自転車は便利でエコだし、健康にも良いすばらしい乗り物です。
けれども、どんなに気を付けても事故のリスクがあります。
約1億円の賠償金… これは、ある自転車事故で実際に起きた話です。
毎日何気なく乗っている自転車が、人生を一変させる可能性があるのです。
でも、心配はいりません。
この記事では、自転車事故の高額賠償から身を守る方法を紹介します。
目 次
全交通事故に占める自転車事故の割合は近年増加
警察庁のデータによると、自転車が関与する交通事故件数は年間約7万件(2022年時点)と報告されています。
全交通事故に占める自転車事故の割合は23%で、この割合は近年増加しています。
(参照: 警察庁 「自転車関連交通事故の状況」https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/kentokai/01/siryou07.pdf?utm_source=chatgpt.com )
死亡重症事故件数の内訳をみると、65歳以上が最も多く、次いで19歳以下が多くなっています(次の図)。
自転車対歩行者の事故(自転車第1当事者)のうち、歩行者側が死亡・重傷を負った事故の自転車運転者の年齢層が次の円グラフです。
29歳以下の人が約半数ですが、中高年も少なくありませんね。
自転車関連死亡重傷事故において自転車運転者が第1当事者の場合,安全運転義務違反が過半数を占めており,次いで一時不停止,信号無視の順に多くなっています(次の図)。
【知らないと損】事故後の対応と保険活用の流れ
いくら気をつけていても、また自分が悪くなくても、誰しも事故にあうことがあります。
そのとき、冷静に適切な対応を取ることが重要です。
事故が起きたときの対応を3つのステップに分けて解説します。
ステップ1. 現場の記録:冷静に状況を記録する
事故が発生したら、まずは自分自身の安全を確保した上で、事故の状況を正確に記録しましょう。
【具体的な記録方法】
- 相手の連絡先、保険情報の確認
- 事故状況の写真や動画を撮影
次の点を撮影すると、後のトラブル防止に役立ちます:- 自転車や車両の損傷箇所
- 衝突地点や道路標識、信号機などの状況
- 事故現場全体の位置関係
- 注意点:
撮影した日時と場所が分かるようにしておきます。
これにより、後で証拠としての信頼性が高まります。
撮影した写真や動画は、スマートフォン内で整理しておきます。
データを無くさないように、クラウドストレージなどにバックアップすることもおすすめです。
- 加害者の情報
- 加害者の車両ナンバーや免許証を撮影します。
- 加害者との会話を録音することも有効です。
- 目撃者の確保
周囲に目撃者がいる場合、連絡先を聞いておきます。
後の証言が非常に重要です。
ステップ2. 警察への通報:必ず事故証明を取得する
事故が軽微に見えても、必ず警察に通報し、事故証明を取得しましょう。
【重要なポイント】
- 人身事故と物損事故の区別
負傷している場合は、「人身事故」として扱ってもらいましょう。
物損事故として処理されると、保険請求や損害賠償に影響を及ぼす可能性があります。 - 病院での診断を受ける
自覚症状が軽くても、後から痛みや異常が出ることがあります。
必ず病院で診断書を取得してください。
これも重要な証拠となります。 - 事故現場での記録を警察に伝える
先ほど記録した写真や動画が、正確な状況説明に役立ちます。
ステップ3. 保険会社への連絡:適切なサポートを受ける
事故証明書や診断書、記録をもとに、保険会社に速やかに連絡します。
【手順と確認事項】
- 保険の種類を確認
自転車専用保険や、自動車保険・火災保険の特約(個人賠償責任保険)など、利用可能な保険を確認しましょう。
重大な事故の場合、賠償額が2億円を超える可能性があるので、賠償限度額が2億円以上、できれば3億円または無制限の自転車保険に加入することが推奨されています。
示談交渉サービスがある場合は積極的に利用しましょう。
示談書作成においては次の点に注意しましょう
・項目別に金額を明記
・今後の治療費について追加請求の可能性を明記
・双方の署名・捺印を忘れずに - 必要書類を準備
- 事故証明書
- 診断書
- 写真や動画などの記録
- 過失割合の確認と対応
相手側との過失割合の調整や交渉について、保険会社がサポートする場合があります。
弁護士費用特約が付いている場合、弁護士に相談することも視野に入れましょう。
事故対応の事前準備も重要
事故後の対応をスムーズにするために、以下の準備をしておくと安心です:
- 保険内容の確認
加入している保険の内容を理解し、適用範囲を把握しておきましょう。 - 緊急時連絡先リストの作成
保険会社や家族、病院などの連絡先をスマホやメモにまとめておく。
次の写真のような携行用カードを発行している保険会社であれば、このカードを財布などに入れておくか、写真に撮ってスマホ内に保存しておくと、いざというときに便利です。
- 応急処置の知識
簡単な応急処置を学んでおくと、事故時に役立つ場合があります。
「やってはいけない」こと
次の「やってはいけない」項目を意識することで、自転車事故時の対応がよりスムーズになり、後のトラブルを防ぐことができます。
自転車保険未加入者は少なくない
大人の約3分の1は未加入
大半の地方自治体では、自転車保険への加入が義務化されています。
(参照: ほけんの窓口 「自転車保険の加入義務化とは?入らない時の罰則は?対象地域等も解説」 https://www.hokennomadoguchi.com/columns/songai/bicycle/obligation/?utm_source=chatgpt.com )
しかしながら、2023年の調査では、全国で約34%の人が自転車保険に未加入であることがわかりました。(参考: au損保 「au 損保、自転車保険加入率を調査」https://www.au-financial.com/pdf/sonpo/news_20240314_01.pdf?utm_source=chatgpt.com )
特に高齢者層や学生層で未加入率が高い傾向があります。
(参考: 三井住友海上 「自転車利用に関する調査結果」https://www.ms-ins.com/news/fy2022/pdf/0914_2.pdf?utm_source=chatgpt.com )
保険未加入による問題点
- 高額な賠償リスク
- 例: 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路で、歩行中の女性(62歳)と正面衝突。
女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となり、賠償額は9,521万円でした。 - 「普段は近所を走るだけだから、保険なんて必要ない」と思っていても、このような高額な賠償を個人で支払うことになってしまうかもしれません。
- 例: 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路で、歩行中の女性(62歳)と正面衝突。
- 事故後の交渉が困難
- 示談交渉を保険会社が代行しないため、被害者とのやり取りが煩雑に。
- 示談交渉の知識がないと、相手側との話し合いに難航しトラブルが長期化する可能性が高まります。
結局、弁護士を雇うことになると、費用はさらに膨れ上がります。
- 被害者救済の遅延
- 保険がない場合、被害者への賠償や治療費の負担が遅れるケースも。
- これにより、被害者の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
自転車保険の種類とメリット
自転車専用保険
- メリット:保険料が比較的安価で選択肢が豊富です。
個人賠償責任保険と障害保険や入院費用補償がパッケージ化されていることもあります。 - 例:TSマーク付帯保険(自転車の点検整備を受けた際に貼付される「TSマーク」に付帯する保険)やスポーツバイク向け保険。
自動車や火災、傷害の保険に付帯する個人賠償責任保険
- メリット:既存の保険で家族全員がカバーされる場合がある(保険会社によって範囲が異なるため、保険内容を確認する必要があります)。
また、他人の財物損害(自転車事故で車や物を破損した場合など)を補償する特約があります。 - 例:自動車保険や火災保険の特約。
クレジットカード付帯保険
- メリット:クレジットカードの利用特典として付帯されるため、別途保険料を支払う必要がありません。
また、自転車事故による第三者への損害賠償(個人賠償責任保険)だけでなく、旅行保険やショッピング保険なども含まれる場合があります。 - 例:三井住友カード、楽天カード、JCBカードなど。
詳しくは福岡県のWebページ「自転車保険(自転車損害賠償保険等)に加入しましょう」が参考になると思います。
おわりに
自転車は私たちの生活に欠かせない便利な乗り物ですが、同時に大きなリスクも伴います。
この記事で説明しましたように、適切な準備と対応、そして何より自転車保険への加入が、あなたと家族を守る鍵となります。
事故は予期せぬ時に起こりますが、その後の対応で状況は大きく変わります。
冷静な判断、正確な記録、そして保険のサポートがあれば、高額賠償のリスクを大幅に軽減できるのです。
今すぐに、自分や家族の保険加入状況を確認してみましょう。
そして、日々の自転車利用においても、安全運転を心がけましょう。
「第1当事者」とは、交通事故において最も重大な過失または責任があると判断される当事者を指します。具体的には:
例えば、信号無視をして他の車両と衝突した場合、信号無視をした側が第1当事者となります。また、自転車が歩行者と衝突した場合、通常は自転車側が第1当事者となります。第1当事者の判断は、警察による事故調査や証拠に基づいて行われ、事故の責任割合や保険の適用範囲に大きな影響を与えます。