「自転車を除く」という道路標識はよく見かけますね。
「自転車を除く」だけでなく、併せて何やら時間帯や曜日なども書かれている標識もあり、なんとなく分かりにくいと思うのは私だけでしょうか?
他にも、「軽車両を除く」という標識もあります。
自転車は「軽車両」でしょうか? 原動機付自転車や軽自動車はどうでしょう?
この記事では「自転車を除く」と「軽車両を除く」という標識の意味を確認してみたいと思います。
目 次
「自転車を除く」の標識の意味はなんでしょう?
次の写真は、車両侵入禁止を意味し、この標識を越えて侵入してはいけないわけですが、「自転車を除く」という補助標識が掲げられています。
この場合の意味は、『「車両侵入禁止」は自転車には適用されません。すなわち、自転車は侵入可能です』ということになります。
私だけかもしれませんが、このような「自転車を除く」という標識の意味がスッと頭に入ってこない感じがします。
この標識の意味を丁寧に書くと、『「ここへは車両は侵入することはできません」という指示は、「自転車には適用されません」』ということになります。
これは、否定を重ねている「二重否定」となっているので、ちょっと分かりにくいのだと思います(私の考えすぎ?)。
政治家がインタビューなどで、「私の行いは、絶対に違法ではないわけではないと言えなくもないかもしれません。しかし・・・」などと否定文を連ねて相手を煙に巻こうとしますよね。
否定文を連ねられると、聞く方は「えっ?今、なんて言った?」と直ぐには理解できなくなってしまいます。
次の写真は一方通行の標識です。
こちらも同様に、この標識があるところでは、車は一方通行ですが、「自転車を除く」とありますので、自転車には適用されず、自転車は逆走もできます。
次のようなゴチャゴチャとした道路標識の場合、自転車を降りてしばらく見入らないと、その意味がピンとこないかもしてませんね(笑)。
これは東京の神楽坂にある「逆転式一方通行」という変わった一方通行の標識だそうです。
「逆転式一方通行」とは何なのか、興味のある方は、次のWebページをご覧ください。
(Gazoo「全国でも珍しい!神楽坂の逆転式一方通行」https://gazoo.com/drive/spot/19/05/20/ )
先ほどの神楽坂の標識もそうですが、「自転車を除く」の補助標識の中に、「12 – 13」、「日曜・休日は12 – 19」などと細かい指定が書かれている場合があります。
これは自転車以外の車両向けの時間帯や曜日の指定なので、このような指定が書かれていても自転車乗りは気にする必要はありません。
つまり、『「自転車を除く」と補助標識にあれば、その下にごちゃごちゃと書かれていても、その標識は気にしなくてもよい』と考えることができます。
余談ですが、次の写真はちょっと珍しいと思うので紹介します。
東京の浅草寺、雷門近くにある道路標識で、「自転車、人力車を除く」となっています。
ご存知のように浅草では観光客向けの人力車が大人気なので、歩行者専用道路で人力車の走行も認められています。
「自転車を除く」にマウンテンバイクやビーチクルーザーは入る?
「えっ?マウンテンバイク?ビーチクルーザー?どっちも自転車だから、そりゃ入るでしょ!」と思う人も多いかもしれませんね。
道路標識に「自転車を除く」とある場合、これは「普通自転車のみ」が対象です。
次の警察庁のWebページにもそのように明記されています。
「自転車を除く」と記載されていた場合には、本標識が表示する交通規制から特定小型原動機付自転車と普通自転車が除かれていることを示します。
(筆者注:特定小型原動機付自転車とは、電動キックボードのような新たなモビリティに対応するために導入された、新しい車両区分です。
警察庁Webページ「特定小型原動機付自転車に関連する主な道路標識・道路標示」より引用
簡単に言うと、原動機付自転車の中でも、より小型で、最高速度が20km/h以下のものと考えてください。)
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/img/tokuteikogata/hyoushikihyouji.pdf
ということは、例えば、一方通行だけども「自転車は除く」と補助標識がある道は、「普通自転車」は逆走できますが、「普通ではない自転車」が逆走すると違反になるということです。
で、実は、マウンテンバイクやビーチクルーザーには「普通ではない自転車」が少なくありません。
これについては次の記事で説明しましたが、再度、説明したいと思います。
「普通でない自転車」というのは簡単に言うと、長さが190cmを超えるか、幅が60cmを超える自転車です。
「普通自転車」のより厳密な定義に興味がある方は下の引用をご覧ください。
【道路交通法第63条の3の条文からの抜粋】
一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
イ 長さ 百九十センチメートル
ロ 幅 六十センチメートル
二 車体の構造は、次に掲げるものであること。
イ 四輪以下の自転車であること。
ロ 側車を付していないこと。
ハ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
ニ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
ホ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
引用元:道路交通法施行規則(昭和三十五年総理府令第六十号)|e-Gov 法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335M50000002060
幅が60cmを超える自転車の身近な例はマウンテンバイクです(次の写真)。
マウンテンバイクは安定してダウンヒル(山下り)などができるようにとハンドルの幅が70cm以上のものが多くあります。
私が若い頃乗っていたマウンテンバイクのハンドルの幅も74cmありました。
サスペンションフォークも付いていてカッコ良く、街乗りをしている人もよく見かけます。
では、長さが190cmを超える自転車はどんなのでしょうか?
典型的なのはビーチクルーザーです(次の写真)。
私は湘南の海の近くに住んでおり、サーフボードを積んで走っているビーチクルーザーをよく見かけます。
全部がそうではありませんが、全長が190cmを超えるものもざらにあります。
他にも、一部のクロスバイクには上記のサイズを超えているものがあります。
繰り返しになりますが、「普通ではない自転車」に関しては、「自転車を除く」という補助標識は適用されません。
ご自分の自転車が「普通自転車」かどうかの自信が無ければ、自転車のサイズを測ってみましょう。
幅が60cm以内で、長さも190cm以内であれば「普通自転車」です。
「自転車を除く」を鵜呑みにして走行すると危ないこともある?
次の写真は、私の家の近所にある一方通行の道路で、「自転車は除く」という補助標識が付いています。
「16 – 18」の時間帯は一方通行になっているのですが、その理由は直ぐ近くに電車の駅があり、学校帰りの子供達が夕方の買い物客と混じって多く通行するためです。
「自転車は除く」とあるので、一方通行の時間帯でも自転車は逆走することができます。
ただ、写真のように道幅が狭いので、車や歩行者との側方距離はあまりとれず、危ないことが多いです。
そのため、自転車から降りて自転車を押して歩かぜるをえないことも少なくありません。
「自転車を除く」と補助標識にあれば、法律的には、自転車乗りはその標識は気にしなくてもいいですが、安全には気をつける必要があります。
そもそも「一方通行」や「車両進入禁止」という標識があるところは道幅が狭いことが多いですよね。
「自転車は除く」と補助標識にあっても、走ってみると安全とは言えないことがあるので、自分の判断が大切になります。
「軽車両を除く」とは
「軽車両を除く」という標識もよく見かけますが、「軽車両」とは何でしょう?
軽車両とは自転車、人力車、荷車、馬車、リヤカー、そり、山車(だし、つまりお祭りのときに引く飾り付けた屋台)などのことです。
おおざっぱに言うと、人や動物の力を使い、原動機を持たない車両のことです。
次の引用にありますように、道路交通法の第一章、総則に定義されています。
十一 軽車両 次に掲げるものであつて、移動用小型車、身体障害者用の車及び歩行補助車等以外のものをいう。
イ 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含み、小児用の車(小児が用いる小型の車であつて、歩きながら用いるもの以外のものをいう。次号及び第三項第一号において同じ。)を除く。)
ロ 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、車体の大きさ及び構造を勘案してイに準ずるものとして内閣府令で定めるもの
e-GOV 法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000105
なお、電動アシスト自転車は、モーターは付いていてもそれはアシストの役割だからか、「軽車両」とされています。
このように自転車は軽車両の一つなので、例えば次の写真のように、車両通行止めのところで「軽車両を除く」と標識にあれば、自転車はこの適用外であるので通行できるということになります。
「軽車両」の意味は誤解されがちです。
勘違いしやすいのは、原付(げんつき:原動機付自転車)を「軽車両」と思ってしまうことです。
なにしろ見た目は軽車両ですし、原動機付「自転車」と、「自転車」という名詞が入っていますから。
しかし、道路交通法上は、原付は「原動機付自転車」に区分され、「軽車両」ではありません。
また、軽自動車もその名前から「軽車両」だと誤解する人がいるそうですが、もちろん違います。
(参考: 『「軽車両を除く」の軽車両って「バイク? 軽自動車?」 一体何を指す? うっかり勘違いしがちな「補助標識」』 https://kuruma-news.jp/post/587056 )
おわりに
街中を自転車で走っていると、「自転車を除く」や「軽車両を除く」という補助標識が付いた道路標識をたくさん見かけます。
ゴチャゴチャとした標識を見て、直ぐにはその意味が理解できなかったり、一瞬、混乱したりすることもあります。
そこで、この記事では、「自転車を除く」と「軽車両を除く」の標識の意味を説明してみましたが、何か参考になれば幸いです。