自転車用の安全性能を満たしていない「CE認証取得」というヘルメットにはご注意を!

2023年4月から自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務となり、ヘルメットをかぶる人が少しずつですが増えてきていると感じます。

しかし、命を守るためのヘルメット選び、実は落とし穴があるってご存知ですか?

タイトルにある「CE認証」とは、製品が欧州連合(EU)の安全、健康、環境保護に関する基準を満たしていることを示すマークです。

「CE認証を取得済み」という触れ込みでAmazonや楽天などでも数多くのヘルメットが売られています。

この記事では、私が危うく自転車の安全基準を満たしていないヘルメットを買ってしまいそうになった体験を元に、「こんなヘルメットを買ってはいけない」という紹介をしたいと思います。

「安全基準CE(EN812)取得済」というヘルメットを買いそうになった

警察庁のデータから見るヘルメット着用の重要性

警察庁のデータによると、自転車事故での死者の致命傷部位は頭部がなんと全体の53.9%!

さらに、ヘルメットを着用していない場合の致死率は、着用している場合に比べて約1.9倍も高いという衝撃の事実も。

やっぱり、ヘルメットって重要ですね。

私が遭遇した「CE認証」ヘルメットの罠

私がAmazonで買いそうになったのは「CE認証」と銘打たれたヘルメットです。

JISマークやSGマークなどは良く知られていますが、「CE」というのは、初めて聞きました。

次の画像(商品写真はイラストに置き換えました)のように、商品のタイトル文に「自転車 ヘルメット CE認証」という言葉並んでいます。

また、商品説明には、「【CE安全規格認定済み】改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されます。本製品は世界基準の品質検査CEマーク(EN812)消防士ヘルメットと同じ安全基準を取得したので、安心してご使用いただけます!」という文もありました。

上の文を読むと、多くの人が「この商品は自転車用ヘルメットの安全基準を満たすようだ!」と思うのでないでしょうか?

EN812 は軽作業用保護帽の規格。自転車用のヘルメットの規格ではない!

商品紹介文にある「CEマーク(EN812)」とは何かよく分からなかったので調べてみたらビックリ!

EN812 は、欧州連合(EU)内で販売される軽作業用保護帽(industrial bump caps)の規格であり、自転車用ヘルメットのような高い衝撃保護性能は求められていません

「bump cap」 は日本語で「保護帽」や「衝撃吸収帽」と呼ばれています。

つまり、EN812 は工場や倉庫などでの軽作業用のヘルメットの規格で、自転車乗車時の転倒など、高速での衝撃から頭部を保護するのには適していません

欧州連合(EU)内で販売される自転車用のヘルメットの規格はEN1078 規格というものであることが分かりました。

ですので、CEマーク(EN812)取得で自転車用ヘルメットの安全基準を満たしているかのような商品説明は誤りということですね。

さらに紛らわしい表示も…

また、商品説明の中に「消防士ヘルメットと同じ安全基準を取得」という言葉があるので、これも調べてみると、消防士のヘルメットのCE基準は、EN812より過酷な環境での使用を想定したEN 443:2008 であることが分かりました。

そりゃあ、そうですよね!

消防士は火災で屋根が落下してきたり壁や柱が倒れてきたりすることもある過酷な現場で、消火や救助の仕事をするので、軽作業用保護帽の安全基準であるEN812で良いわけがありません。

本当にこの安全基準を取得したのであれば、「EN 443:2008を取得」と商品説明に書くと思いますが、それは書かれていません。

自転車用ヘルメットの安全基準とは

では、日本で公に認められている自転車ヘルメットの安全基準は何でしょうか?

自転車乗車時の交通事故時に頭部を守ることが出来るヘルメットの選定については、様々な公的機関からガイドがされています。

以下はそのようなガイドの例へのリンクです。

● 警視庁 「自転車用ヘルメットの着用」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/bicycle/menu/helmet.html

● 独立行政法人国民生活センター 「自転車と特定小型原動機付自転車で着用が努力義務化された乗車用ヘルメット」 https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230712_1_lf.pdf

● 東京都生活文化スポーツ局 「自転車用ヘルメットに関する安全基準を満たす製品について」 https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/tomin_anzen/kotsu/jitensha/anzennriyou-sokushin/jitensyahelmet/files/0000001956/annzennkijyunn.pdf

これらのガイドで共通して言われているのは。自転車乗車用ヘルメットの安全基準には、国内の「SG(製品安全協会)」や「JCF(日本自転車競技連盟)」などのほか、欧州「CE(EN1078)」、米国の「CPSC 1203」などがあるということです。

(蛇足ですが、EN812 は軽作業用保護帽の規格なので、当然、推奨されていません。)

自転車乗車用ヘルメットの主な安全基準

● SG(製品安全協会): 国内基準。製品安全協会が定める安全基準を満たした製品に付与されるマーク。落下衝撃試験、あごひも強度試験などが含まれる。

 

● JCF(日本自転車競技連盟): 国内基準。日本自転車競技連盟が定める公認競技での使用を認める基準。SG基準を満たした上で、競技特性に応じた追加試験(耐久性試験など)を実施。

左:JCF公認マーク、右:JCF推奨マーク

● CE(EN1078): 欧州基準。欧州連合内で販売される自転車用ヘルメットに要求される安全基準。衝撃吸収性、保持性、視界確保などが評価される。

 

● CPSC 1203: 米国基準。米国消費者製品安全委員会が定める安全基準。衝撃吸収性、あごひも強度、ラベル表示などが規定されている。

自転車用ヘルメットを買うときは、上記のいずれかのマークが付いていれば安心です。

「自転車 ヘルメット CE(EN812)取得」という表記は景品表示法違反?

私が見たのはAmazonですが、「自転車 ヘルメット CE(EN812)取得」という言葉を含んで商品の特長を謳っているものは沢山、売られています。

試しに楽天も見てみたら、同様に色んなブランドのヘルメットが数多く、このような商品説明文と共に売られています。

中には、その商品を着用して自転車に乗っている画像や、「改正道路交通法の施行により、令和5年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されます」という文章を商品説明につけているものもあります。

また、「消防士ヘルメットと同じ安全基準を取得」という文言を入れているものもありますが、先に説明しましたように、消防士用のヘルメットの安全基準は、軽作業用保護帽の安全基準であるEN812よりももっと高いレベルであり、嘘っぽいですね。

このように、「CE(EN812)」と言われても何のことか分からない人(私もそうでした…)が、これは公的な安全基準をクリアしている自転車用ヘルメットみたいだと誤解するように売り手が誘導しています。

例え、「CE(EN812)取得」は本当であっても、この認証で自転車用ヘルメットの安全基準をクリアしているかのように商品を売っているのは、景品表示法における不当表示にあたるのではないでしょうか?

景品表示法の不当表示とは、消費者に商品の品質や内容について誤解を与え、公正な競争を阻害する恐れのある表示のことです。

インナーヘルメットで自転車用ヘルメットの安全基準を満たすものは無い

ヘルメットのデザインが自分のファッションに合わないと感じている人は、普段使っている帽子の下に装着できるインナーヘルメット(インナーキャップ)を探すことも多いと思います。

私もママチャリで近所へ買い物に行くときは「なんちゃってヘルメット」という感じで着用しています。

けれども、インナーヘルメットには自転車用ヘルメットの安全基準を満たすものは無いと思います。

自転車用ヘルメットの安全基準は、衝撃吸収性、あごひもの強度、視界の確保など、多くの観点で定められています。

「インナーキャップやインナーヘルメットは、ヘルメットの下に着用するものであるので、それ単体で自転車ヘルメットの安全基準を満たすと言えるわけがない」ということらしいです。

まとめ

この記事では、自転車用ヘルメットの購入時に気を付けるべきことを、筆者の経験を踏まえて解説しました。

ヘルメットの安全基準は国内外の様々な機関によって定められていますが、ヘルメットの中には基準を満たしていないにも関わらず、あたかも満たしているかのように販売されている商品もあるようです。

具体的には「CE(EN812)取得」を売り文句にして、自転車用ヘルメットの安全基準満たしているかのように売られている商品です。

EN812は軽作業用保護帽の規格であり、自転車用ヘルメットの規格ではありません

安全基準満たしている自転車用ヘルメットを選ぶ際は、SGマーク、JCFマーク、CE (EN1078)マーク、CPSC 1203などのマークがついているものを選ぶようにしましょう

また、インナーヘルメット(インナーキャップ)は、ヘルメットの下に着用するものであり、それ単体で自転車用ヘルメットの安全基準を満たすことはできません。

この記事が、あなたやあなたの大切な人の命を守るヘルメット選びの参考になれば幸いです。

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