電動アシスト自転車のタイヤ交換で法令違反? 知っておくべき重要ポイント

「あなたの電動アシスト自転車が道交法違反になってしまうかもしれません」というとびっくりされるかもしれませんが…

近年の電動アシスト自転車の普及はすごいですが、タイヤ交換に関する意外な落とし穴をご存知でしょうか?

先日、YAMAHAのWABASH RTというe-bike(スポーツタイプの電動アシスト自転車)を購入しましたが、幅45mmという太いタイヤが私にとって新鮮で楽しく乗っています。

ただ、絶対、やってみようと思っているのがタイヤ交換です。

もっと細いタイヤに交換して、走行スピードやバッテリーの減り具合などがどう変わるのかみてみたいのです。

けれども、電動アシスト自転車のタイヤ交換は、意図せずして道交法違反になるケースもあると知り驚きました。

この記事では私と同じように電動アシスト自転車のタイヤ交換を検討している方に向けて、知っておくべき重要なポイントをご紹介します。

電動アシスト自転車について道路交通法で規定された条件

電動アシスト自転車(e-bikeも含む)は道路交通法で決められた条件を満たす必要があり、それを要約したのが下記です。

  • 時速10kmまで:人がこぐ力1に対し、アシスト機能はその2倍のアシスト効果が働く
  • 時速10km以上、24kmまで:スピードが上がるにつれてアシスト機能は低下していく
  • 時速24km以上:アシスト機能が0(ゼロ)になる

これを図にすると次のようになります。

(参考: 警視庁 「安全な電動アシスト自転車とは!」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/torikumi/kotsu_joho/bicycle.files/20240318.pdf

日本で販売されている電動アシスト自転車は、上記の条件を満たすような特定の仕様で設計され、認証を受けています。

タイヤ交換によって、この条件に適合しなくなる可能性があるため、電動アシスト自転車のメーカーは一般にタイヤの交換を推奨していません。

さらに、道交法の問題以外にも、次のような理由からも電動アシスト自転車のメーカーは一般にタイヤの交換を推奨していません。

● 安全性の問題:電動アシスト自転車は通常の自転車よりも重く、より細いタイヤに交換すると、パンクしやすくなるなど安全性が低下する

● 性能への影響:電動アシスト自転車用のタイヤは、車体の重量や走行特性に合わせて選ばれていて、指定以外のタイヤに交換すると、アシスト性能や乗り心地に悪影響を及ぼす可能性がある

どういうタイヤ交換が違法になる可能性があるのか

電動アシスト自転車のタイヤ交換をすると、そのつもりはなくとも道交法違反になってしまう理由を詳しく紹介します。

ホイールの回転数が自転車の速度の認識に使われている

電動アシスト自転車(e-Bikeも含む)は、多くの場合、ホイールの回転数を検出するセンサーを使用し、この情報に基づいて速度を認識しています。

図の引用元: YAMAHAのWebページ PAS サポートQ&A 「スピードセンサーってなんですか?」
https://www.yamaha-motor.co.jp/pas/faq/answer/cn/02/qn/post_48/

スピードセンサーは、ホイールに取り付けられたマグネットとフレームに取り付けられたセンサーで構成されています。

ホイールが回転すると、マグネットがセンサーの前を通過し、センサーがパルス信号を出力します。このパルス信号の頻度から、ホイールの回転数、ひいては自転車の速度が計算されます。

つまり、1時間あたりのホイールの回転数とタイヤの周長(ホイールが一回転で進む距離)を掛け合わせて、時速を推定するわけです。

 

ただし、車種やモデルによっては、ホイールの回転数に加えて他のセンサーやアルゴリズムを組み合わせて、より精度の高い速度や走行状況の把握を行っている場合もあります。

ここでは、ホイールの回転数だけに着目して、どういうタイヤ交換が違法になる可能性があるのかを考えてみます。

タイヤのサイズを変えると時速24km以上になってもアシストがゼロにならない?

道路交通法の条件の一つに「時速24kmでアシストがゼロになること」というのがあります。

つまり、時速24kmのときのホイールの1時間あたりの回転数をXとすると、電動アシスト自転車はそのモデルの標準タイヤを使っていれば、そのX回転の場合、時速24kmと判断し、アシストがゼロになります。

例えばBESV JR1というe-bikeの場合、700x25cのタイヤが標準です。

なお、700x25cというのは、タイヤの外径がおよそ700mmでタイヤの幅が25mmであることを意味します。

このタイヤの周長(ホイールが一回転で進む距離)は約2.105mです。
(参照: CATEYE タイヤ周長ガイド https://www.cateye.com/files/manual_dl/1/129/Tire_size_chart_JP_151023.pdf

アシストがゼロになる時速24kmのときは、700×25Cのタイヤは1時間に何回転するかというと、次の計算式のように11401回転となります。

11401回転/時 = 24000m/時 ÷ 2.105m(←BESV JR1のタイヤの周長)

仮にさらに太い、大きなタイヤに交換すると、ホイールの一回転で進む距離が長くなるので、同じ11401回転/時の場合、24kmよりも実際はもっと進み、時速は24kmを超えることになります。

たとえば、25cよりも太い32cのタイヤに交換すると、このタイヤの周長は2.155mなので、11401回転/時のとき、次の計算式のように24.6km進みます。

24.6km/時 = 11401回転/時 x 2.155m ÷ 1000

つまり、時速24.6km/時になってアシストが切れることになります。

このようにタイヤをより太く、大きなものに交換すると、「時速24kmでアシストが切れること」という道交法の条件に適合しない電動アシスト自転車になってしまいます
(参考: 国民生活センター「道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車に注意-道路を通行すると法令違反となるおそれがあり、交通事故も発生しています」https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20231025_1.html

逆に、タイヤを電動アシスト自転車のモデルごとに決まっている標準のものよりも細いものに交換すると、タイヤの周長が短くなるので、時速24kmになる少し前にアシストが切れ、法律違反になりません。

ここまで、「時速24km以上:アシスト機能が0(ゼロ)になる」という道交法の条件をみてみましたが、「時速10kmまで:人がこぐ力1に対し、アシスト機能はその2倍のアシスト効果が働く」という条件についても同じことが言えます。

つまり、タイヤを太くすると、時速10kmを超えても最大アシストが発生する可能性があり、逆に細くすると、時速10kmの手前までしか、最大アシストが発生しなくなる可能性があります

なお、誤解を避けるために補足すると、「時速10kmまで:人がこぐ力1に対し、アシスト機能はその2倍のアシスト効果が働く」というのは、単に道交法の条件にしか過ぎません。

実際、市販されている電動アシスト自転車では、最大2倍ものアシスト力を出していないようで、詳しくは次の記事をご覧ください。

電動アシスト自転車のタイヤの変更に関する道路交通法上の要点

上で紹介したことは次のように要約できます。

電動アシスト自転車のモデル毎に決まっている標準タイヤを
より太い、大きなタイヤに交換すると道交法違反の可能性が出てくるが、
より細い、小さなタイヤに交換する場合は道交法違反の問題は出ない

このことから、自転車屋さんの中には、より大きなタイヤサイズへの変更への依頼は受け付けないところもあるようです。

例えば、Y’s Roadの「改めて知る電動アシスト車の注意点!!基本的には問題ないとは思いますが念のため。。」(http://www.ysroad.net/shopnews/detail.php?bid=520374)という記事の中で、「当店では大きいタイヤサイズへの変更は不可としています。(※アシストの付いていない通常のスポーツバイクであれば可能です。)」と明記されています。

なお、道交法の条件を守るという観点だけではなく、安全性の問題にも注意が必要です。

極端な例でいうと、子供も乗せられるような電動アシスト自転車は重さが35kg前後もあるヘビー級のものがあります。

ロードバイクの重量が8kg前後ですから、35kgというとロードバイク約4台分の重さです。

その自転車のタイヤをロードバイクのレース向けのような細いタイヤに交換すると、パンクしやすくなるなど安全性が低下します… こんなことをする人はいないとは思いますが…

おわりに

電動アシスト自転車のタイヤ交換は、一見手軽なカスタマイズのように思えますが、法的な側面や安全面、性能面など、様々な要素を考慮する必要があります。

この記事で紹介した情報が、安全かつ法令を遵守した上で、電動アシスト自転車を快適に楽しむための一助となれば幸いです。

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