自転車で歩道を走ると反則金6000円? 青切符報道の誤解と正しい交通ルール

自転車に青切符導入で、歩道を走ったら反則金…って本当?

最近、ネットニュースやSNSで「自転車にもついに青切符が導入される」「自転車が歩道を走ると6000円の反則金!?」といった見出しを目にする機会が増えました。

「子供やお年寄りは危なくて車道は走れないのに、何考えてるの?」

そんな不安や怒りの声も多く聞かれます。

が、実はこれらは少し早とちりかもしれません。

確かに青切符制度は2026年4月1日から導入予定ですが、「歩道を走ったら即違反」というのは、正しくありません。

非常に多くのメディアが大げさ・過激な表現で報じているせいで、必要以上に不安や不満が広がっているように感じます。

本記事では、そうした誤解を解き、制度の本質と本当に気をつけるべきポイントを、法律のルールに基づいてわかりやすく解説していきます。

「歩道を走ったら即違反」は誤解|正しいルールを3分で理解

最近、「自転車が歩道を走ると青切符で6000円の反則金」という見出しが目立ち、「もう歩道は走れないのか?」と不安になる人も多いようです。

しかし、これは正確とは言えません。

まずは、自転車と歩道に関する正しいルールを、法律の条文に基づいて整理しておきましょう。

原則:自転車は車道を走る

道路交通法では、自転車は「軽車両」とされており、基本的には車道の左端を通行するのが原則です。

歩道は歩行者のための空間であり、自転車が自由に走ることはできません。

しかし、『例外』も明確に認められている

次のようなケースでは、法律で「自転車での歩道の通行」が正式に認められています。

①「自転車通行可」の標識がある歩道

歩道に青い「自転車及び歩行者専用」の標識(次の写真)が設置されている場合、年齢や条件に関係なく誰でも合法的に自転車で歩道を走ることができます。

「自転車及び歩行者専用」の標識の例

「自転車通行可」の指定がされている歩道は意外に多いですよ

普段あまり意識していない人が多いかもしれませんが、標識をよく見ると「実は自転車も通行可」という歩道も少なくありません。

国土交通省の資料によると、自動車交通量が多く速度が速い幹線的な道路で、歩道の幅員が2.0m以上ある場合には、安全性を考慮して歩道上での自転車通行空間整備を例外的に認めていることが明記されています。
これは、幹線道路での車道走行が危険と思われる場合に歩道通行を認めるためです。
また、道路構造令や道路交通法に基づき、「自転車通行可」の歩道指定は以下の条件でなされます。
• 歩行者の通行に支障がないこと
• 縦断勾配がおおむね10%未満で自転車通行に危険がないこと
• 原則として歩道幅員が2メートル以上(特に橋梁やトンネルなどでは1.5メートル以上)あること

上記の基準により、歩道幅が十分に確保されている市街地の幹線道路沿いでは、自転車通行可の歩道指定が多くなっています。

例えば、大阪府茨木市の資料では、国道・府道などの市街地幹線道路の歩道の「大部分」が自転車通行可に指定されていることが明記されています。

 

ママチャリやクロスバイク、ロードバイク、折り畳み自転車などの殆どは普通の自転車なので問題ありませんが、「普通でない自転車」も存在します。

「普通でない自転車」というのは、簡単に言うと長さが190cmを超えるか、幅が60cmを超える自転車です。
全てのモデルがそうだという訳ではありませんが、典型的なのはビーチクルーザーで、よく海辺でサーフボードを積んで走っているのを見かける自転車です。
これは、長さが190cmを超えるものがあります。

ビーチクルーザーの例

また、幅が60cmを超えるものが多い自転車には、ハンドル幅が広いマウンテンバイクがあります。

マウンテンバイクの例

あと、カーゴバイクやタンデム自転車も普通でないことが少なくないですが、このようなサイズの自転車は、たとえ「自転車通行可」の標識がある歩道であっても走行できません。
詳しくは『これはダメ? あれはOK? 知ってスッキリ、自転車の歩道通行に関するルール』の記事をご覧ください。

また、電動アシスト自転車はどうなのと思う方もおられるかもしれません。
電動アシスト自転車も同様に、上記の普通でないサイズの場合は、「自転車通行可」の標識がある歩道であっても走行できません。
逆に言うと、普通自転車のサイズ内の電動アシスト自転車であれば走行できます。

自分の自転車が「普通自転車」かどうか気になる方は、自転車のサイズを測ってみましょう。
幅が60cm以内で、長さも190cm以内であれば「普通自転車」です。

 

② 13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体に障害がある人

これらの方は、標識の有無に関係なく歩道通行が可能です。
つまり、歩行者専用とされている歩道でも合法的に走れます。

子ども、高齢者、身体に障害がある方についての歩道走行の例外

13歳未満の子どもが自転車で歩道を走ることは認められていますが、幼児を後ろに乗せたお母さん(大人)が自転車で歩道を通行することは原則としてできません。
13歳以上の人が自転車で歩道を通行できるのは、「自転車通行可」の標識がある歩道の場合のみです(くどいですが、上記のように70歳以上であれば、歩行者専用の歩道でも走れます。)。
ただし、車道の通行が非常に危険な場合(車道の交通量が非常に多い、路駐の車が車道をふさいでいてすり抜けるのが危険、道路工事中などやむを得ない場合など)は例外的に歩道通行が認められます。

 

③ 道路の構造や交通状況により車道の通行が危険な場合

たとえば、車道が狭く交通量が非常に多い、あるいは路上駐車の車が多いなどが原因で、客観的に見て自動車等との接触などの危険がある場所では、法律上の“やむを得ない場合”として歩道の通行が認められています。

道路や交通の状況が自転車走行にとって危険な場合、歩道走行も可

「誤解を招くニュース」の実例と分析

記事タイトルやイントロ部分が「歩道走行=即違反」「青切符=歩道NG」などと誤った印象を与えやすい記事を本当に多く見かけます。

いくつか例を挙げ、何が問題なのかを解説します。

  • TBS NEWS DIG『【自転車の反則金】ながらスマホ12000円は「もっと金とれ」の声 歩道通行6000円は「これで違反金、戸惑いを世の中に与える」交通違反の新ルール”課題だらけ”の面も』

📎https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1988753

✅ 本文では例外規定にも触れており、報道全体としては一定のバランスあり。

❌ 見出しと冒頭が「歩道=即違反」と受け取れる構成で、不安を煽る印象。


  • PRESIDENT Online『歩道を走る自転車は全員「反則金6000円」?…日本の危険な道路で始まる「青切符取り締まり」への最大の懸念

📎 https://president.jp/articles/-/95156?page=1
(※AERA DIGITALにも掲載:https://dot.asahi.com/articles/-/256001?page=1

✅ 日本の道路環境や制度導入の背景を詳しく解説。後半で例外規定も紹介。

❌ 見出しの「全員反則金?」が極端で、例外の存在が見落とされやすい。


  • 弁護士JPニュース『改正道交法「歩道走行アウト!」に自転車ユーザー困惑…「青切符・反則金」判断の意外な“ボーダーライン”とは』(Yahoo!ニュース配信)

📎 https://news.yahoo.co.jp/articles/135d8a15ce8cbf02028af7420f873d0823094a81

✅ 青切符の対象や判断基準、ルール周知の重要性について適切に解説。

❌ 「歩道走行アウト!」という表現が、全面禁止と思わせる過剰な印象を与える。


  • 週刊女性PRIME『「子どもも車道?路駐なんとかしろ」自転車の交通違反に青切符《歩道通行6000円》募る批判?』(Yahoo!ニュース配信)

📎 https://news.yahoo.co.jp/articles/86ed4bae5fd2715dd2158e3aeadee3264911efdb

✅ 子どもや高齢者などの交通弱者への影響、現状の課題に焦点を当てている。

❌ 「子どもも車道?」という見出しが、13歳未満の歩道通行可能ルールを覆すように誤解させる。


  • テレビ朝日『「歩道通行禁止」はおかしい? 自転車反則金額が決定、来春スタート

📎 https://www.asahi.com/articles/AST6J3TRQT6JUTIL00QM.html

✅ 制度の内容や金額を具体的に紹介し、制度の概要がわかりやすい。

❌ 冒頭から「歩道通行≒禁止」の文脈で語られ、例外規定が軽く扱われている。


⚠️ 多く見受けられる問題点のまとめ

項目問題点
見出し煽り・不安を煽る表現が先行し、“歩道走行=違反”という印象を植え付けやすい
冒頭読者に強い印象付けがあり、その後の補足や真相には目が届きにくい
構成例外規定は後半に小さく書かれるか、写真や図表の説明文扱いで軽視されがち
読者印象多くの人はタイトルと冒頭で記事の読書を終了する → 誤解が拡散しやすい構造

最近は、老舗の大手メディアも記事の見出しで不安や怒りを煽る表現を用い、多くの人はタイトルとイントロだけ読んで全文を読まない結果、誤解が拡散しやすくなっていると感じます。

私のような高齢者は、以前の大手メディアの見出しは簡潔・事実重視で、本文には丁寧に背景や例外も説明されていたのになぁと思う人が多いのではないでしょうか。

今のようになったのは、新聞離れで紙媒体の売上が落ち込む中、SNSによる情報発信が急速に台頭し、広告モデルの変化(クリック数や表示回数などに基づいて広告収入が決まるようになった)が起こったことが大きい要因だと思います。

多くの読者はニュースをニュース配信サイトやSNS経由で知るようになっており、「目を引くタイトル」や「強いワード」がないとクリックされずに埋もれてしまいます。

ですので、大手メディアもオンライン記事での広告収入確保のため、バズりや共有を狙って誇張・煽り気味の見出しをつけることが一般化してきたようになったと思います。

もちろん、これには悪影響があり、大手メディアであっても、信頼性が低い、場合によっては、敢えて「炎上しやすい見出し」や「誤解されやすい構成」に意図的に寄せる報道を拡散してしまっています。

本来の目的は「取り締まり」ではない|青切符制度の背景と狙い

上記のように「自転車に青切符導入」という報道が注目を集めていますが、この制度は「歩道走行を一律に取り締まる」ためのものではありません。

ここではあらためて、青切符制度の導入目的と背景をかいつまんで紹介し、何が本当に問われているのかを確認しておきましょう。

詳しく知りたい方は『【早わかり】自転車反則金制度(青切符):いつから、対象年齢、罰金額、取り締り方法等』の記事もご覧ください。

■ 青切符とは?

「青切符」とは、道路交通法違反に対して科される反則金制度で、警察官がその場で交付し、裁判を経ずに反則金を支払うことで処理できる仕組みです。

これまでは、自転車が違反をしても「注意」や「警告」にとどまり、明確な処分が難しいという実情がありました。これを改め、悪質・危険な行為に対しては罰則を明確にすることを目的としています。

■ なぜ導入されるのか?

背景には、以下のような現実があります。

  • 自転車事故の増加:特に高齢者との接触事故が深刻
  • マナーの低下:逆走、信号無視、ながらスマホなどが常態化
  • 他の軽車両と比べて不公平:自転車は“軽車両”であるにも関わらず、反則金制度の対象外だった

このため、2026年度から青切符制度が導入されることで、自転車にも一定の交通規律を求めることになります。

■ 対象となる違反行為は?

「青切符」の対象となるのは100余りの違反で、このうち重点的に取り締まるのは事故につながるおそれのある重大な違反行為としています。

次のは、主な違反行為と反則金額の例です。

違反内容反則金(円)補足説明
ながら運転(携帯電話使用など)12,000操作中や通話中の運転も含む
踏切への立ち入り(遮断機が下りている場合)7,000非常に危険な違反
信号無視6,000赤信号での進行など
通行区分違反(逆走・歩道通行など)6,000一方通行の逆走など
一時不停止5,000一時停止標識を無視
制動装置不良(ブレーキ不備など)5,000整備不良のまま運転
順守事項違反(傘差し運転・イヤホン使用など)5,000各都道府県の規則に基づく違反
無灯火5,000夜間の無灯火走行
並進禁止違反(並んで走行)3,000横に並んでの走行
2人乗り3,000一人乗りが基本

ただし、「歩道走行」は標識や例外規定に反した場合に限るので、前に説明したとおり、すべての歩道走行が違反になるわけではありません。

■ 正しく使われれば、安心にもつながる制度

反則金の導入は「取り締まりを増やす」ためだけではありません。

  • 無法状態を改善し、歩行者や他の車両との共存を図る
  • 違反を繰り返す一部の利用者を抑止する
  • ルールの明確化により、ルールを守っている人が安心して走れる環境を整える

といった面があります。

■ すべての自転車利用者が罰せられるわけではない

繰り返しになりますが、青切符制度は歩道通行すべてを罰するためのものではありません
むしろ、きちんとルールを守っている利用者にとっては、「危険運転をする人が減る」ことで、より安全で気持ちの良い自転車利用環境が期待できる制度です。

必要なのは冷静な理解|安心して自転車に乗るために

青切符制度の導入をめぐって、「歩道はもう走れないのか?」「自転車ばかり厳しくするのはおかしい」「子供やお年寄りのことも考えて」といった声が各所で上がっています。

しかし、その多くは不正確な情報やセンセーショナルな見出しに触発された、誤解に基づく過剰反応です。

本当に必要なのは、不安や不満を煽ることではなく、冷静な理解と正しいルールの共有です。

知らないことで「損をする」利用者が増えてしまう

自転車を正しく利用している人でも、ネット記事を読んで「歩道はもう走ってはいけないんだ」と勘違いし、必要な場面でも無理に車道を走ってしまうケースも出かねません。

例えば:
・ 70歳の高齢者が歩道を使わず危険な車道を走る
・ 車道に自転車レーンがない幹線道路で、無理に車道通行して事故に巻き込まれる

こうした事態を防ぐためにも、「歩道通行が認められる正当な条件がある」ことを、もっと多くの人に知ってもらう必要があります。

 ルールを守る人が損をしない社会に

ルールを守って安全運転をしている人が、「制度が厳しくなったから…」と自転車利用自体をやめてしまうのは、本末転倒です。

本来の目的は、危険な走行を減らし、すべての道路利用者が気持ちよく共存できる社会をつくることにあります。

報道やSNSに流されない“読み解く力”を

今回取り上げたように、報道記事の見出しや構成はしばしば不安を煽る形で作られています。

情報をうのみにせず、

  • 見出しだけを頼りにしない:内部の本文が後回しにされていることが多いほど要注意
  • 例外規定の扱われ方をチェック:条文や制度の説明があるか、前倒しで読者に伝えているかが重要
  • 確度の高い情報とのバランスを確認:具体例や数字、根拠が提示されていない“抽象的な警告”は、煽り目的の可能性が高い

おわりに

自転車の青切符制度に関する報道が過熱する中、「もう歩道は走れないのか」「反則金ばかりで怖い」といった声が飛び交っています。

しかし、実際の法制度を丁寧に見てみると、一律に取り締まるものではなく、例外規定も明確に存在することがわかります。

制度の目的は、決してすべての自転車利用者を締め付けることではありません。
むしろ、悪質で危険な行為を減らし、誰もが安心して使える道路環境をつくることにあります。

センセーショナルな見出しに踊らされることなく、正しいルールと冷静な視点を持つことですね。

そして、必要に応じて身近な人にも誤解のない情報を伝えることが私たちにできることだと思います。

これからも安心・安全な自転車ライフを送るために、「正しく知って、正しく走る」ことを大切にしたいですね。

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