自転車の部品の取付には、適正トルクがあるのをご存知でしょうか?
例えば、私が最近、購入した e-bike 「YAMAHA WABASH RT」には、シートバンドの締め付けトルクの指定があります(次の図)。
指定のトルク以上の力で締めると部品が破損する恐れがあるので注意が必要です。
実際、私はネジを締め付け過ぎて、ねじ切ってしまったことが何度かあります。
自転車にはここ以外にも、ハンドルバーやペダル、ステム(フロントフォークとハンドルバーを繋ぐパーツ)、クランク、ペダル、ボトルケージなど、多くの部品がボルトで固定されています。
自転車部品のネジ止めには六角レンチ(ヘックスレンチ)を使う人が多いと思います。
値段が安くて携帯もしやすいので良いのですが、六角レンチには次のような欠点もあります:
- トルク管理が難しい
締め付け力を感覚に頼るため、締め過ぎや緩みのリスクがあります。
先程の例のように、「3Nm」と指定されても、力加減が分かりませんよね。
もし締め付けすぎて高価なパーツを破損すると、修理やパーツ交換にお金がかかります。
逆に、緩すぎるとパーツが抜け落ちるなどして安全な運転ができなくなる恐れがあります。 - 作業効率が低い
ラチェット(ボルトやナットを締める際に一方向にだけ回転し、逆方向には空転する仕組みのこと)などの補助機能がないため、作業効率が低くなります。
自分の手で適切なトルクで締め付けができたら、安心感が違いますよね。
この記事では、より正確に、そして効率的にネジの締め付けを行うためのトルクレンチを紹介します。
特に、初心者でも使いやすいデジタルトルクレンチ「SK11 SDT3-060」の魅力と使い方を詳しくお伝えします。
目 次
トルクレンチにはどんなタイプがある?
自転車のメンテナンスにおいて、適切なトルクでの締め付けに活躍するのが「トルクレンチ」です。
さまざまなタイプのトルクレンチが販売されており、それぞれに特長と適した用途があるので、主要なトルクレンチの種類とその特長を紹介します。
ビーム型トルクレンチ
この型のトルクレンチは、最も基本的で昔からあるタイプの一つです。
【ビーム型トルクレンチの例】
操作はシンプルで、レンチの持ち手部分に取り付けられた指針が目盛りを読むことで、現在のトルク値を把握します。
特長:
• 耐久性: 構造がシンプルなため、故障しにくく長持ちします。
• コスト効率: 他のタイプに比べて価格が安価で、手頃に入手できます。
• 精度: 適切に使用すれば高い精度を保つことができます。
デメリット:
• 視認性: 作業中に目盛りを確認する必要があり、視線を移すことで作業効率が落ちる可能性があります。
• 操作性: 狭い場所や視界が悪い状況では使いづらいことがあります。
クリック型トルクレンチ
クリック型は、設定したトルク値に達すると「クリック」音とともに手応えが伝わる仕組みになっています。
【クリック型トルクレンチの例】
これは最も一般的に使用されているタイプで、多くのプロや愛好家に支持されています。
特長:
• 使いやすさ: 音と感触でトルク達成を知らせてくれるため、視線を移す必要がありません。
• 多用途性: 様々なトルク範囲の商品があり、多くの作業に対応できます。
• 精度: 適切に校正されていれば、高い精度を維持できます。
デメリット:
• 校正の必要性: 定期的な校正が必要で、放置すると精度が低下する可能性があります。
• 価格: ビーム型に比べるとやや高価です。
デジタルトルクレンチ
デジタルトルクレンチは、電子的にトルクを測定し、デジタルディスプレイに数値を表示する先進的なツールです。
設定したトルク値に近づくと音や光で知らせてくれる機能も備えています。
【デジタルトルクレンチの例】
特長:
高精度: デジタル測定により、非常に正確なトルク管理が可能です。
• 視認性: 大きく見やすいディスプレイで、現在のトルク値を一目で確認できます。
• 機能性: メモリ機能や異なる単位での表示など、便利な追加機能が充実しています。
デメリット:
• 価格: 他のタイプに比べて高価な傾向があります。
• 電源依存: バッテリーが必要で、電池切れの場合は使用できません。
• 耐久性: 精密機器であるため、落下や衝撃に弱い場合があります。
アマチュアの自転車メンテナンスにお勧めのトルクレンチは?
以上、主なトルクレンチのタイプを紹介しましたが、アマチュアの自転車メンテナンスには、デジタルトルクレンチがお勧めです。
その理由は次のとおりです。
• 直感的な操作: デジタル表示とアラート機能により、初心者でも簡単に正確なトルク管理が可能です。
• 多機能性: さまざまなトルク設定や部品に対応でき、幅広いメンテナンス作業をサポートします。
• エラーの低減: 高い精度と確認しやすい表示により、過不足なく適切な締め付けが行えます。
特に、カーボンフレームや高価なパーツを扱う場合、適切なトルク管理は不可欠です。
このような繊細な部品を安全かつ確実にメンテナンスすることができます。
お勧めのデジタルトルクレンチは「SK11 SDT3-060」
高い評価
上記のようにデジタルトルクレンチがアマチュアのDIYに向いていると思いますが、その中でも特に、「SK11 SDT3-060」というデジタルトルクレンチをお勧めします。
私はこのデジタルトルクレンチを2年前に購入しましたが、これは本当に便利で、見た目もカッコ良いので、所有していると満足感が高いです。
また、サクラチェッカーでも高評価です。
アマゾンでの評価では、いわゆるサクラがお金や品物を貰って高評価を付けたり、ライバル製品の評判を落とすために意図的な下げ評価を付けたりすることもあり、あまり当てにならないことはよく知られているとおりです。
サクラチェッカーはこのサクラの影響を除いて、より本当の評価を教えてくれる便利なツールです。
特長や優れた点
私は「SK11 SDT3-060」を自転車のメンテナンスだけでなく、家具の組み立てやメンテナンス、家電製品の修理、アウトドア用具のメンテナンスなど、適切な締め付けが求められる場合に使っています。
使ってみて、以下が「SK11 SDT3-060」の良い点だと思います:
- 高精度なトルク管理
デジタル表示により、トルク値を正確に設定・確認できます。
±3%の高精度で設定トルクに到達するため、正確な作業ができます。 - 使いやすいデジタルディスプレイ
ディスプレイは見やすく、設定トルクや現在のトルク値を一目で確認できます。
また、設定トルクに近づくとLEDの光とブザー音で知らせてくれるため、過剰なトルクをかける心配がありません。 - 広い測定範囲
3〜60Nmの幅広い測定範囲を持ち、様々な作業に対応可能です。
このトルクの範囲で自転車の主要な部品のほとんどをカバーできます。 - 充実の機能で使い易い
右ネジ、左ネジどちらの締め付けにも対応しており、オートパワーオフ機能で電池の消耗も抑えます。
人間工学に基づいたグリップデザインで比較的軽量なので、長時間の作業でも疲れにくいのも嬉しいポイントです。 - コストパフォーマンスの高さ
高機能を備えながら、アマチュア・ユーザーにも手の届く価格帯で提供されています。 - 確かな品質と安心のサポート
DIY工具の老舗ブランド「SK11」(藤原産業株式会社のブランド)なので、品質やサポートも安心です。
デジタルトルクレンチ「SK11 SDT3-060」の使い方
「SK11 SDT3-060」の使い方は簡単で、使い方を覚えれば、自転車の組み立てや家具の組み立てなど、様々な場面で活用できます。
「SK11 SDT3-060」には次の写真のようなケースが付いています。
また、次の写真のように精度の「検査成績表」も付属してきます。
精度が大切なトルクレンチで、これが付属しているのは安心感があります。
準備
まず、このトルクレンチを使う準備です。
電池を入れる
本体の電池カバーを開け、単4電池を2本入れます。
電池カバーを開け閉めするためのプラスドライバーもケースに付属しています。
締めたいネジに合ったソケットを取り付ける
自転車のメンテナンスの場合、六角の穴が頭に付いたボルトを締めることが多いですね。
例えば、つぎの写真のようなステム(ハンドルバーとフロントフォームをつなぐバーツ)のボルトです。
このようなネジを締めるためには、「SK11 ヘックスビットソケットセット」のようなビット付きのソケットが使えます。
(ヘックスとは六角のこと。ビットとはドライバーやソケットの先端に付けて、ネジを回すための工具のことで、プラスやマイナス、トルクスなど、様々な形状があります。また、ソケットとはボルトやナットの頭部を覆って回すための工具です。)
このようなソケット類は「SK11 SDT3-060」には含まれていないので、別途、購入する必要があります。
先程の例として紹介したステムのネジに合うのは、4mmのサイズのビットソケットです。
このビットソケットをトルクレンチのヘッドのところにカチッと取り付けます(次の写真)。
このとき、ヘッド中央部の丸いボタンを押しながら取付け、ボタンを離すとそのままロックします。
また、上記の例のような頭が凹んでいるネジを回すのではなく、出っ張っている部分を回す必要があることもあります。
例えば、次の写真のように、自転車のスタンドを取り付けるときに、六角のナットを締め付ける場合です。
この場合、次のような別のソケットを用意する必要があります。
さきほども言いましたが、ソケット類は「SK11 SDT3-060」には含まれていないので、必要に応じて別途、用意する必要があります。
ラチェットの向きをセットする
このトルクレンチにはラチェット機構が付いているので、ハンドルを往復させるだけで連続的に締めることができ、作業がはかどります。
ヘッド部上部にあるギア左右切替えダイアルを、右ネジ(時計回りに回すと締まるネジ)を締めるときは左に回しておきます。
左ネジの場合はその逆です。
目標トルク値の設定
電源を入れる
次の写真のように、「C」ボタンを押してパワーオンにします。
目標トルク値を設定
電源を入れると、前回指定していたトルクが表示され、違うトルクを設定したい場合は、赤の鎖線で囲んだ矢印の上下ボタンを押して、希望のトルクに変更します。
この例では、次の写真のように「5.0 Nm」に合わせました。
この状態で3秒間待つと、表示が「0.0 Nm」に変わり点滅表示になって測定モードになります。
これで準備完了です。
ネジの締め付け
さあ、いよいよネジを締めます。
本体を握り、ゆっくりと力を加えて締め付けていきます。
注意点としては、急に力をかけると、適正トルクに近づいていることを知らせるLEDの光や音が出る前に設定したトルクを超えてしまうことです。
ですので、ゆ~っくりと力をかけていく必要があります。
現在、かかっているトルクが、画面にリアルタイムで表示されます(次の写真)。
目標トルク値の約90%に到達すると、次の写真のように緑色のLEDが4個点灯し、締め付け完了が近づいていることを教えてくれます。
さらに、締めて設定したトルク値に達すると、緑色のLEDに加えて赤いLEDが2個点灯。「ピピピピピ」と音が鳴るので、締め付けを止めます(次の写真)。
LEDや音のおかげで、画面が見えないような体勢で作業しても使えるのが便利です。
「ピピピピピ、ピー!」という音がトルクレンチから聞こえたら、すぐに締めるのを止めます。
さもないとネジの締めすぎになってしまいます。
なお「Err」(エラー)と表示された場合は、 設定トルク値の110%以上のトルクがかかったことを意味します。
使用したソケットは、ヘッド中央部の丸いボタンを押すと簡単に抜けます。
使う上での注意点
以下のリストは「SK11 SDT3-060」の取扱説明書にある注意書きです。
精密測定機器であるこの製品を正しく永く使うために気を付ける必要があります。
おわりに
これで、あなたもデジタルトルクレンチを使いこなせるようになったと思います。
最初は不要なネジで練習し、使うのに慣れてから本番に臨むことをお勧めします。
DIYでの正確性や効率性をアップして、安全かつ快適な作業を楽しみましょう!
水に濡れると故障の原因となるのでご注意下さい。
重大な故障の原因になります。
ハンドルの端を握ってトルクを測定しないで下さい。
数値が変化し正確な測定が出来ず故障の原因になります。