e-bike(電動アシスト自転車)の乗り心地や性能の改善をしたいと思いますか?
私はYAMAHA Wabash RTというe-bikeに乗っていますが、90%は舗装路を走っています。
そのため、タイヤをもっと細くてゴツゴツしていないタイヤに変えることにしました。
これで、もっとスピードを出しやすく、バッテリーを長く持たせられると期待してのことです。
その際、最近、よく聞くチューブレスタイヤにすることにしました。
正直、最初はチューブレスってよく分からず、不安もありましたが、でも実際に使ってみたら、e-bikeにも非常に相性が良いことが分かり、タイヤ交換をやって良かったと思います。
乗り心地の向上やパンクリスクの軽減だけでなく、バッテリー効率が良くなり、より長い距離をアシスト付きで走れる可能性があります。
つまり、e-bike(電動アシスト自転車)に乗る人、誰にもメリットがあります。
チューブレスタイヤのメリット・デメリットは電動アシストではない普通の自転車についてはよく語られますが、この記事ではe-bikeを中心に分かりやすく紹介します。
なお、次回の記事『WABASH RTのチューブレス化のやり方を写真で解説|初めてでもできる実践マニュアル』では、筆者が実際にチューブレス化を行った作業や、使ったアイテムとその価格、ちょっとしたポイントなどを詳しくご紹介します。
目 次
「チューブレス化」って何?
まず、「チューブレス化」の基本を紹介したいと思います。
チューブレスではない従来のタイヤの構造
従来のタイヤは、次の図のように、内部に「チューブ(空気の入ったゴム管)」が入っているのが一般的です。

チューブレスタイヤの構造
一方、チューブレスタイヤはその名の通り、チューブがレス(無い)で、タイヤとリムの密着によって空気を保持します。
なお、リムとは、上図のように、タイヤが取り付けられる車輪の周りのことです。
チューブレスタイヤには2種類あります:
1) チューブレス専用
2) チューブレス・レディというものがあります。
チューブレス専用タイヤは、下図のように空気漏れを防ぐために気密性が高く、基本的にそのままチューブレス運用が可能です。

一方、チューブレス・レディ(TLR)は軽量化を重視しており、リムテープやシーラント剤を使って初めてチューブレスとして使える設計になっています(次の図)。

チューブレス化というのは、チューブが中に入っている構造のタイヤを、チューブ不要のタイヤに代えることです。
初心者向け|チューブレスのメリットとは
チューブがタイヤの中に入っていないので、つぎのような長所があります。
✅ パンクに強い
- 「リム打ちパンク」が起きにくい(段差でチューブが挟まれる事故がない)
- シーラント(パンク防止液)で1~3mmの小さな穴は自動で塞がる
✅ ロングライドでも安心
- パンク修理の頻度と手間が大幅に減少
- 特にグラベルや未舗装路では、鋭利な枝や石からのパンクを防ぎやすい
✅ 乗り心地が良く、走行性能もアップ
- 低圧での走行が可能になり、段差でも跳ねにくくなる
- チューブがないため変形による抵抗が減り、転がり抵抗が軽減される
データが示す転がり抵抗の低さ
信頼性の高いサイト「BicycleRollingResistance.com」の調査によると、チューブレスは多くのケースでチューブがある一般的なタイヤより転がり抵抗が小さいことが証明されています。
以下に、代表的なタイヤの転がり抵抗を比較した表を示します(数値は参考値であり、実際の値はタイヤモデルや条件によって異なります)。
タイヤタイプ | 転がり抵抗(ワット) | 備考 |
---|---|---|
チューブレス | 10.0 W | シーラント使用時 |
チューブ有(ラテックスチューブ) | 11.5 W | 軽量チューブ使用 |
チューブ有(ブチルチューブ) | 12.0 W | 標準的なチューブ |
このように、チューブレスタイヤの転がり抵抗が低い理由は、内側にチューブが無いために、「変形して元に戻る際のエネルギー損失が少ない」ためです。
なぜ最近、チューブレスタイヤに注目が集まっている?
かつては、チューブレスタイヤを使うには「専用のホイール」が必要で、しかも価格が高く、選べる製品も少ないという課題がありました。
そのため、一般のサイクリストにはあまり浸透しておらず、自転車競技者などの限られた人が使っていた印象です。
しかし近年、一般にも普及し始めたのには次の理由があります。
- チューブレスレディ(TLR)ホイールの一般化
現在、多くの完成車やホイールメーカーが「チューブレスレディ(TLR)」仕様を標準装備するようになっています。
TLRとは、チューブを入れて使用することができるし、シーラントを使えばチューブレスとしても使えるという両刀使いの設計のことです。
- タイヤ側のラインアップが大幅に拡充
従来は高価なレーシングタイヤが中心でしたが、今では通勤・通学用、ツーリング用、グラベル用など、さまざまなニーズに対応したチューブレスタイヤが販売されています。
価格帯も広がり、手が届きやすくなりました。
- 取り付け・メンテナンス性の向上
以前は「取り付けが大変」「ビードが上がらない」といった声も多くあり、初心者がとっつきにくい理由の一つでした。
なお、「ビード」というのは、タイヤのふちの部分のことです。
「ビードが上がる」というのは、タイヤのビード部分がホイールの溝から外に「パチン!」とはまり、ピッタリ密着して空気が漏れなくなることですが、これがなかなかうまくできないことがありました。
最近はリムとタイヤの規格の統一が進み、取り付けのしやすさが改善されました。
また、専用のフロアポンプやシーラント(タイヤの中に入れる液体のパンク防止剤)も充実し、初心者でも導入しやすくなっています
これらのことから、「興味はあるけど、なんか難しそう」と感じていた人たちの心理的ハードルが下がった(かく言う私もその一人です!)ため、チューブレスタイヤが身近な選択肢になってきました。
必要なのは「チューブレス対応リム」と「チューブレス対応タイヤ」
チューブを使わずに空気を閉じ込めるには、リムとタイヤの「密閉性(エアシール性)」がとても大事になります。
なので、どんなパーツでもいいというわけではありません。
「チューブレス対応リム」と「チューブレス対応タイヤ」が必要になります。
「チューブレス専用リム」と「チューブレス専用タイヤ」の組み合わせでのチューブレス化もありますが、ロードレースやグラベルレースの選手が使うことが多く、価格が高く、選択肢がやや限られることもあり、一般のサイクリスト向けのこの記事では割愛しています。
必要なリム
つぎの「リムの違い」の表にあるように、チューブレス対応リム(TUBELESS READY)が必要です。
【リムの違い:チューブ有り専用 vs チューブレス対応】
特徴 | チューブ有り専用リム | チューブレス対応リム(TUBELESS READY) |
---|---|---|
ビードの形状 | 空気の密閉を意識していない | タイヤとリムの接合部(ビード)がしっかり密着する構造 |
リムベッド(中央のくぼみ) | 深くなく簡素 | タイヤをはめやすく、空気が漏れにくいよう設計されている |
バルブ穴 | チューブバルブ用(空気密閉不要) | チューブレスバルブ対応で、リムテープを貼って密閉する |
気密性 | チューブがないと空気が漏れる | チューブなしでも密閉できる構造 |
チューブレス化の可否 | 基本不可 | 可(専用のリムテープやバルブで施工) |
最近のスポーツバイクでは、最初から対応しているモデルも増えており、私が乗っているYAMAHA Wabash RTのホイールも「チューブレス対応リム」です。
必要なタイヤ
初心者のチューブレス化にはチューブレス対応タイヤ「TLC/TUBELESS READY」がお勧めです。
このタイヤには次の特徴があります:
- 通常は「チューブ有り」でも使えるが、「チューブレス化」にも対応している
- リムとの密着性を高める特殊ビード構造がある
- チューブを入れて使うことも、シーラントを使ってチューブレス運用も可能
- もっとも使い勝手が良いタイプ
タイヤの側面に表示もされています。
次の写真はYAMAHA Wabash RTの標準タイヤである「MAXXIS RAMBLER 700 × 45C」ですが、側面にTR(Tubeless Ready)という表示があります。

e-bikeでもチューブレスはおすすめ!
チューブレス化というとロードバイクやマウンテンバイクが対象というイメージがあります。
けれども、e-bike(電動アシスト自転車)でも次のようなチューブレスの利点があります:
◎ バッテリー効率の向上
「e-bikeの場合、チューブレス化で転がり抵抗が減ると言っても、それはアシストが無い普通の自転車にとっての恩恵で、e-bikeならモーターがアシストしてくれるから、そんなにメリットないんじゃないかな?」と思うかもしれません。
確かに、アシストによる脚の負荷の軽減効果はチューブレス化よりも大きく上回ると思います。
けれども、転がり抵抗が減ると、同じバッテリー容量でもより長い距離を走れるようになります。
◎ 乗り心地の向上
チューブレス特有のしなやかな走りは、重量のあるe-bikeでも快適性アップにつながります。
◎ パンクへの強さ
ドライブユニットやバッテリーを搭載しているので、e-bikeは重く、パンクすると厄介です。
(参考記事:『【初心者向け】BESV JR1 後輪タイヤ交換に挑戦!写真付きで解説』)
そのリスクを軽減できるのは大きな安心材料です。
◎ 低圧でも安定
e-bikeは車重があるため、太めのタイヤ+低圧走行が主流です。
チューブレスはそのスタイルと相性が抜群です。
チューブレスのデメリットは?
チューブレス化には以下のようにデメリットもありますが、これらの問題の解消がされつつあります。
- ビードが上がりにくい
チューブレスの悩みというと、ビードが上がりにくいというのが有名です。
ただし、最近は装着とビード上げの容易さに配慮して設計されたタイヤも普及しています。
例えば、パナレーサーの商品説明には「【簡単チューブレスセッティング】フロアポンプでも簡単にビードがあげられるよう、ビードや構造を徹底的に再設計。フックレスを含む様々なリムに対応。」と明記されています。 - セッティングが手間
シーラント注入やエア調整など初心者にはやや難しい。
けれども、慣れてくれば、ほぼ解消できます。 - 初期費用がかかる
専用バルブやリムテープ、シーラントなどを用意する必要があります。 - 大きな裂けのパンクに対する応急修理の難しさ
ロングライド中のパンクが小さい穴なら、『IRC(アイアールシー) チューブレスタイヤ用修理剤』のような修理材で簡単に応急処置ができます。
けれども、大きめの裂けやサイドカットで完全に空気が抜ける場合に備えようとすると、修理材だけでは復帰が難しく、チューブや専用のCO2ボンベなどを持ち運ぶ必要があります。
チューブレス化、初心者のための導入ステップ(簡易版)
「チューブレスに興味はあるけれど、難しそうで不安…」という方も多いと思います。
実際の作業は少し手間がかかりますが、基本の流れを知っておけば、意外とハードルは高くありません。
以下が手順の概要です(詳しい手順は次の記事で紹介します)。
- チューブレス対応のリムとタイヤを確認
→ リムとタイヤの両方が「TUBELESS READY」になっているか確認しましょう。 - チューブを外す
→ 現在のタイヤからチューブを取り外します。 - リムテープを貼る
→ リムのバルブ穴をふさぐ専用のテープをしっかり貼ります。 - チューブレスバルブを取り付ける
→ エアを入れるための専用バルブを装着します。 - シーラント(パンク防止液)を注入
→ 規定量をタイヤの内部に流し込みます。 - エアを注入してビードを上げる
→ 最初は空気圧が高めのほうがタイヤとリムが密着しやすく、ビードも上がりやすくなります。 - しばらく転がして密閉確認
→ タイヤを回したり、寝かせたりしてシーラントが全体に行き渡るようにします。
最初は難しく感じるかもしれませんが、一度やってみれば流れがつかめます。
まとめ:e-bikeにもチューブレスは“アリ”!
チューブレスタイヤは、e-bikeにとって非常に魅力的な選択肢です。
パンクのリスク軽減や乗り心地の向上に加え、転がり抵抗の低減によるバッテリー効率の向上のメリットもあるからです。
確かに導入には少し手間がかかりますが、一度仕組みを理解すれば、誰でも始められるものです。
次回の記事『WABASH RTのチューブレス化のやり方を写真で解説|初めてでもできる実践マニュアル』では、筆者が実際にチューブレス化を行った作業や、使ったアイテム、チューブレス化した感想などを紹介します。
これからe-bikeでのライドをさらに快適にしたい方の参考になれば幸いです。