自転車で横断歩道を渡るとき、こんな疑問を感じたことはありませんか?
「横断歩道の隣りに自転車横断帯があるけど、横断歩道の方を渡ってもべつにかまわないよね?」
「毎日の通勤や買い物で自転車に乗りながら横断歩道を渡っているけど、本当は降りて押し歩きすべきなのかな?」
もしかしたら、自転車の横断歩道通行についての交通ルールに対する誤解がストレスを招いているのかもしれません。
自転車事故の約8割が自動車との衝突によるもので、その中でも、道路横断時の事故が少なくありません。
正しいルールを知ることは安全につながります。
この記事では、疑問を抱える方のために、横断歩道や自転車横断帯でのクルマの一時停止ルールや安全に横断するための方法をわかりやすく紹介します。
なお、信号機がない横断歩道や自転車通行帯が特に危険ですので、そこに焦点を当てて説明します。
目 次
自転車の横断時の事故はどれくらい?
自転車事故が全体の交通事故に占める割合は、近年の動向をみると年々増加しています。
また、自転車の事故は約8割が対自動車です。
次の図のように、四輪車の過失が大きく、自転車の過失が小さいときの事故の統計では、自転車側は直進走行中が最も多く、2番目に道路の横断が続きます。
このように、自転車で道を横断するときは安全に気をつける必要があります。
横断歩道を自転車で通る場合
横断歩道を渡るといっても、自転車に乗ったままなのか、降りて押し歩きをするのかなどによって違います。
ですので、ケースごとに交通ルールをみていきたいと思います。
ではクイズ形式で説明します。
Q:自転車から降りて横断歩道を渡るために待っている人がいる場合、クルマは停止しなければならない?
停止しないクルマは交通違反をしていると思ってよいのでしょうか?
A: 〇
自転車に乗っている人が横断歩道の手前で自転車を降りて押している場合、歩行者扱いとなり、クルマには停止義務が発生します。
道路交通法では、「横断歩道を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。」となっています。
したがって、上記のようにクルマに停止の義務が生じます。
(参照:道路交通法 第三十八条(横断歩道等における歩行者等の優先)e-GOV 法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_6_2-At_38_2 )
違反して赤切符が切られた場合、3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金です。
青切符の場合は、普通車であれば9,000円の反則金が課せられます。
信号が無い横断歩道では、自転車を押し歩きして横断歩道を渡ろうとしても、クルマが見落として事故になることがあります。
特に夕暮れや夜間は危険が高まります。
クルマには停止義務があるとはいえ、事故が起こり得るため、十分に注意して渡りましょう。
JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が行った全国調査の結果では、「信号機のない横断歩道での車の一時停止率」の全国平均は53%。
ベストは長野県で87%、ワーストは富山県で31.6%でした。
(参照:JAF 「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査 ~ 2024年調査結果」 https://jaf.or.jp/common/safety-drive/library/survey-report/2024-crosswalk )
次に、自転車に乗ったままの場合をみてみましょう。
Q:自転車に乗ったまま横断歩道を渡るために待っている人がいる場合、クルマは停止しなければならない?
「どうして停止しないの?ルールでしょ!」と自転車の人が思うのは正しいでしょうか?
A: ✕
自転車に乗った状態で横断歩道にいる場合、自転車は歩行者ではなく軽車両として扱われ、基本的にはクルマに停止義務はありません(ただし、小児が自転車に乗っているケースについては次のクイズをみてください)。
自転車に乗ったまま横断歩道を渡ろうと待っている人に対して、クルマの停止義務はありませんが、止まってくれるクルマも少なくありませんよね。
特に、ヤマト運輸や佐川急便といった宅配便トラックは停止してくれることが多いと感じます。
自転車乗りには嬉しいですね😄。
同じ自転車に乗ったままではありますが、小児の場合はどうでしょう?
Q:小児が自転車に乗ったまま横断歩道を渡るために待っている場合、クルマは停止しなければならない?
まあ、小さい子が横断しようと待っていたら、クルマは普通、一時停止すると思いますが…
A: 〇
道路交通法上、「小児用の車」は軽車両ではなく、歩行者として扱われます。
したがって自転車に乗った状態で横断歩道にいる小児に対して、クルマには停止の義務があります。
どのような車が「小児用の車」についての詳しい定めは法令にありませんが、警察庁の見解によれば、小児用の車とは「子供用自転車のうち、小学校入学前までの子供が乗車するために作られたもの」とされています。
ただ、小児用自転車がすべて「小児用の車」と認められるわけではなく、判例では小児用自転車が「小児用の車」といえるかどうかは事案ごとに検討されています。
(参照: ウィキペディア 「小児用の車」 https://x.gd/lGBYP )
次のクイズは高齢者の場合で、難しいと思います。
Q:自転車は車道を走るのが原則です。
ただし、70歳以上の人が自転車を運転するときは例外として、道路標識等により自転車が歩道を通行することができるとされていない歩道でも走行することができます。
では、70歳以上の高齢者が自転車に乗ったまま横断歩道を渡るために待っている場合、例外的にクルマは停止しなければならない?
A: ✕
70歳以上の高齢者が乗っている自転車は、横断歩道では軽車両として扱われます。
したがって、クルマには一時停止の義務はありません。
次は自転車の横断歩道の渡り方についてのクイズです。
Q:自転車で横断歩道を渡るとき、横断歩道に歩行者がいても、自転車に乗ったまま渡ってもよい?
これは日常的に見かける光景ですが、ルールはどうでしょう…
A: ✕
横断歩道を歩いている人の通行の妨げとなるようであれば、自転車から降り、自転車を押して横断歩道を渡らなければなりません。
逆に、横断歩道に歩行者がいないなど歩行者の通行を妨げるおそれがないときは、自転車に乗って横断歩道を渡ることができます。
(参照:愛知県警察 「自転車の通行ルール 横断歩道を利用した横断時の注意点(横断歩道は歩行者優先)」 https://www.pref.aichi.jp/police/koutsu/jitensha/jitensyatuko.html )
横断歩道上の歩行者の通行を妨害した場合の罰則は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金です。
信号機のない横断歩道内で自転車と歩行者が接触した場合、自転車 100、歩行者 0 という過失割合になります。
過失割合は事故の損害賠償額を決める際に重要な要素です。
横断歩道は本来、歩行者優先のため、自転車を押して渡ることが基本です。
(参照: ベンナビ 「自転車事故で過失割合が不利にならないために!状況別の割合と注意すべきポイント」 https://jico-pro.com/columns/123/ )
自転車横断帯の場合
自転車横断帯というのは、次の写真のように、横断歩道の隣に設置された、自転車が安全に道路を渡るための専用スペースです。
自転車のマークや「じてんしゃ」という文字が書かれていることが多いです。
では、自転車横断帯についてのクイズです。
Q:自転車に乗ったまま自転車横断帯を渡ろうとしている人がいる場合、クルマは一時停止する義務がある?
一時停止をしないクルマが多いように思いますが、ルールはどうでしょうか?
A: 〇
自転車は基本的に軽車両に分類されますが、自転車に乗った人が自転車横断帯を渡ろうとしている際には、クルマは一時停止する義務があります。
このため、自転車横断帯で自転車が待っていたり、実際に渡ろうとしていたりする状況では、クルマは停止しなければなりません。
(参照: 道路交通法第38条 e-GOV https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_3-Se_6_2-At_38 )
違反したときの罰則は、次のとおりです。
反則金:普通車の場合 9,000円
刑事罰(反則金制度を適用しない場合):3か月以下の懲役または5万円以下の罰金
特に信号が無い自転車横断帯では、ドライバーが一時停止をしなければならないことを知らなかったり、自転車がいることを見落としたりして、急ブレーキや衝突の原因となることがあります。
したがって、自転車に優先権はあっても、クルマによく注意して自転車横断帯を渡る必要があります。
自転車横断帯が横断歩道の横にあっても、横断歩道の方を渡る自転車をよく見ますね。
ではクイズです。
Q:自転車横断帯が横断歩道の横に設置されている場合、自転車は自転車横断帯ではなく横断歩道の方を通行してもかまわない?
A: ✕
自転車は、道路や交差点又はその付近に自転車横断帯がある場合は、自転車横断帯を通行しなければなりません(次の図)。
自転車横断帯を横断しなかった場合、2万円以下の罰金または科料の罰則があります(道路交通法 第63条の7第1項)。
罰金:
刑法に基づく刑罰であり、金額は「1万円以上」と定められています。
罰金が科される場合、裁判所が有罪判決を下し、その後、金銭を支払うことが求められます。
罰金を支払わない場合は、労役場留置などの処置が取られることがあります。
科料:
罰金よりも軽い刑罰であり、金額は「1000円以上1万円未満」とされています。
科料も刑罰であるため、支払いができない場合には労役場留置が適用されます。
ところで、近年、横断歩道に隣接する自転車横断帯が減少傾向にあるのをご存じですか?
私の家の近所の自転車横断帯も、その線や絵が削り取られて撤去されました。
次のような問題があるため、横断歩道の横にある自転車横断帯を減らしていく方針となったようです:
「交差点で横断歩道に並行して自転車横断帯が設けられている場合、車道の左側を通行する自転車がいったん左に寄り、自転車横断帯を通って再び右に寄って車道に戻るようなケースがあります。
左に寄ることで、クルマのドライバーはその自転車が左折するものと勘違いし、結果的に巻き込み事故につながる恐れがありました。」
(参照:乗りものニュース 『「自転車横断帯」がクルマを惑わせる? 横断歩道に併設のアレ、撤去進むワケ』 https://www.excite.co.jp/news/article/Trafficnews_78844/ )
おわりに
自転車で横断歩道や自転車横断帯を渡る際には、私たちが見落としがちな交通ルールがいくつもあります。
クルマが停止義務を守らない場合もあるため、常に注意が必要です。
特に、夕暮れ時や夜間、信号のない横断歩道では、クルマが気づかず進行してくることもありますので、慎重に渡りましょう。
今回の記事が、横断歩道での不安や疑問を解消し、安全な自転車生活の一助となれば幸いです。
「自転車で横断歩道を渡ろうとずっと待っているけど、クルマが一時停止してくれない! 一時停止は義務じゃないの?」