石磨きって、「ひたすら磨けばピカピカになる」とはいかず、磨く前の準備や適切な手順がとても大切ですね。
この記事では、電動ルーター(電動リューターとも呼ばれます)を使って原石を美しく磨き上げるための手順を初心者の方向けに詳しく紹介します。
以前、次の記事を書きましたが、より詳しく説明したいと思います。
使う石は、DAISOで売られているフローライトでたったの330円!
大きい石がゴロゴロ入っており、コスパは最高です!

目 次
💎 ダイソーのフローライト

ダイソーで購入した「ストーンディフューザー(グリーン・フローライト)」には、3〜4cmサイズのフローライトが8個入っていました。
価格は330円と手頃で、ガラス容器付きです。
これで、この値段は驚異的です。

アロマオイルを数滴垂らして香りを楽しめます。

ブラックライトを当ててみたら、青く光ったので、本物のようです。

比較的柔らかく(モース硬度4)、初心者の研磨練習に最適です。
万が一失敗しても、コストが低いので気軽に試せます。
✅ 必要な工具と材料
電動ルーター(電動リューター)

クォーツ(石英、水晶はクォーツのうち、透明で大きな結晶になっているもの)やアゲート(瑪瑙:めのう)などの硬い石を研磨する場合は、100W以上のモーターパワーがあるルーターがおすすめ。
回転数の調整も重要で、粗削りには5,000~8,000回転/分、仕上げには25,000~35,000回転/分が適しています(ただし、フローライトのような柔らかい石では、仕上げ研磨の回転数は15,000回転/分以下の方が安全で、高すぎると熱で割れやすい)。
5,000~35,000回転の可変型ルーターなら幅広く対応できます。
私が使っているのは次のドレメルの電動ルーターですが、これらの条件を満たしています。
このルーターは135Wのモーターを搭載しており、ホビー用のルーターとしてはかなり強力なモーターで、硬い石を削るのにも力負けしません。
また、この電動ルーターの回転数は5,000~32,000回転/分と可変なところも石磨きに向いています。
このような性能を持つ電動ルーターは他にはあまり見当たらないと思います。
ダイヤモンドビット(粗いものから細かいものまで)
円盤状と円柱状のビットを使います。
まずは円盤状のビットをですが、私はこちらのダイヤモンドカッターを使っています。
カッターφ20mm(粒度#180) × 2、カッターφ26mm(粒度#180) × 2、シャープナーφ16mm(粒度#180) × 1 の5本が入っています。
「高儀」というのは新潟県三条市の工具メーカーで、日曜大工や軽作業を行うユーザーにとって、手頃な価格で使いやすい製品として高い評価を受けています。
次の円柱状のビットも電動ルーターの先端に取り付けて使用します。
12本のダイヤモンドビットが入っており、石の小さな凹みや尖っている部分を削りとるのに向いています。
円盤型の研磨パッド(ルーター取り付け用)
電動ルーターの先にマジックテープ付きのパッド(バッキングパッド)を取り付け、それにサンドペーパーを貼り付けて研磨するものです。
私の使っている研磨パッドは次の商品で、60番から10000番まで、各種入っています。
また、この商品には、バッキングパッド自体も含まれています。
この研磨パッドひとまとめにしておくと、沢山の中から必要な番手のものを探すのに時間がとられてしまいます。
そこで、私は次の領収書整理用バインダーを使って整理しています。
このバインダーのポケットに次のように、目が粗いものから順番に入れておくと、簡単に必要な番手の紙やすりが見つかり、ストレスフリーです。

ポリッシャーバフ
研磨の最終仕上げ段階で、バフに研磨剤やポリッシュ剤を付けて、高い光沢とツヤを出します。
私が使っているのは、次のスリーエムのウール製のもので、アマゾンで564円でした。
このバフは汚れたら洗濯して、繰り返し使うことができます。
研磨剤(酸化セリウムやダイヤモンドペースト)
鏡面仕上げ用の研磨剤は色々とありますが、用途によって使い分ける必要があります。
例えば、フローライトのような柔らかい石には酸化セリウムが向いています。
私が使っている酸化セリウムはこちらです。
ただし、水晶のような硬い石には、ダイヤモンドペーストの方が早く滑らかな仕上がりを得られます。
次の商品のような粒度が1μm前後のダイヤモンドペーストが良いでしょう。
石工用鉛筆(ダーマトグラフ)
削るべきところに印を石の表面に付けるのに便利です。
私は桃色が目立つので使いやすいと思います。
三菱ダーマトグラフ などのワックス系(油性)の鉛筆は、石の表面にもしっかり書け、細かい線を引くのに向いています。
次の商品はアマゾンでは250円で売られていますが、文具スーパー事務キチでは105円でした。
水入れ
石を水にときどき浸して研磨する湿式研磨をする場合、石を浸すための小皿や小鉢のようなものを用意します。

ゴーグル
切削や研磨の最中に石の破片や粉が目に入ると危険ですので、ゴーグルは必須ですね。
次のような基準で選ぶと良いと思います:
- 密着性: 顔との隙間が少なく、粉じんが入りにくいものを選びましょう。
- 耐衝撃性: 飛来物から目を守るため、耐衝撃性の高いものが適しています。
「ANSI Z87.1」または「EN166」などの安全規格に適合したものが◎。 - くもり止め機能: 長時間の作業でも視界が確保できるよう、くもり止め機能付きのものがおすすめです。
- メガネとの併用可能なデザイン(必要な場合)
普段メガネをかけている場合、オーバーグラス対応のゴーグルを選びましょう。
私が使っているのは次の『ミドリ安全』のくもり止め機能が付いた保護めがねで、ANSI Z87.1規格に適合していて、メガネの上にもかけられます。
防塵マスク
電動ルーターで石を磨くとシリカ(石英)、鉱物粒子、金属酸化物などの粉塵が大量に発生します。
吸入すると肺に蓄積し、珪肺症(けいはいしょう)や呼吸器疾患の原因になります。
コロナ対策用マスク(不織布マスクや布マスク)は、フィルター性能が低く、微小粒子を十分に捕集できず、顔への密着性も不十分で、粉じんが侵入しやすいため作業安全には不適切です。
推奨される石磨き作業用防じんマスクは、国家検定合格品でDS2規格(N95相当)以上の性能を持つものです。
DS2規格では0.3μmの粒子を95%以上捕集(N95マスクと同等)し、顔に密着する設計で、空気の漏れを最小限に抑えることができます。
私が使っているのは次のマスクで、アマゾンで購入したときは、10枚入で1,586円でした。
ちょっと高いと思いましたが、石の粉塵を吸い込むと危険なので奮発しました。
顔にフィットしやすく思ったよりも息苦しさなく使いやすいです。
話しが脱線しますが、花粉症でお悩みの方にDS2規格の防塵マスクは非常に効果的です。
微細な粉塵、微粒子、アスベスト、金属粉、シリカの微細な粉塵や微粒子など、花粉よりもはるかに小さい粒子もブロック可能であり、顔に密着する設計であるため、花粉は余裕でブロックします。
デザインが工業用なので、日常使用には見た目が気になるかもしれませんが...
耐切創性手袋
電動ルーターの先に取り付けた高速回転する刃物(ビット)でうっかり指などを切る恐れがあります。
私は次の耐切創性手袋(刃物や鋭利な物体によって切断されにくい性質のこと)のある作業手袋を使っています。
これは耐切創性に加えて耐摩耗性、耐引裂性、耐突刺性などを評価するEN 388 (欧州規格)の認証を取得しています。
ゴワゴワせず、柔らかい装着感なのでフィット感が良いです。
コンパクト防塵ボックス
室内で研磨作業する場合、石の粉塵が部屋に広がると掃除が大変です。
石を研磨すると、次の防塵ボックスの写真でも分かるように、多くの細かい石の粒子がボックスの内側に付着します。

長時間吸い込むと健康被害(呼吸器系への影響)もあるため、特に室内では防塵ボックスを使って粉塵対策することが重要です。
さらに、研磨時に水を使う場合(湿式研磨)、水はねでも周囲が濡れてしまいます。
私が使っている防塵ボックスはこちらで、アマゾンで2,000円でした。
コンパクト防塵ボックスの左右の側面に、手を入れるための穴が空いていますが、ここからも切削粉が多少漏れ出ます。
それを軽減するため、次のゴムの排水溝カバー(流し菊割れフタ)を左右の穴にはめ込み、接着剤で固定しました。
このゴムの排水溝カバーがこのコンパクト防塵ボックスの穴に偶然ぴったりで、いわゆるシンデレラフィットです。

これは効果があり、お勧めです。
🧤 安全対策(これは大事です)
- ゴーグルと防塵マスクを着用:石の粉塵や破片が飛ぶ可能性があるため、目や呼吸器を保護。
- 耐切創性グローブを装着:ルーターの高速回転ビットによる怪我を防ぐ。
- 防塵ボックス内で作業:粉塵の飛散を抑え、室内環境を清潔に保つ。

石磨きのステップと所要時間
石磨きの全体的なステップと大体の所要時間が次の表です。
石の硬度や使用する道具によって時間は変わりますが、フローライト(モース硬度4)を基にしています。
ステップ | 電動ルーター使用時 | 手磨き(サンドペーパー使用時) |
---|---|---|
ステップ1: 粗削り | 約10~20分 | 約1~2時間 |
ステップ2: 中研磨 | 約15~30分 | 約2~4時間 |
ステップ3: 微研磨 | 約20~40分 | 約3~5時間 |
ステップ4: 仕上げ研磨 | 約15~30分 | 約2~3時間 |
【違いの説明】
- 電動ルーターの場合
- ダイヤモンドビットや研磨パッドを使用するため、短時間で研磨が可能。
- 低速で作業すれば割れを防げるが、それでも手磨きより圧倒的に早い。
- 合計所要時間:約1~2時間
- 手磨きの場合
- サンドペーパー(#60 → #1000 → #3000 → #5000など)を順番に使い、根気よく磨く必要がある。
- 磨く力加減を間違えると、表面にムラができやすい。
- 合計所要時間:約8~14時間(途中で休憩を挟むことを推奨)
それでは、各ステップでの研磨方法を次に紹介します。
ステップ1: 粗削り ✂️
目的: 石の形を整える
工具: ダイヤモンドグラインディングビット(#150〜#300)または湿式研磨紙(#60〜#120)
次のループ動画が今回削るフローライトで、大体4cm四方の大きさがありゴツゴツしています。

作業方法:
・石工用鉛筆(ダーマトグラフ)などで削るところに印を付けると作業しやすいです。
カボション・カット(表面が滑らかで丸みを帯びた形のカット)やファセット・カット(平面が複数あるカット)など、最終的にどのような形にしたいのかをイメージして、削る部分を決めます。

ピンク色のダーマトグラフで印を付けたのが次の写真です。

・石を水に軽く浸しながら、ビットを優しく当てて形を作ります。
フローライトは柔らかいので圧力をかけすぎると欠けやすいため、軽いタッチで作業を行う必要があります。
・定期的に水に浸して過熱を防ぎます。
まずは、次の2種類のダイヤモンドカッターを使って大まかに形を整えました。

防塵ボックスの中で作業をします。

ダイヤモンドカッターのみで最初削った結果が次のループ動画です。
ほぼ突起やへこみ、溝がなくなりました。

次は#100の湿式研磨パッドを使います。
フローライトは回転数が高すぎると熱で割れやすくなるため、5,000~10,000回/分くらいの低めの回転数が良いと思います。

次のループ動画が#100の研磨パッドで磨いた結果で、更に角がとれました。

一般的には、#400~#800以降から水研ぎを取り入れるとバランスが良いですが、フローライトのように比較的柔らかい石は最初から水研ぎした方が割れにくいです。
水研ぎとは、石材の表面を研磨する際に水を使いながら研磨する方法のことで、次の特徴があります:
・摩擦熱を抑える
・研磨材(砥石やダイヤモンドパッドなど)が滑らかに動き、均一な研磨ができる
・粉塵を抑えられる
・石の表面が光沢のある滑らかな仕上がりになる
逆に、水研ぎをしない方が良いのはエチオピアンオパールです。
エチオピアンオパールはハイドロフェーン現象(水分を吸収して透明度や色合いが変わる特性)があるため、湿式研磨では水分を吸収し、作業後の乾燥中にひび割れが生じるリスクがあります。
したがって、この石には乾式研磨(ドライポリッシング)の方が推奨されます。
ステップ2: 中研磨 🪶
目的: 粗い傷を取り除き、表面を滑らかにする
工具: 湿式研磨紙(#200〜#400)またはダイヤモンドビット(#600〜#1000)
作業方法:
・円盤型のパッドに#200〜#400の湿式研磨紙を貼り付け、石を水に浸しながら研磨します。
回転数は5,000~10,000回/分くらいの低・中回転速度にします。
次のループ動画は#400の研磨紙で磨いた結果ですが、大分、つるっとしてきました。

・手触りが滑らかになったら次のステップへ進みます。
ステップ3: 微研磨 ✨
目的: 表面をさらに滑らかにし、光沢を出し始める
工具: 湿式研磨紙(#600、#1200、#3000)
作業方法:
・#600の研磨紙をパッドに貼り付け、水を使って優しく研磨します。
・次に#1200、#3000の順で研磨を繰り返し、表面の微細な傷を取り除きます。
・作業中は圧力を最小限に抑え、均一な仕上がりを目指します。
次のループ動画が#3000の研磨パッドで磨いた結果で、指で触った感じではツルツルですが、ピカピカとまではいきません。

ステップ4: 仕上げ研磨 🌟
目的: 鏡のような光沢を出す
工具: フェルトバフホイールまたは布バフホイール、湿式研磨紙(#5000)
研磨剤: 酸化セリウム(またはダイヤモンドペースト、アルミナ研磨剤)
作業方法:
・まず#5000の湿式研磨紙で最終調整を行います。
・次に、少量の研磨剤(例:酸化セリウム)を石の表面に塗布し、フェルトバフホイールで優しく磨きます。
酸化セリウムは 重量比1:2〜1:3(水:酸化セリウム) の濃度で溶き、しっかり撹拌します。
次の写真にあるようなスポイトやニードルボトルを使うと正確に水の量を調整できて便利です。

水で溶いた酸化セリウムをフェルトバフホイールが湿る程度に付けます。

電動ルーターの回転速度は低速〜中速を維持し、過熱しないよう注意します。
他の注意点は以下の通りです:
・ 適度に水で溶いた酸化セリウムを追加 して、乾燥しないようにする。
・ 強く押し付けずに軽い圧で研磨 する(摩擦熱を抑える)。
・ 途中で石の状態を確認 しながら、最適な回転数を見極める。
・光沢が出るまで研磨を繰り返します。
次のループ動画は仕上げ研磨が終わった状態で、ツルツル、ピカピカです。

追加のヒント:磨いた石をピカピカに保つ方法
磨いた石がずっとピカピカであって欲しいですよね。
ワックスやオイルを塗るとある程度、持ちますが、時間が経つとホコリがついたりして状態が悪くなってきます。
長持ちさせるには、透明アクリルスプレーがお勧めで、硬化後はツルツルした仕上がりになります。
準備するのは、クリアタイプ(透明)の「つやあり」アクリルスプレーです。
私は次の商品を使っていますが、サクラチェッカーの評価も高いです。
おすすめの使い方は次の通りです:
・ 薄く何度か重ね塗り(2〜3回)する
(厚塗りするとムラや気泡ができやすく、不自然な仕上がりになってしまう)
・ スプレー後はしっかり乾燥させる(1日程度)
・ 仕上げに柔らかい布で軽く磨く(より自然な光沢 になる)
仕上げ用の布として、次の理由からフェルト布がお勧めです:
・ ムラをなくす (スプレー後に微細なムラや曇りがある場合、均一にならすことができる)
・ 自然な光沢を引き出す (余分なスプレーがあれば取り除き、より透明感のある仕上がりになる)
・ 摩擦熱が少なく安全 (柔らかいフェルトなら、フローライトの表面を傷つけずに磨ける)
次の写真は今回磨いたフローライトにアクリルスプレーを吹いた結果です。
これで、時間が経ってもツヤツヤ,ピカピカを維持できます😊

よくある問題と対策
問題 | 原因 | 対策 |
石が割れる、欠ける | 圧力のかけすぎ、高速すぎる回転 | 軽い圧力で低速を維持 |
表面が曇ってしまう | 研磨が不十分、傷が残っている | より細かい粒度の研磨紙で再研磨 |
光沢が十分に出ない | 最終仕上げの研磨剤が適切でない | 酸化セリウムまたはダイヤモンドペースト使用 |
過熱で石が変色または割れる | 水を使わず、速度が速すぎる | 湿式研磨と低速作業を徹底 |
おわりに
フローライトの研磨は、初心者でも手軽に挑戦できます。
最初はゴツゴツしていた石が、少しずつ磨かれて光沢を増していく過程は、まるで小さな宝物を生み出しているような感覚になります。
今回ご紹介した方法を参考に、ぜひ自分だけの「ピカピカのフローライト」を作ってみてください。磨けば磨くほど愛着が湧くのも石磨きの醍醐味です。
今回、ダイソーの安い原石を使いましたが、ネットでもそれほどお金をかけずに、綺麗な石を手に入れることができます。
その方法について、次の記事に書きましたのでよろしかったらご覧ください。
モース硬度は、鉱物の硬さを評価するための尺度です。
硬さは「引っかき傷」に対する抵抗力で測定されます。
ドイツの鉱物学者フリードリッヒ・モースが1822年に考案しました。
尺度は1から10までの数値で表され、1が最も柔らかく、10が最も硬いです。
各レベルは特定の鉱物によって定義されています:
ポイント:
例えば、石英 (7) は方解石 (3) を傷つけますが、逆はできません。
科学的な硬さを測定するには、ビッカース硬さやブリネル硬さなど他の方法があります。