。
自分のリスク要因から優先順位を決める
認知症が心配になると、「脳に良い食品はないか?」「脳トレを始めたほうがいいのか?」「何かサプリメントを飲んだほうがいいのか?」と考えがちです。
しかし、今回のWHOガイドラインから見えてくるのは、むしろ逆の方向です。
認知症予防だけのために、特別なものを追加する必要はなく、まずは、自分の生活の中に改善できるリスク要因がないかを確認する。
そして、自分にとって改善余地の大きいところから取り組む。
これが、私たちにできる現実的な認知症リスク低減策ではないでしょうか。
サプリメント選びではエビデンスを確認する
そして、今回のガイドラインで特に印象的だったのが、ビタミンB・ビタミンE・オメガ3などのサプリメントについて、認知症予防を目的とした使用をWHOが推奨していないことです。
健康情報に接するときには、
「その効果について、どの程度確かなエビデンスがあるのか?」
を一度考えてみる。
これは認知症予防に限らず、健康食品やサプリメントを選ぶときにも役立つ考え方です。
エビデンスを調べるのに確実な方法は医薬基盤・健康・栄養研究所の『有効性データベース』を利用することです。

これは、国立研究開発法人が公開している公的なデータベースの一つで、だれでもアクセスできます。
詳しい使い方の説明は『【物価高の救世主】サプリの断捨離で健康と節約を両立する方法【チェックリスト付き】』の記事をご覧ください。
まとめ|認知症予防でまず始めたいこと
認知症を完全に防ぐ確実な方法は、現在のところ分かっていません。
だからこそ、「これをやれば認知症にならない」という方法を探すよりも、認知症以外の病気にもメリットが期待できる健康習慣を、できる範囲で続けることが合理的だと思います。
運動する、血圧などを管理する、禁煙する、食事を整える――サプリメントを追加する前に、まず生活を見直しましょう。
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本記事は、健康や運動に関する研究・公的資料などをもとに、一般的な情報を紹介することを目的としています。個々の健康状態や病気の治療について、医学的な診断や治療を行うものではありません。
持病がある方、治療中の方、運動中に痛みや体調の変化がある方は、運動の種類や強度について、主治医などの専門家に相談してください。運動を始める際は、無理のない範囲から徐々に強度を高めることをおすすめします。






























・認知症予防のために、特別なサプリメントを追加することより、まず自分の生活習慣や健康状態にある「改善できるリスク要因」を見つけることが重要です。
・WHOの2026年版ガイドラインでは、身体活動は強く推奨されています。
・一方、ビタミンB・E、オメガ3、マルチビタミンなどのサプリメントは、認知症予防目的では推奨されていません。